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悪堕ち魔法少女になってみた  作者: ナイアル


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第二十四話:夢のあとさき

 ――夢を見た。


 入学式が終わり、あたしたちに振り分けられた教室の片隅――ヒナギクの席でだべっていたあたしとヒナギクに、後ろの席からひどく焦ったような声。

「い、いじめはよくないよ!?」

 あたしとヒナギクはしばし呆然。


 ぶっきらぼうでぞんざいなあたしの口調と、丁寧だけどどこか固いヒナギクのそれを聞いて、あたしがヒナギクをいじめていると早とちりしたらしい。

 ホームルームが終わって解放されたらどこに買い食いしにいこうかとか、その程度の話しかしてなかったはずなんだけど。

 ……いや、賭に負けたヒナギクがおごるとかなんとかそういう話だったっけ。

 賭自体はあたしたちには珍しく単純なもので、ヒナギク――「あおい」が出席番号一番になるかどうか。

 別の小学校からあがる子に「あいの」という名字の双子がいて、そういうのは普通同じクラスにはならないというのを知っていたから、まあ最悪でも五分よりちょっと悪い程度の勝算はあったのだけど。

 ……まさか「あいはら」だとか「あいかわ」だとか、果ては「あ」なんて名字のやつまでいて、「あおい」が後ろから二番目なんていうベストポジションまで引き下がるとは思ってなかった。

 圧勝。ゆえにヒナギクがえらく豪勢なディナー――一食が五桁に到達しかねないのは「買い食い」の範疇から逸脱してるわよ――をおごろうとするのを、必死に止めてたのはこっちの方なんだけど。

「あ、相手がお金持ちだからってたかるのはよ、よくないよ?」

 言ってる端からよだれが垂れてるんじゃ説得力のかけらもないって。


 それが、あたし……あたしたちとショーコの出会い。


 ショーコは浮いてた。小学校時代の悪名のせいで遠巻きにされてたあたしたちすらかすむほどに浮きまくってた。

 まあね、恋バナとかアイドルとかおしゃれとか、世間一般の「女」の話題に夢中になってる女子生徒の中で、日曜朝の女児向けアニメについて熱く語る……どころか、半ば以上にマジに入り込んで、ああいうアニメの安っぽい「正義」やら大人に実に都合のいい「前向きさ」を馬鹿正直に信じちゃってりゃ、そりゃ浮くってものよ。

 「悪いこと」してる子がいたら、TPOも相手との体格差や年齢差もまったくわきまえず、あまつさえ周りの迷惑も一切考慮せずに猪突猛進。

 コンビニ前でたむろって煙草吸ってる不良のおにーさんたちに単身特攻して砂にされかけてた時は本当にどうしてやろうかと思ったわよ。

 結局、若さを持て余してる性少年たちのリビドーがこっち――っていうか、そのころから中学生離れした体型してたヒナギクに向いてきたところで、影から警護してたSPさんに返り討ちにされてお縄。肉体的にも精神的にも社会的にもきっちり締め上げられた彼らがその後どうなったのかは……知りたくもない。

 

 ファーストコンタクト以来なしくずしにつきあってたあたしたちも悪いっちゃあ悪いんだけども、周囲から向けられる「良い子なんだけど……」な視線に気づかず、さんざんやりこめられても後悔どころか反省もせずに我が道を邁進するショーコが、本気で「正義の味方」を目指してたと知るのはそのしばらく後のことだった。


「魔法少女になっちゃった!」

 と、自慢げに変身アイテムらしき胡散臭い玩具もどきを見せびらかしにきたときは、とうとうこいつ頭がいかれたかと。

 ……いやうん、まさか本当に「悪の侵略者」と戦うことになろーとは、思いもしなかったっていうか普通思うわけもないってえのよ。

「これで世界の平和を守るんだよ、ゆりちゃん!ひなちゃん!」

 ぶいっと二本の指をつきだしたショーコの満面の笑みに、あたしたちは困ったような苦笑を浮かべる。


 ――それは夢。随分と遠く離れてしまった、昔の夢。



『気分はどうだ』

『――最悪』

 覚醒とともにかけられた「声」に、声で返そうとして……ごぼっと泡が沸き立ったことで、自分の状態を認識する。

 再生治療用のポッド、その透明な筐体の中に満たされた再生液に浮かぶ――全裸の自分。

『ちょっ、見るな!』

『減るもんじゃないとか言ってなかったか』

 からかうような口調でも、それが恥ずかしさの照れ隠しだって位はわかるんだからね、バカ皇子!

