第二十二話:交渉の決裂
「家にも帰らないで何やってたのよ、あんたは」
「……うん、ユカ……バイオレットと一緒に、反撃の機会をうかがってたんだよ!」
あたしの前を歩くローズの動きが、きしりと音を立ててきしんだ。
単純に後ろめたいのか、それとも……後ろ姿からは、その表情は読めないけど。
「それにしたって年頃の娘さんがこんなとこに……ねえ」
盛大なため息とともに、大げさな仕草でぐるりを眺めやる。
後ろを振り返りもしないショーコに見せた訳じゃない。
物陰や裏窓に潜んでこっちを伺っている連中への牽制、ってところ。
あたしたちが歩いているのは、1ブロック程度の路地裏。
たしか通信途絶地帯の一つとしてリストアップされてはいたはずだけど、なんというか……見事に空気がよどんでいる。
転がるポリバケツやアルミ缶、得体の知れない生ゴミに、そこから立ち上る悪臭――だけじゃない、獣じみたすえた臭いもどこからか漂ってくる。
掃除が行き届いてないらしいすすけた壁面が、ビルの谷間の薄暗さを一層深めているようで……
「どっからどー見てもスラムじゃない」
「み、みなさん親切にしてくれてるんだよ!?」
「親切、ねえ」
小さくため息。正直、息してるのもつらいレベルの臭さなんだけど。
いくら「可能な限り穏健に」をモットーにしていたとしても、社会体制の変化はどーしたってドロップアウトする人たちを生み出す。
特に笠原市をベッドタウンとして会社勤めしてたサラリーマンのお父さんたちの中には、不当に解雇されたのも多く……一応越境通勤は認められてるんだけど、いつまた交戦状態に陥るかもわからない「敵国」の人間は雇っておけないという建前だ。
それ以外でも、変化についていけなかった連中はあちこちにいて……都市国家というのもおこがましい現在の人口ですら、ある程度難民化が起こることは想定してはいた。
そーゆー連中が監視の目の届かないところを発見すれば、こんな風に不法居住とスラム化が進行するのもやむなしってところ。
取り締まるにはまだまだ手が足りないし、ここを「掃除」したところで、第二・第三の難民やスラムが生まれるだけで意味はないし。
いっそどっかのヤクザ屋さんとでも手を組んで裏から制御下に置くか……自前で用意しちゃった方がいいかしらね。
「ご両親は知ってるの?」
クリティカルな問いかけに、ショーコの動きがまたきしむ。
こっちを……いや、今この子の顔を見るのは正直怖い。
「うん、大丈夫。ぴょこくんがちゃんと伝えてくれてるはずだよ」
「ぴょこ……ああ、あの馬、ね。そういや見かけないけど」
内心の動揺を押さえ込むのに苦労した。あきれた風を装って返す。
「うん、お父さんたちと一緒にいてくれてるよ」
「一緒にねえ……」
あのご両親がいくら懐の広い人たちだからって、馬のぬいぐるみが喋って動揺しないわけがない。
なにより、このアホは「魔法少女のお約束」を踏襲してたわけで、エセぬいぐるみの「正体」をばらしてたとは思えない。
「一緒のところ」まで「伝えに行った」ってのが嘘だとも思えないけどね。
……うちに身を寄せてるお仲間さんたちにどう伝えたものやら。
・・・
ぎこちない会話の果てにたどりついたのは、ひどく古ぼけた雑居ビルの3階。
本来は表通りに面した店舗の倉庫代わりに使われていた――ううん、今でも一応その用途の方がメインっぽいけど――狭くて埃っぽい室内。
段ボールの山を壁に寄せ、窓をふさぐついでにスペースを確保したようなそこが――
「ようこそ、我らがシャイニーフラワー秘密基地へ!」
「んなご大層なもんとも思えないんだけど」
満面の笑みで振り返ったショーコのアホ面に、思わずつっこみも上滑りがちだ。
