5つ目の詩 私の心は
No.84
1
2
3 私の心は
4
5
6 私は、
7 高校生の頃、働いていた。
8 毎朝、
9 同じ時間に、
10 青い自転車に乗り、
11 あの工場へ働きに出かけていた。
12 あの工場とは、
13 巨大なテープ工場の事だ。
14 何人かの仲間と一緒に働いていた。
15
16 或る日、
17 同じ時間、
18 青い自転車に乗ろうとした。
19 鍵は無く、
20 何も無かった。
21 自転車は、
22 僕以外の形に成り、
23 同じ時間は、
24 二度と戻っては来なかった。
25 僕は、
26 あの同じ時間に、
27 働きに行く為の鍵を、
28 ―よくある自転車の鍵だ―
29 無くしてしまった。
30 ついでに乗り物も、無い。
31
32 なので、
33
34 私は、
35 私の足で歩かなければならなかった。
36 あの青い自転車でなければ、
37 工場へとは行けない。
38 私の足は、
39 取りあえず、
40 過去の方へ、と向かうのでした。
41
42 とは言え、
43 時の感じを
44 忘れてしまった私には、
45 正確な過去も、
46 辿る事が出来ず。
47
48 記憶の断片のみ、
49 思い出したりしたのです。
50
51 旅の始まりは、
52 そんなものなのでした。
53
54 今の話に戻しましょう。
55 ここは、
56 この詩の立ち位置から、
57 一歩下がった所に在る、
58 私の心。
59
60 犬の手が、
61 現してくれた。
62 女の幻影が、
63 まだ、
64 残っているのです。
65
66 僕は―又は私は―
67 この人を、
68 探しに来ていたのだ、
69 という事を、
70 強く思い出しました。
71 また、
72 思い出させられたのです。
73
74 僕は、
75 案外
76 ロマンチストで、
77 この様な、
78 空想的な、
79 理想の
80 女の子の
81 事を
82 考えたり
83 するのが、
84 割と、
85 好きな、
86 傾向に、
87 ある様に、
88 思えて来て、
89 しょうがなく、
90 思ったり、
91 また、
92 時に、
93 そんな事を、
94 何時までも、
95 この場所で、
96 考え続けなければ
97 ならない、
98 自分という物を
99 悲しく、
100 また、寂しく感じたりするのです。
101
102 どうにも。
103 こうにも。
104 こんなの、
105 上手く行く訳が無いよ。
106
107 ただ、
108 隣りに居たいの。
109 ただ、
110 側に置いてくれればいいの。
111 ただ
112 あなたの
113 話を聞かせて欲しい。
114 その、
115 形を、
116 あなたがいずれ成ってしまう
117 その本当の形を
118 伝えて欲しい。
119 小さな、
120 接点が在るの。
121 ほんとに、
122 僅かだけど、
123 私は、
124 (女の子は、はっきりとした質量を具えた存在だったのです)
125 そこを、通る事が出来る。
126 この、
127 変わる事の無い魂は、
128 必ず、
129 本当の道を、
130 歩く事が出来る。
131 これは、
132 一つの、明らかになった、約束です。
133 私は、確かに、この様に聞きました。