 ……こっちのそれもばれてるってことなんだけど!

『ああもう、いいわ、わかったわよ。見たいなら穴のあくほど見りゃいいじゃない』

『お前は俺をなんだと……』

『年端もいかない少女の裸体に興奮する変態?』

『……バッ!?』

 あー、むせてやんの。

 バカ皇子が焦りまくってくれたせいで、こっちのほうはだいぶ落ち着いた。

 そうそう、これは医療行為医療行為。だいたい、ヒナギクやデイジーならともかく、あたしみたいにメリハリに乏しいボディ見たところで、特殊性癖のお兄さま方でもなければ、ねえ?

 ……自分で言ってて空しくなってきた。っていうか、まだいろいろ混乱してるわね、我ながら思考が突飛すぎだわ。シャキールの奴が私の裸見てどう思うか気にするなんて、ね。


『状況は?』

『一週間ぶりに目を覚ましての第一声がそれか』

 微妙に目を逸らしつつ――ちらちら見てるのばればれだってば――呆れたように答える皇子。

 一週間あれば事態は様々に動く。グルバスのじーさまにその辺手抜かりがあるとも思えないけれど、それらの動きを把握できてないのは不安だわ。

『……まったく。知っていたか? 人間、やけどがひどすぎて皮膚呼吸できないと、窒息死するんだぞ?』

『んなこたあ言われるまでもなく……あー、こりゃ生きてるのが奇跡だわね』

 脳波と視線による操作に応じてポッドのガラス面に表示されるあたしのカルテ――っていうか、もう一歩遅ければ「検死解剖所見」と言うべきデータをざっと眺める。

 複雑骨折・粉砕骨折・内蔵破裂に筋肉破断……さらには全身至る所がやけどを通り越して筋肉組織までこんがりウェルダン。

 脳や体幹機能に損傷が出てないのが奇跡、というか、危険度が一定以上になったらかなり強引に防護するようになってたのか。この辺はコスチューム設計したじーさまに感謝しないとだわ。