「はじめまして、かしらね?」
所々破れて中綿が飛び出しているパイプいすの背もたれに、一羽の鳥がとまっている。
馬鹿にしてんのかってくらい脳天気な蛍光オレンジの、どこか寸詰まりのボディ。クジャクのような枝垂れ尾が、かろうじて題材の高貴な不死鳥を連想させる――エセぬいぐるみ。
ドランやレオンと同じマテリアルパペットの一体だってことは馬鹿でもわかる、けれど。
「……おわかりになりますか」
「どうやってんのか、まではわかんないけどね。四匹中二匹があっさり裏切ってくれちゃってんのに、あんたがその子を使うわきゃねえでしょ」
本来クローンからは感じないはずの魔力の残滓から、おそらくは「使い魔」みたいな術の応用だろうってくらいは想像がつくけども。
その鳥自身の意思を無視して直接操る、何らかの方法。操ってんのはもちろん――
「いい加減直接お会いしたいものなんですがねえ……光の聖霊様?」
「ええっ!?」
……気づいてなかったんかい、ショーコさんや。
「ま、声だけってよりは随分ましだけどさ」
積み上げられた段ボールの山の一つに寄りかかる。ホコリで汚れちゃいそうだけど……コスチューム洗うのはあたしじゃないし。
「まし、ですか」
そう、「随分」どころではなくましだ。
今も声こそ落ち着いたものを取り繕っているけれど、デフォルメされて人間くささの増した顔に浮かんでいる憎々しげなしわは隠れてない。
羽を小さく開け閉めする、首をせわしなく振る、かぎづめでかりかりといすの背を引っかく……落ち着かない仕草の端々から、ゲスな小物臭さが滲みだしてる。
いやはや、実に人間味溢れる「聖霊様」もあったものだわねえ。
「……それで、今日は何の用ですか?」
あたしを嫌ってるのを隠そうともしないわね。ま、そっちの方が心が痛まないからいいけれど。
「ゆり……リリーは、ブラックコスモスに襲われてたから、あたしが助けて――」
「思い出して、レッドローズ。ホワイトリリーは裏切り者、今やブラックリリーとして帝国の先兵を務める我々の敵ですよ」
「そうでした……ゆりちゃんは敵……」
口を挟みかけたショーコが、クソババアの一言で黙り込む。
鳥の背後に突っ立ったまま何の感情も浮かべないユカリも怖いけど、至近距離のショーコから警戒と敵意に満ちた視線を受けるのも落ち着かないったらないわね。
「あら、『思い出して』よ。あたしたちは友達でしょ?」
「あ!うん!そうだよね!ゆりちゃんは友達!」
途端に圧力は消えて、今度は完全に気を許した満面の笑みが……なんというか、むずがゆい。
「……あなたは」
「キーワードでの暗示、か。便利だけど、逆手に取られちゃうと危険よね」
状況はエセぬいぐるみ連中と一緒。三人中二人があっさり寝返った時点で、手駒としての信頼度はゼロだ。
その証拠に、こいつが「新戦士」として引っ張りだしてきたのはクローン。ダークネスフラワーに対する牽制って意味もあったのかもしれないけれど、魔法が使えないだけでなく、行動を規制しすぎて戦闘能力まで殺いでるんじゃ、本末転倒もいいところ。
そんな聖霊様が、手元に残してる「人質」に、なんの安全装置も仕掛けてないわけがない。
正直、ここまであっさり原住民の人権無視してくるとは思わなかったけど。
「さて、どの程度この子に思い出させて――上書きしちゃったのかはひとまず置くけれど」
本当は置きたくないけれど……終わってしまったものはしかたない。今はそれよりも優先しないといけないことが沢山あるのだ。
小さく息を吐き、目の前の鳥を見据える。
……ああもう、間抜けなデザインのぬいぐるみのせいで、緊迫感がないったら!
