4つ目の詩 タイルと博物館と青い人
No.83
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2
3 タイルと博物館と青い人
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5
6 セロハンテープの刃と、
7 掃除機が展示されている、
8 博物館がある。
9 室内に、
10 一面、
11 赤と青と黄、の色から成る、
12 タイルで埋め尽くされ、
13 床と天井は、
14 紫色なのだ。
15 そして、見物客は、
16 私一人。
17
18 青い人が居て、
19 私を案内してくれる。
20 ―あなたであっても案内してくれる―
21 私は、
22 巨大な、
23 テープを切断する、
24 あの、
25 ギザギザの刃を、
26 手で触って、見ていた。
27 ただ、
28 テープは無い。
29 「これ、良いでしょう?」
30 と青い人は、私に言った。
31 しっくりしますね。
32 と私は答えた。
33 巨大な掃除機の前に着いた時は、
34 「これ、性交したくなるでしょう?」
35 と言った。
36 そうかもしれませんね。
37 と私は答えた。
38 「いや、絶対そうなんですよ。
39 誰もが、掃除機と、
40 既に、
41 性交しているのです。
42 と言うより、
43 これ以外とは、
44 まだ、
45 性交した事が、
46 無いはずで、
47 私の語る、
48 言葉の意味が
49 解って頂けるなら、
50 もう、
51 人生、
52 全てを得たも、
53 同然なのです。
54 まあ、
55 同然が何と
56 同じかは、
57 解って頂け
58 るかと、
59 は思いますけどね」
60 青い人は、
61 独りよがりな口調で話している。
62 私は、
63 タイルを眺めた。
64 タイルは、
65 まるで生きている様に、
66 パタパタ動き、
67 その度に、
68 色が変わるのだ。
69 生きたタイル。
70 青い人は、
71 当然でしょう。
72 という顔で居たので。
73 私は、何も言えないのでした。
74 青い人は、厳しい顔で、
75 「ここの展示物は、
76 あなたにとって、
77 不満を感じさせる、
78 物なのでしょうか?」
79 と言って来た。
80 ああ、
81 私には、
82 少し、高尚過ぎて。
83 それに、
84 タイルを見ていたら、
85 目が回ってしまったのです。
86 目なんて、
87 回りませんよ。
88 タイルが動くのは、
89 当たり前ですし。
90 それに、
91 高尚なんて、
92 冗談を、言ってはいけないのですよ。
93 ただ、
94 世界が在る。
95 此処には、
96 全てが、
97 展示されている。
98 そう
99 身体に、
100 記すべき、
101 その様に、
102 刻み込むべき、なのです。
103
104 青い人の目は、
105 真剣そのもので、
106 私は、
107 場違いな所に着てしまったと、
108 思い始めていた。
109 「あなたは、
110 此処が、
111 何処だか解らない様ですね」
112 と彼は、言った。
113 何かを説明しようとしていた。
114 私は、
115 「いや、知ってますよ」と言ったが、
116 彼は、訝しげに、
117 「いや、知らないはずだ。
118 解る訳が無い。
119 それに、
120 あなたは、
121 余りにも、
122 下劣な臭いがする」
123 ここには、
124 展示品が
125 二つしかない。
126 「何処に行っても、
127 人間なんて、
128 居なかったはず、
129 でしょう?」
130 青い人は、
131 あの場所に帰って行く私の背中に向かって声を掛け続けたのでし
132 た。
133 人間は、何処にも居なかったでしょう、と。