『……なぜ一人で行った?』

 憤懣やる方ないって雰囲気は……あいつら、このバカに説明してないのか、説明されても納得行ってないのだか。

『あの時点で、切れるカードが他になかったからよ』

 暴走したショーコ――レッドローズの標的を誘導して町からひっぺがすのに、生半可な戦闘能力じゃあっさり潰されるだけ。

 その後の展開も考えれば、シャイニーフラワーの――あたしかヒナギクを出すべきだった。

『彼女の方が戦闘能力は高いだろう。せめて二人で行っていれば……』

『あの子にゃ任せられないからあたしが行ったのよ』

 そもそも、それがわかってなきゃあの子があっさり引き下がるわけがない。

 将軍も……いや、ありゃいまいちわかってなかったかもだけど。

『……友人殺しの重荷を背負わせたくなかった、か』

 沈痛な皇子の言葉に、思わず「はぁ!?」とか叫びかけ、ごぼっと巨大な泡を吐いた。

『あの子が、それを重荷に感じるわけがないじゃない』

 敵にも優しい、事情を知れば同情もするし受け入れようともする。迷いもするのも確かだけれど。

 絶対に相入れない「敵」だと思い定めたら、友人どころか親兄弟だって容赦しない苛烈さも持ち合わせてるのがヒナギクという「戦士」だ。

 ……ま、そういうとこが将軍とお似合い、ではあるのだろう。

『だから、あそこで彼女を出したら一瞬で終わったわね。たぶん、一太刀でずんばらりん、よ』

 苦しんでいる友人を解放するという大義名分も立つことだし、おそらくは本当に迷いもせず、眉一つ動かすことなく切り伏せちゃっただろう。

 ショーコの最期を見る限り、それでも「停止」したかどうかは微妙なラインだけど。

『それならなおのこと……』

『だからこそ、ダメだったんだけど。まあそれを抜きにしても、万が一あの子が死んだりしたら、この先の侵略活動にダメージが大きいもの』

 今や帝国の経済・文化侵略の窓口となったアオイとのコネクションが一挙に薄弱になる。青井のじーさまが金蔓手放すとは思わないけど、今ほどお互いに持ちつ持たれつって空気じゃなくなるのは必定。

 同じ理由でヒナギクの想い人であり青井家と何故か友好的な関係を構築している将軍を出すのも厳禁、となれば。

『結局、最悪死んでも大勢に影響がない駒があたしだけだったのよねえ』

『いや、お前なあ……』

 呆れ、怒り、戸惑い……いろんな感情がない交ぜになった雰囲気とともに、ガラスの外の皇子が額に手を当ててため息をつく。


『しかし、この状況はお約束的においしいわよね』

『……何がだ?』

 笑みを含んだあたしの「声」に、心底怪訝そうな皇子。

『一等最初のアレよ、アレ。……今なら、洗脳だとか改造だとかやりたい放題だと思わない?』

『……なっ!?』

 顔を真っ赤にしてドン引くシャキール。

 再生治療ポッドは、クローン兵なんかの育成ポッドと大して違いがあるわけじゃない。

 さすがに付属の「学習装置」は深層レベルの刷り込みまでできないようになっているけど、そんなの抜け道はいくらでもあるしね。

 ま、本当にやろうとすりゃ意識がなかった一週間の間にいくらでもやりようはあっただろうし、やる気もなかったどころかそんなこと考えもしなかったのはわかってるけどさ。


『……後悔しているのか?』

 しばらく沈黙していた皇子が発したのは、あたしを気遣うような、苦しそうな「声」。

 死にかけの我が身としてはその気持ちは素直にうれしい、うれしいんだけど。

『なんで?』

『なんでも何もだなあ……その、ローズ――ショーコとは友だったのだろう? それを、みすみす見殺しにしたのだから……』

 ああ、なるほど。

 思わず笑いがこぼれて、こぽこぽと小さな泡が沸き立った。

 本当に、お人好しすぎるんだから!

『あたしは最初っから、あの子を「殺す」しかないと思ってたわよ?』

『……なん、だと……?』

 おびえ、おそれ、動揺――そんなに驚くことかしら?

 

 ショーコは「悪の侵略者」と「地球を守る正義の味方」っていう「物語」に夢中だった。純朴素朴にそんなおとぎ話を信じ込んでた。

 本当なら、何事もなければ、それはただの夢物語で、いくらショーコがアホの子だからって、最後には現実と――正義の味方なんてどこにもいないって事実と向き合って、折り合いをつけていってただろう。

 でも、そこに。

 本当に「侵略者」が現れ、地球を守るなんてお題目のもと戦わされる羽目になった。

 彼女の「夢」は、「現実」になった。

 なってしまった。

『頭の中でだけ信じてたことが、誰かさんたちの茶番のせいで世界規模で肯定されちゃったんだもん、そりゃ妄執もするわよね』 

 現実となった彼女の夢物語、当然、その中には「侵略者=悪」の構図も含まれる。

 夢にまで見て、現実で堅固に補強されちゃったそれを覆すのは……さすがに無理。

『あの子を「こっち側」に引き入れるなら、がっつり洗脳するか、徹底的に叩きのめして心を折り……無理ね、「いくら負けてもあきらめない心」も彼女の「夢」の一部だもの。そうなると、どんなにジリ貧でも敵対勢力のまま……』

