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Novel Love

作者: 夢幻

「”事実は小説より奇なり”ということわざを知っているだろうか。

当然意味を知っている人もいると思うが、一応説明を入れておこう。

現実の世界で起こることは、人が考えて作る小説より不思議で複雑だったりする。っという意味だ。

俺は別にそうとは思わないし、これから先も思うことはないと思っていた。

そう思っていた、、、。」


桜舞い散る季節。

都会でも田舎でもないこの街にひっそりとたたずんでいるのは、県立水無月みなずき高校。

今日はこの高校での入学式だ。


周りの同級生たちはやれ何組だった?などと言葉を交わし合ってる中、この俺、御鏡司みかがみつかさは一人冴えない顔で式が始まるのを待っていた。

なぜ、そんな態度をとっているのか。そんなこと明白だ。

なぜなら俺は、この学校に入学する気なんてさらさらなかったからだ。

本来ならば、此処ここより一つランクの高い県立神無月かんなずき高校に笑顔いっぱいで登校する予定だったのだが。そう。察しの通り俺は受験に落ちた。

なのでこんな態度なのさ。

「えー。皆さんご入学おめでとうござい―」


そんなこんなで、特に変わったことのないテンプレートな入学式も終了。

俺たちは21回生らしい。

そして俺はこの先一年間お世話になる一年三組の教室に足を踏み入れた。

淡々(たんたん)とクラスの教師がすべきことを進行していく。

今日はこれで終了のようだ。

担当教師がクラスから出ていって、帰り支度をしていたとき俺はあることに気づいた。

「思ったより早いな」

みると周りのやつらはもうすでにグループみたいなものを作り出しており集団で歓談しているみたいだ。

このクラスに俺と同じ中学出身のやつはいない。完全に出遅れた。

俺はそもそもそんなにガツガツと話しかけれる方でもないのでこれは結構辛い。

まぁ、考えてても仕方がなので今日は帰ることにしよう。

その考えを実行しようと教室のドアに向かってきびすを返したその時。

「君、面白い顔してるね!なんかあった?」

・・・。誰だこいつ。目の前に立ってるのは俺より十センチほど小さいセミロングの女の子。

「え?なになにー?もしかして私の名前覚えてないのぉ?」

当然だ。まだ自己紹介だってやってないんだぞ。

「ごめん。わからね。」

俺は、自分でも驚く程の弱々しい声で返事した。

「そりゃ、そうだよね!なんてったってまだ自己紹介してないんだもん!」

殴っていいかな。

「ごめんごめん!からかったりして!私、白水冴しらみずさえ、呼び方は好きにしな!」

好きにしなって。

「うん。じゃぁ。・・・白水さん?」

「なんだぃ!」

なんだぃ!じゃねーよ。そっちが喋りかけてきたんだろ。

「えっと。なんか用かな?」

「いや!君の顔があまりにも面白くて!って。君名前は?」

「・・・。御鏡司」

「司かぁ。いい名前だね!あ。私今日迎え来てるんだった!アデュー!」

そういって、白水冴は全力疾走で教室を飛び出していった。

「なんだったんだ。あれ。」

そう呟いて、俺はそのあとを追うように教室をあとにした。


場所は自宅。

入学式の疲れか白水冴との会話の疲れかわからないが。俺はすごく眠かった。

まだ昼過ぎだし昼寝でもするかとベットに横たわったとき俺の携帯が陽気な着信音と共にガタガタと机の上で踊りだした。

半ばため息混じりで携帯のロック画面を解いてみると。中学校の時からやっているSNSのサイトからのメールのようだった。

===みかみんにお知らせが届いてるよ!===

余談だがみかみんとは俺のハンドルネームのことだ。中学校の時のあだ名でもある。

お知らせを見るために俺は、貼られているリンクを踏んだ。

画面に広がるのはSNSサイトの友達追加の文字。

「・・・。白牙びゃくが。誰だこいつ?」

画面を下にスクロールすると同時に友達申請時に相手に送れるコメントが目に入った。

===やっほぉ!私だよ!そう白水冴!登録よろしく♪===

俺はゆっくりと電源ボタンをおして携帯を床に放りそのまま夢の世界へと飛び込んだ。


どのくらい時間が経ったのだろうか。

俺はゆっくりと体をおこし薄暗くなってきた部屋を見渡した。

すると、暗闇の中一定の間隔で光っているなにかをぼんやりとした頭のまま手にとった。

「・・・なんだこれ。」

手にしているのは昼寝の前に床に投げ捨てた携帯。いや、そんなことはどうでもいい。

もっと異常なことが起きている。

===着信メール300件===

どうやら俺の携帯は未読メールが300件でカンストするらしい。

ちょっとした不安感に襲われながら俺はメールのないようを確認した。

===白水冴だよ♪登録してね===

どうやら300件とも白水冴からのメールらしい。

当然俺はアドレスを教えていない。だれから手にしたんだ・・・。

まぁいい。重要なのは要件だ。

汗ばむ手で画面をスクロール。

===私に協力して。てかしなさい!それとこのメールは至急返信すること!===

他のメールも同じ文章だったことから、そういうアプリかなにかをつかったんだろう。

しかたなく俺は返信ボタンを押し、文字を打ち込んだ。

===登録しました。御鏡司です。で、協力とは?===

