プロローグ
彼女は、魔力が大きく、身体が耐えられずに魂を削りながら生きる日々でした。10歳の誕生日を迎える前に彼女の人生は尽きようとしていましたが、偶然にも精霊の加護を受け一命を取り留めました。
とある、異世界の出来事です。
彼女はベルク公爵家の令嬢で、名をリリーと言います。
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彼女の人生は、順風満帆でした。希望の職に就き、毎日が充実してました。
終わりは突然でした。
非合法なドラッグをキメて車を暴走させた碌でなしの男が運転する車を暴走させたのです。そして、信号が変わるのを待っていた幼児に突っ込んで来たのです。
路地の桜を眺めていた彼女はそれを目にして、咄嗟に動きました。
彼女は見事に子供の命を救いましたが、残念な事に、自らは車に轢かれて命を絶ちました。
彼女の名前は春香、日本の会社員でした。
「(今日の晩酌用に買ったお取り寄せの馬刺し……)」
暗転していく意識の端で最後に考えたのはそんな小さな後悔でした。
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彼女たちを助けたいと思ったものが偶然にもいました。
消滅の危機にあった春香の魂は、リリーの元へ、世界を超えて届けられる事になったのです。
(ごめん。)
猫の姿をした精霊がリリーの世界に春香の魂を召喚するに至りましたが、生憎と彼女は細かい力の操作が苦手でした。そして、深く考えていませんでした。
取り敢えず、目の前の少女を救う為に、一つの身体に二つの魂が混在する状況が生まれます。
少女を助けたい思いは確かにあるものの、できる事が限られてました。
消耗したリリーの身体に春香の魂を補充します。彼女の魂は、精霊の加護で包まれ、リリーの中に存在する事になりました。魂は補充され脆弱な身体は、精霊の力で強化されました。
さて、リリーはまだ気づいていません。自分の中にもう一つの魂がある事に……