「まず確認しておきたいのは、そちらの目的と勝利条件、なのよね」
「そんなの決まってるよ!地球を帝国の魔の手から守るんだよ!」
「地球の『なに』を、帝国の、具体的には『どの勢力から』守るの?」
「……うっ?」
勢いよく割り込んできたショーコにちろりと冷たい視線を送ってやると、小さく唸って黙り込んだ。
「ま、なにをどこからであれ……帝国が目を付けた段階で、地球が完全に帝国の勢力圏から独立を維持し続けることは不可能よ」
今現在攻めてきてる皇子たちを追い返すのは、不可能じゃないと思う。
でも、彼らは所詮「先遣隊」に過ぎない。
連中が負ければ、さらに大部隊で今度は殲滅・蹂躙しにくる――むしろ、そうするためにわざと「負けさせる」囮としての先遣隊と言っていい。
今までの事例を見る限り……地球人は最悪、滅亡する。
「実際、彼らの言いたいこともわかんないじゃないのよ。そのほうが格段に楽なんだもの」
人権のない「野生生物」として、あるいは曲がりなりにも「帝国軍」と戦端を開いた「敵」として、殲滅し、焼き払ってしまうほうが。
「そんな、ひどいよ!」
「技術格差がどんだけあると思う?経済規模は何桁違う?それを『帝国臣民』として対等に扱えるまで面倒見ようと思ったら、どんだけの金と時間が必要かしら。そんだけのものをぶちこんで……取り返せるほどに収益が上がるのはいったいいつになることやら」
いきり立つショーコに肩をすくめて見せたら、目の前の鳥がくつくつと肩を震わせて笑った。
「……あなたと皇子なら、そんな未来を回避できる、と?」
かわいらしい鳥の姿で冷笑してくださるのはいいけど、ますます程度が知れるわね。
「できないわよ」
「えっ、ちょ、ゆりちゃん?」
あたしの簡潔な答えに、ショーコと鳥が目を丸くする。
……ショーコはともかく、鳥のほうはわかってたくせに驚いてどーすんだ。
「技術と経済規模の格差が埋まる魔法なんかないもの。今星を開いたら、あっという間に破綻するわね」
そのあとは帝国の文化と経済に押し流されるようにして三流植民地化というのがお約束な流れ。
結局のところ、何をどうあがいても勝てないというのは変わらない。
どうせ負けるなら、どこで負けるか、だ。小さな勝利のために、巡り巡って大けがしたんじゃたまらない。
「――まあ実際、ここで来てくれたのがバカ皇子でありがたいってくらいなもんよね」
バカ皇子は、地球人を馬鹿みたいに大真面目に「帝国臣民」として守るべきだと考えてる。
政争に負けた上に継承権も最底辺とはいえ皇子なだけに、帝国側としても最低限の配慮はしなくてはならない。
少なくとも、領有地をいきなり奪い取ったりはできない。
「なるほど、保護制度ですか」
「……まあね」
いち早く恭順の意を示した星系国家には、宥和政策の一環として「帝国の恩寵を与える」という名目で、一定期間の財政・技術的援助が行われる。
その期間、最大で帝星の五公転周期、地球換算で約七年。
ここ数百年間は焼き畑農業やってたせいで有名無実の制度となってるし、皇子サマの微妙極まりない立ち位置からして満足な援助が得られるわけもなかろうが、少なくとも他所からのいらぬちょっかいをかけられない程度の防波堤にはなってくれる。
……と、思う。その辺の根回しに関してはグルバスのじーさまが頑張ってくれてるが、帝国本土にコネなんかないあたしにゃどうしようもない。
「数年の猶予期間を得て、それで、どうするおつもりですか?」
「どうするもなにもねえ。あたしの目的なんてはなっから一つよ。『ムカつくやつをぶん殴る』、以上」
街ひとつ焦土にしようが星ひとつ差し出そうが、そのために必要な努力で必要なコスト。それだけの話だ、それだけの。
「そうまでして殴りたい相手とは……シャキール皇子ですか?」