『……いずれにしても彼女は「死ぬ」、か』

 肩をすくめようとして、さすがにそれは動かなそうなのであきらめる。

『だから、しばらくは「光の聖霊」の下で泳がせておくのが、一番安全だと思ってたんだけどねえ』

 いかに胡散臭かろうと、建前上は「正義」を名乗ってる聖霊様が、相次ぐ裏切りに焦ってあっさり強引な手口を使ってくるとは予想外だった。

 そんなに警戒しなくても、あの子がそうそう裏切るはずはないってくらいすぐわかりそうなものなのに……。 

 それでもあの「聖霊様」が洗脳なんて手段に出たのは、つまるところ「未開の地の原住生物」を信用どころか人間扱いすらしてなかったってことなのよね。

『そうして彼女は「死んだ」――自分の「夢」に殺された、ようなもんよ』

 どんなに理想的に事態が進んでも、あたしは同じ判断をしてショーコをぎりぎりまで「正義」側に置こうとしただろう。

 あの「聖霊様」の動きを予測できていたとしても……うん、説得できていたとは思えない。

 だから、後悔はない。後悔しない。

 

『じゃあ何故……そんなに辛いんだ?』

『――!』

 寄り添うようなシャキールの感覚。こいつの気持ちがずっと伝わってるってことは……あたしの気持ちも、相手に伝わってるってこと。

 まったく、これだから魔法で繋がるのはいやなのよ。

『別に辛いなんて思ってないわ、よ!』

『だったら何で今切り替えた!?』

 ARのモニタが操作できる以上、思考制御経由の方も使えると踏んで必死に回避……したのは当然あっさりばれた。

 ばれたけど、そこはプライヴァシーの保護的観点からご容赦願いたい。

 ってえか。

『すけべ』

『なななな』

『人の心を勝手に見透かすな、つってんでしょうが!』

『見透かされるようなことすんなっつってんだろうが!』

 はあ。ため息とともに泡がごぽっと。

 そりゃ、あんなんでも友達だったわけだし、ある程度割り切っていたとはいえ辛くないと言えば嘘になる。

『でも、ほんとにそーゆーんじゃないわよ』


 切れるカード――この時点で死んでも構わないカードがあたししかいなかった。

 その事実は、裏を返せば……もう、「侵略活動」そのものはあたしがいなくても回る。

 そして、侵略の一応の達成が見えてきた、ここから先。

 皇子に従うことが最優先な将軍やじーさまはともかく、あたし個人の目的は、皇子のそれとは一致しない。いやむしろ、下手をすれば、反帝国を目指すあたしの存在が、皇子を排斥しようとする「敵」に格好の口実を与えかねない。

 不要、以上に有害無益。それが「今」のあたし。

『切り捨てるなら今のうち、なのよねえ』

 いつか来るとわかってたタイムリミットが思いの外早く来たというだけで動揺するなんて、随分とあたしも甘くなったものだと思う。

 それほどに……彼らの間にいたのは楽しかった。

 猫も被らず本性丸出しで、好き放題やり尽くしたんだから、これで楽しくないわけがないのだけれど。


『……今更、手放すと思うか?』

『実際、重度の再生治療から復帰するとなると、戦闘力はがた落ちになるでしょ』

 カルテの所見にも、特に魔力はごっそり落ちる恐れがあるという懸念が記載されている。

 なにやらエッセンス的なものが喪失するとか何とか……クローンが魔法を使えないのと根っこは同じなのかしら?

『まあリハビリはがんばるけどさ、シャイニーフラワーが「壊滅」した現状じゃ、もうほぼ利用価値はないと見ていいのよね』

『最初に言っただろう。私が欲しいのは、貴様の思考力と判断力だ、と。戦闘能力なんぞおまけにすぎん……だが、その作戦能力が自分の命すらも駒として投げ捨てるものだというなら……』

