オイラって実はまともな人間かも
世界一強靭!っていう謳い文句で売られていた縄を買ったオイラは、その縄でミノムシみたいに縛り上げたシュウジンさんをズルズル引きずってお城へと向かっていた。
シュウジンさん「僕はね、楽して巨万の富を得たいんだよ。」
オイラ「この状況で言う台詞とは思えない。」
シュウジンさん「大当たりを出した時の快感を忘れられない、そんな理由でギャンブルから抜け出せない人達とは違うんだよ僕は。大志を持ってギャンブルに打ち込んでいるんだよ。」
オイラ「巨万の富を得て何かやりたい事が?」
シュウジンさん「一生遊んで暮らすのさ。」
オイラ「大した大志。」
シュウジンさん「巨万の富があればいくらでもギャンブルが出来るだろ?そしてまたギャンブルでお金が増えて、富のスパイラルじゃないか。」
オイラ「本気で言ってるのかな、この人。」
シュウジンさん「このスパイラルに気が付いた時、僕は努力することをやめたのさ。今はまだ元手となる資金を集めている途中、いわば努力している途中なんだよ。いやそうだ、僕は今努力をしているんだ!」
オイラ「オイラってまともな人間。」
シュウジンさん「この縄をほどいてくれるよね?」
オイラ「もう突っ込み方がわかんないよ。」
シュウジンさんとの不毛な会話に辟易していたら、ようやくお城に到着したよ。
オイラ「犯罪者を捕まえたよー。」
オイラは引きずっていたシュウジンさんを王様の前に差し出した。
西の王様「お前は、元主人公という立場でありながら何をしでかしたんだ?」
オイラ「強盗殺人未遂だよ。」
シュウジンさん「違うんです王様。努力の過程で僕の中の心の悪魔が目を覚ましまして、主人公の背中がお金に見えたのでスパイラルが始まると思ったんです。」
西の王様「何を言っとるんだこいつは?」
オイラ「えーっと、ようするにオイラこの人に襲われかけたんです。」
シュウジンさん「違う違う、スパイラルの始まりを確信した先にたまたま君がいただけさ!」
西の王様「大臣、これって警察?それとも精神科?」
西の大臣「私にも分かりかねます。とりあえず、我が城の地下にある独房に放り込んでおきましょう。」
シュウジンさん「そんな、裁判もせずに後生ですよ!」
西の王様「正直、お主のキャラクターは我々の手に負えんのだ。」
西の大臣「お主のような面倒臭いやつがおっては、今後の展開に悪影響を及ぼしかねん。」
オイラ「突っ込みも大変だしね。」
西の王様「今後の物語の為にも、地下でおとなしく眠っていてくれ。」
シュウジンさん「そういう事でしたら、分かりました…。ではせめて最後に武藤さんに会わせて下さい。今インフルエンザで倒れているのでしょう?」
西の王様「なぜそれを知っておる。」
シュウジンさん「この城に盗聴器を仕掛けておりますので。」
西の王様「そういうとこ!」
シュウジンさん「武藤さんには、主人公時代にお世話になったんです。お願いします。」
西の王様「まぁよかろう。武士の情けだ。」
シュウジンさん「決して、最後にどうしても武藤さんの手を握りたいからと、縄をほどいてもらった瞬間に逃げたりなんかしませんので。」
西の大臣さん「しまった!最後にどうしても武藤さんの手を握りたいからと、縄をほどいてやった瞬間に逃げられた!」
西の王様「武藤の手ってどこだよと、戸惑っている隙をつかれてしまった!」
オイラ「もー。」
窓の外には、ちゃっかり金目の物を拝借して逃げていくシュウジンさんの姿。その背中はすでに米粒みたいに小さくなってたけど、高笑いだけはいつまでも聞こえてたよ。
西の王様「あやつ、南の方へ逃げていきおったぞ。あんなやつを野放しにしておけん。何としても捕まえるのだ!」
西の大臣さん「しかし王様、我が国の兵士達はことごとくインフルエンザに…。」
王様と大臣さんの視線がオイラに注がれる。
西の大臣さん「行ってくれるか?南の方だ。」
簡単なRPGであることを祈るぜ!