「あのバカはこのところ毎日、日に三度は凹ましてるから別にいいわよ。いるでしょ、このバカげた茶番にあたしたちを巻き込んだ奴が」
「私のことをお恨みですか?」
冷笑するようにくちばしの端が歪む。まるで「殴れるものなら殴ってみなさい」とでも言うように。
「あんたもそりゃギャフンと言わせたいけどさ」
ぬいぐるみにバカにされるってのはムカつくどころの話じゃない気もすんだけど。
まあ、この鳥のボディ痛めつけたところでクソババア本体には毛ほどもダメージ行きやしないんだから、徒労だわね。
「息子二人の兄弟喧嘩の仲裁もできずに、よそ様の星にド迷惑かけてる耄碌ジジイのことよ」
「……あなたは、第二のローザックにでもなろうというのですか?」
心底あきれたような口調。器用に翼で「だめだこりゃ」ってポーズをとるのが嫌味だ。
「なる、よりも、でっちあげて裏で糸を引くほうが好みかしら」
お返しに精一杯の皮肉を込めてにやりと笑ってやれば、鳥が息を飲むのがわかった。
シャキールは占領成功の実績がほしい。
グルバスのじーさまはシャキールを「王」にしたい。
あたしは、クソむかつく皇帝陛下に意趣返しするための地盤がほしい。
三人が三人とも微妙に目的が違うのだけど、ひとまずは「地球の侵略を成功させる」という前提条件が一致するから手を組んでる。
「だからまあ、あんたが本当に帝国打倒を願うなら、協力関係を結ぶのも吝かではないよって話をしにきたんだけど」
「……信用できるとでも?」
「お互い様でしょ?」
今度はあたしが小さく肩をすくめる番だ。
あたしたちの運命共同体を結んでるのは単純な利害関係であって、信頼とか信用とか忠誠心なんてご立派なものじゃない。
一見忠義に見えるじーさまの目的だって、主であるシャキール本人の意向を無視している時点で勝手な願望でしかない。
必要なのはすり合わせと契約であって、和解じゃない。
「だから……もう一回言うけれど、あなたの目的を教えてほしいのよ」
ま、これに素直にお返事してくれるなら苦労はないのだけれど。
我ながらイイ笑顔してると思う。間違っても正義の味方が浮かべちゃいけない類のそれだわ。
「……闇は悪。悪の帝国の尖兵と協約を結ぶつもりはありません」
「だから、あたしゃ連中の下僕になったつもりはないってのに」
「語るに落ちるとはこのことです。ヴァイオレット、ローズ。この裏切り者を取り押さえなさい」
「え、でも、ゆりちゃんは……」
「『思い出して』、ローズ。この者は光に仇なすもの、あなたの敵です」
「う、そう……ゆりちゃんは……敵……」
戸惑うショーコに再びの暗示。さすがに短時間での多重上書きはダメージがあるのか、どこかうつろな表情でふらふらしながら、ゆっくりと剣を構えた。
……ったく、好き放題やってくれるわね。
ユカリはと見れば、相変わらずの無表情のまま、レイピアみたいな武器――たぶん光線銃が仕込まれてる――を構える。
「武器の転送もできない結界の中、魔法も使えないあなたに勝ち目はあるかしら?」
小さく羽ばたいて滞空した鳥がほくそ笑む。
この程度で勝ち誇るとか、まったく、どのあたりが「聖霊様」なんだか。
「何が使えないって?」
「なっ!?」
あたしを中心に巻き起こった竜巻が、二人と一匹の視界を遮り、風圧で体勢を崩させる。
小さい空気の弾を重ね、二人の得物を弾き飛ばす――ショーコはともかくユカリのあれは対処が厄介だから、とっととつぶしておくに越したことはない。
風圧で吹き飛んだ背後の段ボールの隙間を埋めるように、あたしの影からゆらりと立ち上がるのは――
「……まったく、仮にも上司だというのに人使いが荒すぎないか?」
戦闘装備に身を包んだシャキール。
「見せ場用意してやったんだから感謝しなさいよ」
思わずほっと溜息をつきかけたのを飲み込んで、憎まれ口を返す。
「魔法に〈転移〉……魔力を分け与えた?……こんな……」
