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主人公物語  作者: でくすぎ こぼく
1/11

王様に呼ばれたよ

 ヤッホー、オイラ主人公。

 まごうことなき主人公であるオイラは、さっそく王様に呼び出されたよ。

 面倒くさいけど、オイラってば国家権力には従順だから、お城まで遥々やってきたよ。


王様「権力に溺れて五十年。ワシがこの国の王様である。」

オイラ「いきなり感じの悪い登場ですね王様。」

王様「さっそくだが主人公よ、お主に使命を与える。」

オイラ「なんでしょう?」

王様「西の王国の国王に密書を届けてほしいのじゃ。」

オイラ「密書?」

王様「うむ。まぁ密書といっても、来週の麻雀は面子が揃わなそうだから中止、っていう内容なのじゃが。」

オイラ「それくらい電話で伝えればいいのに。でもオイラ主人公だから仕方ないか。王様の言うことをきくのも仕事だもんね。」

王様「それもあるが、なによりワシは人に命令を下すのが好きなのじゃ。」

オイラ「溺れてるぅ!」

王様「他人が手足のように動く様がたまらぬのよ。ホントもう、権力って最高。」

オイラ「かく言うオイラも国家権力には従順なのさ。じゃさっそく行ってきます王様。」

王様「ちょっと待つのだ主人公。」

オイラ「なんでしょう?」

王様「主人公としての初仕事、一人では心細かろう。」

オイラ「ううん。別にー。」

王様「武藤という家来がおるのだが、こやつは主人公の教育係を務めておる。こやつをお供に付けようぞ。」

オイラ「もぅ、人の話聞く気ないよこの王様。」

王様「今武藤には、債務超過による事務処理をやらせておるのじゃが。」

オイラ「この国の行く末が心配。」

王様「事務処理は専門家に引き継がせるゆえ、武藤には本来の仕事に戻ってもらおうと思う。」

オイラ「なんで初めから専門家に任せなかったんですか。」

王様「たまたま近くに武藤がおったのよ。命令さえ下せれば誰でもよいのじゃ。」

オイラ「この国の行く末が心配。」

王様「では行くのだ主人公よ!」

オイラ「会話もうまく噛み合わないしね。んじゃ行ってきまーす。」


 オイラは王様の召し使いさんに連れられて、武藤さんのいる部屋まで案内された。

 道中召し使いさんの止まない愚痴が、王様の人柄を表していたよ。

 オイラは召し使いさんにお礼と励ましの言葉を掛けた後、武藤さんの部屋に入った。

 中では、緑色でゲル状のブヨブヨした物体が机に座って汗をかいてた。

 あれが武藤さんかな?


オイラ「あなたが武藤さん?」

武藤さん「おう、お前が主人公だな。すまんが、この仕事だけ終わらせたいからちょっと待ってくれ。」

オイラ「じー。」

武藤さん「おいおい、そんな『初めての仲間が最弱でお馴染みスライムかよ』って顔すんなよ。このての話じゃよくある設定だろうが。」

オイラ「いや、そんな顔じゃないです。」

武藤さん「じゃあどんな顔だよ。」

オイラ「これは、スライムって手が無いのにどうやって事務仕事をしているんだろうって顔です。」

武藤さん「そんなとこ突っ込むなよ。」

オイラ「でもそこんところはちゃんとしておかないと、今後色々と不都合が。」

武藤さん「どうやって事務仕事してるかなんて、そんなもんこの一言で万事解決だよ。」

オイラ「なんですか?」

武藤さん「『想像にお任せだぜ!』」

オイラ「便利な言葉だぜ!」

武藤さん「分かったら、二度とそんな野暮な台詞吐くなよ。」


 そう言うと、武藤さんはみるみる事務処理をこなしていった。

 どうやってこなしているかは想像にお任せだぜ!


武藤さん「よし、こんだけやっときゃ引き継ぎもスムーズにいくだろ。」

オイラ「見かけによらず真面目な人なんですね。人じゃないけど。」

武藤さん「まあ一応俺も30歳だからな。大人の社会人としてやることはやっとかねぇと。」

オイラ「見かけによらず若いんですね。」

武藤さん「年齢不詳ってよく言われるぜ。」

オイラ「スライムだもんね。」

武藤さん「そんな事より、主人公としての初仕事があるんだろ。俺がこれから色々と教えてやるよ。」

オイラ「よろしくお願いします。」

武藤さん「俺も久々の肉体労働だ。腕がなるぜ。」


「腕無いけどね。」


 二人でハモったところで、オイラ達は西の王国へと旅立った。

 これからオイラ達にどんな事が待ち受けているんだろう。

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