第四十二話 テーマを絞る
序盤のうちはメインテーマを一つに絞らないといけない。それも明確なものに。
「恋愛」なのか、「冒険」なのか、「推理」なのか、といった具合に。
「冒険」と言っても、もっと具体的に絞らないといけない。「何をするのか?」という点だ。
ラノベタイトルのように、一文で言い表せないといけない。これが漠然としか思い描けないという事は、すなわち作品のイメージも漠然として方向性が見いだせないということだ。
読者は、読むかどうかを決める時に、この「方向性」を見る。
主人公がなにをしようとしているかではなく、作者が何を書こうとしているかが知りたい。
メインテーマでは、作品を一文で言い表してみるといい。
例えば、わたしの作品、『情景描写好きに捧げるファンタジー』では、幾つかの目論見があり、「情景描写をクドイくらいに描きだす」「ハードボイルドなストーリー展開」「陰謀とかサスペンス」「ちょっとだけロマンス」「三角関係とか勘違い恋愛模様」と、色々と突っ込んである。
けれど、メインは「ファンタジーで映画ボディガードを」である。上はすべて付属だ。
そうなれば、序盤のうちには「映画ボディガード」が来る。もっと明確な文章に直すと「少女を守る凄腕の男のロマンス」になる。
本当なら、このメインテーマを中心にプロットは組まれてゆかねばならない。
「少女を守る凄腕の男」から派生して、なぜ守る必要があるかの理由で「陰謀とサスペンス」が内包される。だから、序盤でまずメインテーマがくっきりと読者に印象付けられねばならないのだ。
わたしはここで失敗した。
第一話は戦闘シーンにしたが、メインテーマからは外れている。これは、読者には意味不明な描写でしかない。ポエムの亜種だ。(苦笑
メインテーマに従って、少女を庇いながら戦うシーンを書くべきだった。
第一話は「なぜ守ることに至ったかの理由」であり、これは「陰謀とサスペンス」だ。
「少女を守る凄腕の男」とそこに付随する「陰謀とサスペンス」なのだから、順序が逆なのだ。
序盤のうちに、メインテーマを伝えねばならない。そこから順番に5W1Hが語られねばならない。
さて、メインテーマから派生して第二テーマが生まれた。「陰謀とサスペンス」を演出する為に他のテーマ、情景描写のみでとか、ハードボイルドで、といった描写の仕方についての方法論が決定する。
ダブル主人公にした理由は、メインテーマの「ロマンス」に付随した為だ。
「凄腕の男」には「守る」に関するテーマが集中した。
そこにロマンスまで噛ませてしまえば、テーマが関連せず、ブレる。
作品のテーマを絞るには、主人公を二人にして「ロマンス」の部分をヒロインに分散する必要があったのだ。片思いのロマンスとか、勘違い恋愛とかが、ヒロインのテーマとなって、独立した。
これで、ヒロインとの関連で、凄腕の男にも「ロマンス」に関わる描写が出来るようになる。
関連するテーマならば幾つ付けても構わない。
だが、それぞれのテーマは「関連を追ううちに表出」されねばならない。
これさえ守れば、展開があちこちに飛んでも読者には理解が為される。これが守られない作品は「超展開」や「突然方向転換」に見られてしまう。
序盤でやってしまうと、「どんな話なのか見えなくて興味を惹かない」になる。
この構造を知らねば、テンプレを使わないで作品を書く事が出来ない。テンプレ部分を書き終えた途端に失速する理由だ。




