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第三十四話 タフガイ主人公『ハードボイルドに土砂降りの雨はよく似合う』

ハードボイルドの名作「さらば愛しきひとよ」の、村上春樹バージョン読んでてふと気付いた。

あれれ? 天才がかなり苦心しておられる。(笑


ハードボイルドは、三人称神視点(誰の内面にも踏み込まない立場)で書かれるもの、と相場が決まっており、古い作品はのきなみ三人称神視点で非常に素っ気ない書き方だったようだ。(原文ではさすがに読めないので確認しようがない)

ハードボイルドファンによっては一人称になったり、刑事が主役に据えられるようになった時点で、ハードボイルドの終焉とまで言ってしまったりする。


ハードボイルドの主人公はアウトローでなくてはならず、社会通念クソくらえな立場と、他に依らない己の価値観を貫かねばならず、まぁ要するに刑事がダメって理屈は社会性が生まれてしまうから、という事らしい。完全アウトローでないとイカン、ということらしい。よく解からん。


私は実は小説読むのは苦手であって、小中学生時代はせいぜい年に数冊読めばいい方だった。

けれど、海外のドラマや洋画、漫画は積み上げたら山になるほど観てきた。そのせいでハードボイルド世界が大好きになったものと思うが。


私にとってのハードボイルドとは、ブレードランナーに見る「雑然として小汚い画面」と、ゴッドファーザーに見る「シビアな人生模様」と、ブラックレインの「救いの無さ」と、ダーティハリー、クリント・イーストウッドの「哀愁漂う背中」なのだ。

あああ、イーストウッドも良いもんだが、ルトガー・ハウアーも良いもんだ。ハンフリー・ボガードなんかサイコ―だ! ・・・失礼。


で、村上センセがえらい苦心してるな、と思ったのは『一人称文章における哀愁の表現』であるよ。

哀愁ってのは、これ、自分で言っちゃったらギャグになる最たるものでさ。(苦笑

一人称って基本が自分語りでしょ? ものすごく苦労してると、終盤に来て気付いた次第だ。

素っ気ない書き方で定評のあの村上春樹が、だよ。


前述のハードボイルドファンは、「ハードボイルドが一人称で書かれたのは画期的だったが、同時に、一気に非情さが薄れた、」と評しているんだよね。

ハードボイルド、私が好きなものの対極にあるのは、いわゆる「シティー派」というジャンルだ。

セックスアンドザシティーとか。男女七人とか。危ない刑事とか。(笑

本来はシティー派ではなく、ハーフボイルドとか言うのが反対作らしいが、私的にはシティー派と呼ばれるオサレな画面を持つ作品すべて、ハードボイルドとは認めたくない勢いで否定する!(笑


どんよりと、どこか退廃的で絶望感が滲んでいるような絵面でないと、ハードボイルドの非情さや哀愁というものは描ききれないんじゃないかと思うんだ。ハードボイルドに土砂降りの雨はよく似合う。

まぁ、シティハンターという名作は画面綺麗だったけどね。(苦笑




で、一人称で「哀愁漂う」という事を表現するのは難しいのだと解かったわけだが。

特に主人公に哀愁ある大人の男を設定出来ない。背中で語る、というのを一人称では書けないよ。ギャグか。(笑

ハードボイルド主人公といえば、軟弱さを見せないタフガイで、人気の主人公タイプの一画を制覇してる存在だ。だが、盲点だ、このタイプは一人称で書くのが難しいって事だったんだ!!


一般文芸に行くほど、三人称へ移行する。その原因の一つが、実はここにあったんじゃないかと踏んでいる。(笑

さらに言うなら、三人称一元視点でも難しい。一人称の性質がある限り、描写が難しいということだから、一人称と同じ性質をもつ一元視点でも難しいのは当たり前なのだ。

一言でいうと、『自画自賛』。

その状態になっているハードボイルド主人公の出演する作品はおそらく一般文芸にすら多数存在するんじゃないかなとか、恐ろしいことを考えてしまったぜ。(笑


もっと言うなら、今ドキの若い読者層は『ミサワ』とかで自画自賛ネタに慣れ親しんでいるのがネックだ。「イタいわ、」とか思われてんじゃないかなと妙に寒気を感じた次第だ。(苦笑


小説は、100%語りで出来たものだ。完全傍観視点の地の文のみが、客観視点である。他は、一元視点の地の文も主人公の語りの一部であるから、そこで哀愁とか描写してみたって、やっぱり「ミサワ」なのである。自画自賛だ。

「俺って、ワイルドだろぉ~?」

あ、ダメだ、ハードボイルドが・・・。


主人公をワトスンに設定してしまうのも一つの手、という事になるんだろう。そうして、主人公の目を通して、実際の主人公であるハードボイルドな人物を描写する?

実はその手法が、漫画や映像作品なのであるよ。あれは台詞を喋らない限り、そこにある視点は「客観視点」だからだ。

夕日に染められ、たそがれて、煙草の煙でも吹かしてりゃ、それで絵になる、哀愁漂う。

だが、それは「映像」だから出来るワザだ。そのたそがれた主人公を見ているのは主人公ではない視線だ。三人称神視点以外の小説形態では出来ない。「主人公を」たそがれさせる事が、だ。


哀愁描写を直接的にではない、間接的な方法で書いてみたら、きっと今度は「読者の読解力」に依存してしまい、正しく描写を理解はされないのだと思った。心理描写に頼れば惰弱さに映る、背中で語らせるには他者の視点が必須となる、弱音を吐かないタフな主人公の「弱さ」を表現する方法が、ないのだ。


ワンピースのゾロや、竜が如くの桐生や、ゴルゴ13、そういう主人公を一人称小説の主人公に設定すると、高確率で「ミサワ」化する。(笑

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