「送信っと。」

送信完了の文字。ひと段落って感じだ。

前言撤回。

ついさっき送ったばかりなのに白水冴からの返信が届いたらしい。

===詳しいことは明日話すから!じゃーね☆===

頭が痛くなってきた。

気がつくと部屋の時計の針は九時を少し過ぎていた。

「寝るか。明日も学校あるんだし。」

俺は再び夢の世界へと飛び込んだ。


「私、部活にはいろうと思う!」

おはようございます。今日も元気ですね。

「眠そうな顔してるねぇ!もう春休みは終わったんだよ!」

「朝っぱらそんなテンションに付き合える人の方が少ないと思うぞ。」

俺は車の音にかき消されそうなような声でこう返した。

「んー?そうかな?って違う違う!部活!」

ちなみにこいつの声は大きいというよりははっきりとした声で俺の眠気を奪ってくる。

「部活がどうした?」

「だから、入部するの!物語研究部!」

「物語?」

「そう!私、物語を文章にすることが趣味なんだ!だからちょうどいいかなって!」

「へぇ。がんばってくれ」

っと俺は学校の校門をくぐり抜ける。

「ちょっと待ってよ!協力してって言ったじゃん!」

なにが?俺に協力すべき点はあったか?

「・・・なにをですか?」

俺は三階にある教室へと向かう階段の途中にどうでもよさげに問いかけた。

「・・・一緒に入部してほしい。」

俺は耳を疑った。いままであれほど元気よく話していた白水冴が小さなこえで俺に懇願してきたのだから。

心なしか顔が赤いようにも見える。

「私、中学までほかの県にいてね、引っ越してきたの。だから、知り合いいないんだ。」

「それで、俺って?」

「うん、みかみん面白いし、なんかわかんないけど、頼ってみたくなった」

俺も浅はかなもんだな。もう気持ちが揺らいでやがる。

そもそもに俺は部活になんか入らずにバイトなんかをして三年間を終わらせる気でいた。

でもまぁ。わるくねぇかな。

ちょっとした暇つぶしには十分だ。

「わかった。協力してやる。ただし、飽きたらやめるからな。」

俺は相手のテンションが下がると自分のテンションが上がるたちらしい。

そんなわけで、こいつとの会話のなかで一番はっきりとした声で返事してやった。

「うん・・・。ありがと!じゃ、放課後ね☆」

笑顔を取り戻した白水冴は教室まで俺を置いて走り去っていった。

って、さっきあいつみかみんって・・・。


今日は部活見学の日らしい。さっき知った。

帰り際に担任が言ってたな。

「だから、あいつ。」

クラスではグループでまとまって何部に入るー?などっといった声が聞こえてくる。

別に誰かと相談したって、入る部活なんてそうそう変わらないだろうに。

・・・。混ざりてぇ。

俺も、「○○部はどうー?」、「あ!その部活のマネージャー可愛いらしいよ!」っとかいういかにもな会話をしてぇよ。

否。いまからでも遅くない。俺はそう思いそのグループの方へ足を踏み出した時。

「みかみん!部活見学行こ!」

デジャヴかよ。頭いてぇ。

しぶしぶ俺は別校舎にある物語研究部の部室へと足を運んだ。

「明日こそ・・・。明日こそは・・・。」


「こんにちは!部活見学にきました!」

白水冴が勢いよく部室のドアを開ける。

「・・・。誰もいないな。」

物語研究部の部室は一年三組の教室の半分ほどの空間には机が四つだけ並んでいるひどく殺風景な場所だった。

「今日は休みなのかなぁ?」

「そうみたいだな。んじゃ、今日はかえ―」

言葉の途中だが俺はあるものを発見した。

「どうしたのー?なにこれ、張り紙?」

部室のはしの方に貼られていた張り紙にはこう書かれていた。

===新入生、ご入学おめでとう。この張り紙を読んでいるってことは物語研究部に入部希望ってことでいいのかな?でも、すまない。この部活には部員がいない。21回生の君たちでなんとかして部員を4名以上集めないと来年には廃部という形になってしまう。集められなかった私が言える台詞ではないが、これを読んでいる新入生!頼む、物語研究部を存続させてくれ。 物研部 部長。===

「あーあ。こりゃ仕方ないな。諦めようぜ。俺入れても二人さすがに無理じゃねえか?」

俺は白水冴を煽るような形で言葉を放った。

「・・・。そうだね。部員がいないんじゃ仕方ないね。現実的に集まらないよね。」

震えるような声で白水冴が返事したのを確認し、部室から出ようとしたその瞬間。

ガラッ。

「なんや、あんたら?俺と同じ部活見学者か?」

関西弁の髪の長い男が部室へとドアを開けて入ってきた。

戸惑いを隠せてない白水冴はほっといてここは俺が事情を説明する。

「・・・。そのつもりだったんだけど、この部活廃部になるみ―」

「?結構一年生いるじゃん。以外。」

ロングヘアーの一年生が関西弁の男の後ろからそう呟いた。

つか、今日何回目だ?言葉遮られるの。

って。これって。

「1、2、3、4。四人集まったっ・・・!」

さっきまでの表情が嘘のように白水冴は笑顔を取り戻していく。

俺はこの状況を脳が理解するまでの間、笑顔になった白水冴のことをぼんやりと眺めていた。


事実は小説よりも奇なり。

ことわざって、上手くできてんだな。

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