常春の惑星
今回補給に立ち寄った星は、火星と地球の真ん中グライのサイズの惑星だ。
太陽からの距離も程よく、星全体が春の気候と言ってもよい。
大気はの厚みは25キロメートルと厚く、過去に何度も彗星の衝突を受けたと思われる。
しかし、安定した時代が長いのか、酸素濃度は地球の倍に近い。
海を上空から確認すると、青く美しい………
コレは、海の温度が予想された温度より低い事を示している。
何故そう推察出来るかと言うと。
例えば地球ならば、南の楽園などと呼ばれる島の様に、水温が高い海は透明度が非常に高くよく魚が見えるのに対し、逆に北海道など寒い地域の海が、濁っているので、海の底などとてもでは無いが見え無いはずだ。
コレは水の性質が原因になっている。
水は、温度により酸素が溶ける量に違いが有るのだ!!
温度の高い南の海は、酸素の溶ける量が少ない為に、プランクトンなどが少なく透明度が高い。
しかし、北の海では、水温が低いために、プランクトンが育ちやすいのだ!!
結果として、プランクトンを餌とする魚やクジラ、その他の生き物が多くなり、透明度が落ちると言うわけだ。
とりあえず、着陸してみる事にした。
高い木は無いが、この星は、とても緑が豊だ。
しばらく調査をしていたら、15メートル有る外骨格の蛇の様な生き物がいた。
初めは、凄く驚いたが、動きわゆっくりとしていて、逃げる事は容易い。
仮に、ノロマな蛇と名付けた………
このノロマな蛇を、調べてみて、驚いた。
血液中に銀を大量に含んでいるのだ。
この銀を使い酸素を体に送っている。
コレは、かなりユニークな特徴と言える。
何らかの形で銀を使ったとしても、地球には、銀を使い酸素を運ぶ為に使う生物は存在しない。
地球で酸素を運ぶ為に一番多く使われてるのは、鉄であろう、次は銅だ。
他には、一部の二枚貝がリチウムを使ったり、有名どころでは、ホヤが特殊なタンパク質を使いゲルマニウムを利用してたはずだ。
リチウムやコバルトなどは、銅ほどでは無いが呼吸に利用しやすい特徴をもっているが。
銀は、非常に使いやすそうで、使い辛い元素だ。
この、ノロマな蛇は、硝酸イオンを上手に扱い、銀イオンを生命活動のために有効利用しているのだ。
基本的には、地球の生物は、窒素を還元して得た塩基を、利用する生き物で、窒素塩基なしには、地球の生物は存在出来ない。
しかし、炭素を利用した酸、例えば炭酸やカルボン酸などとちがって、窒素原子の酸である、硝酸イオンを、地球の生物は、恐らく存在しない。
しかし、このノロマな蛇は、高濃度のアンモニアに適応して、酵素が硝酸と窒素酸化物をうまく、産生および処理を細胞内で上手く活用出来ていると言う事だ。
コレは、驚くべき生命の可能性を示している。
すなわち、原子や分子の電子軌道とエネルギー準位の性格やイオンを活用できるならば、生命の可能性は、無限に広がって行くはずだ。
ノロマな蛇の遺伝子とサンプル細胞を採取していると、30メートルにも達する巨大な蝶が飛んでいた。
怪獣映画から出てきた様なその蝶は、低重力で高密度のこの星でも驚いてしまう。
蝶を追いかけ、調査を続行した。
どの様にして、コレほど巨大な蝶が飛んでいるのか調べてみると、飛ぶ為だけに進化したかの様な体になっていた。
特に体を軽くするために、消化器官が完全に無くなっているのだ。
恐らく、生殖のためだけに、成虫になる虫の様な生き物なのだろう。
更に軽くする為に、血を無くしている。
もちろん全く無い訳では無いが、ギリギリまで減らしているのだ。
その方法は、昆虫に良く見られる構造………
気門につながる気管を使い体の隅々まで、それこそ羽の中まで張り巡らされている。
そして直接気管から酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するのだ。
例えば、人間なら、肺で呼吸して、ヘモグロビンに酸素を結び付け細胞に運ぶ。
人間の体温では酸素を水に溶かして運ぶ事が出来ないからだ。
逆に、二酸化炭素は水に良くとける、厳密には赤血球が二酸化炭素を溶かす酵素をだしているのだが、単純な比較なので無視する事にする。
結果として、炭酸水イオンとして運ばれ、肺でから外に出て行く事になる。
この、バカデカい蝶は、二酸化炭素を溶かす為の水分を排除する事でより軽量化したのだ。
もちろん最低限の血液はもっているが、飛ぶ為なのか、あるいは生殖のためなのか、その命を削って飛ぶ蝶を眺めていると、補給完了の知らせが来た。
色々名残惜しいが次の星へ向かう事にした。