 戦闘時ならともかく、そんな危険な奴にいつまでもまかしてはおけないわよね。

 グルバスのじーさまあたりはその辺わかってて引き入れてたみたいだけど。

『……今後は自戒しておけ』

『えっ?』

『お前がいなくなると俺が困る……ってなんだその驚いた顔は』

『いや……あんた、あたしがいるってことの意味わかってんの?』

 驚いて目を剥いたあたしに、小さくため息で返す。

『グルバスにも言われたぞ、「女性に惑って国を誤りますな」とな。……あんなに正反対の意味にしか取れん諫言というのも初めて聞いたが』

 じーさまも反帝国はともかく独立派ではあるからねえ……いやしかし、なんだその言い方。それじゃまるであたしがシャキールたぶらかしてるみたいじゃないか。

 いやうんまあ、裸晒して向き合ってる現状はまさしくその通りなんじゃないかという気もしなくはないけれど。

 改めて湧き上がってきたなけなしの羞恥心を、必死で意識の片隅に追いやる。

 

『まあ、しばらくはゆっくり休むんだな』

 ……なんだろう、バカ皇子がこっちを見る眼差しが一挙になま暖かくなったような。

 目を開けてらんなくなって、ぎゅっと瞼を閉じる。



 ――夢を見た。


 町はずれの廃工場で、中年の男と対峙するあたし。

 男の目が怒りで血走ってるのは、あたしが囮になって本命のヒナギクを逃がしたから。

 結果、あたしは逃げるタイミングを逸してこうして追いつめられているわけだけど。

「どいつもこいつも俺をコケにしやがって!」

「……その『どいつもこいつも』を、あたしは知らないんだけど」

 当時小学生のあたしの挑発に易々と乗せられるくらいなんだから、コケにされまくりな人生を送ってたのは間違いないところよね。

 とはいえ、子供の自分と比べてずっと大きな男の人の淀み濁った怒りの表情は、恐怖と嫌悪を掻き立てるもので。

 震える足を必死に抑えながら、後ろ手に隠した「もの」の冷たい感触を確かめる。

 

「ぶっ殺してやる!」

 妙に呂律の回らないだみ声で怒鳴った男が襲い掛かってくる。

 とっさに身をかわし、右手の「もの」を突き出す。

「あ……が……?」

 呆然と見下ろす男の腹に突き立つのは、あたしが隠し持ってたガラスの破片。

 傷口をおさえた両手から血がジワリと滲み出し……力なくくずおれながらあたしを見つめていた男の顔が父親――あたしがそのころ父と呼んでいた男のものに変わった。


 ――現実は違う。

 あたしの父は直接誘拐に関与してたわけじゃない。ただ……はした金と引き換えに娘の「友人」の情報を売っただけ。

 男の方も、小学生の力で刺されたぐらいじゃ大した怪我にもならず、この後あたしは逆上した男に殴られて気を失った。

 取り返しのつかないことになる寸前で、ヒナギクの通報を受けたSPたちと警官が取り押さえて事なきを得たのだけれど。


 警察は、しかし、あたしたち一家を「無関係」とは思わなかった。

 父だけでなくあたしも、ヒナギクをSPから引き離し誘拐しやすい地点まで誘導する囮役を担っていたと――男を傷つけたのも何らかのトラブルの結果でしかないと決めつけ、脅し、あるいはなだめ、言質と自供を得ようと躍起になって、事件の衝撃からも立ち直れていたわけではなかったあたしは、連日執拗に繰り返される取り調べに心身ともに疲弊していた。

 それがある日唐突に解放されたのは、なんてことはない、ヒナギクの懇願に青井のじーさまが圧力をかけたから。

 結局のところ、むちゃくちゃな尋問も、それを引き下げたのも、地方の名士である青井の家への点数稼ぎ。

 法や正義なんて、金や権力次第でどうとでもなるのだと、十歳にも満たない身に痛感させられただけに終わった。


 ――それは夢。あたしがまだ正義に幻滅する程度にはそれを信じていたころの、昔の夢。



作者「次回最終回!」

百合子「え?マジで!?」

薔子「2クール……二十六話はDVD購入特典?」

雛菊「問題はそこなんですか?」


どーでもいい解説:

エッセンス…魔力の「倍率」みたいなもの。低下すると最大値や成長率が軒並み低下する。

グルバス「魔法による再生治療であれば微小、今回のような科学的な再生治療であれば少量。クローンボディとの置き換えやサイバネティクスによる代替では大幅に減少します」

百合子「どこの『シャドウラン』か」


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