「こんな……原住民に、とでもいいたいのかしら?」
鳥の嘴から小さくこぼれた呟きを冷笑とともに補完してやると、苛立たしげにこちらをにらんできた。
魔力による念話の応用だ。科学的な通信が使えない結界内部でも、位置情報さえ特定できれば同じく魔力による転移で飛び込むことができる。
今のところ、あたしとシャキールの間でしか使えないこの切り札があるから、ヒナギクではなくあたしがここに来る必要があった。
結果として交渉とは名ばかりの揺さぶりによる威力偵察しかできないというデメリットはあるのだけれど……ヒナギクが交渉に当たったとして、どの程度うまくやれたかは未知数だし、他に手はなかったと諦めるほかない。
「闇の魔力に浸食されましたか!」
「……きっかけは否定しないけど、結構真面目に鍛錬したのよ、これでも」
「不本意ながら、今じゃ俺より強いぞ、こいつは」
おいこら、不本意ってなんだ。
「……っ!ヴァイオレット、ローズ、退きますよ!」
「了解」
「……あ、うん……わかった……」
まだどこかぼうっとしたままのショーコが右手をかざし、生み出した火球で鳥の背後の壁をぶち抜く。
「ちょっ!こら!火事になるでしょうが!」
慌てて炎を吹き散らした隙に、連中は壁の穴から飛び出して行った。
・・・
「……いいのか、追わなくて?」
「できればどっちかは確保したかったんだけどね。いやあ、形勢判断だけは早いわ」
シャキールにそのままもたれかかる。正直立ってるのもしんどいってのは、あれで意外に消耗してたらしい。
「ま、送り狼はつけてるし、こっちにも調査部隊を……どうしたの?」
珍しく何の反応も返さなかった奴の様子が気になって見上げる。
「いや、念話が繋ぎっぱなしだったからな……皇帝陛下をぶん殴る、だと?」
「反逆罪で捕まえる?」
シャキールの嘆息にくすくす笑いながら問いかけると、肩を竦めたらしい振動が伝わってきた。
「グルバスも同罪となると、うちの幕僚が壊滅するんだが」
「それも人徳ってもんでしょ?」
「……否定はせん」
「で、少しは何か掴めたのか?」
遺留品を探して室内を漁るのもいい加減飽きたのか、背筋を伸ばしたシャキールが話しかけてくる。
「色々とね。やっぱ帝国の……っと、開いた」
電気街の中古屋ででも買ってきたのか、二世代は前のノートパソコンを操作しながら生返事。
インターネット経由とはローテクにもほどがあると言うべきか……いくつかの「協力者」はあぶりだせそうだけど、帝国本土側の「背景」についてはさすがに無理があるか。
「ほとんどお前が一方的に話していたようにしか思えなかったんだが」
「こちらの話に対する反応でもわかることはあるものよ。こっちにほとんど隠し事がないから使えるごり押しなのは否定しないけどね」
膝詰での交渉事なら、あたしよりじーさまとかヒナギクに任せたほうがよっぽど手っ取り早い。
あたしがやれるのはもうちょっと乱暴な……尋問とかに近いもんだ。
「そっちは?」
「ああ。簡易結界装置が見つかった。ここの通信途絶は人為的なものだったようだ」
「……いやそうじゃなくて」
じーさまとシャキールのほうで進めてる帝国側の情報収集に何か引っかかってないかって聞いたつもりだったんだけど、さすがのバカ皇子の返答は斜め上だった。しかたない、あとでじーさまに聞くか。
ため息をついたと同時、シャキールが装置のスイッチを切ったのか、突然念話が頭に響く。
『――傷。リピート。被弾によりブラックリリーが負傷』
撤退する二人と一匹を追跡する送り狼としてつけていたダークネスフラワー、そのブラックローズからの緊急連絡だった。
お待たせしました……ひとまず完結までこっちを優先していく所存であります
雛菊「……もはやどこがコメディなのやら」
百合子「作者は『まどマギ』をギャグアニメにカテゴライズする人間だから」




