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捕捉用例文「二種類の会話文の違い」

《sideA 推理形式》


 前日のパーティは華やかに終幕し、翌日まだ早いうちから少女は公爵に謁見を願い出ていた。両親には市内見物に出かけると偽って、メイドの一人を伴っていた。このメイドは、兼用でアリーシャのボディガードを務めてもいる。つかず離れず、一日中傍に居る女だ。


「お嬢様、本当にお一人で行かれるのですか? 旦那様や奥様に御相談なさった方が……、」

「いいの。今朝のお父様の話を聞いていたでしょう? まるで取り合って貰えなかったじゃない。お父様は権威に弱いのよ、公爵ともあろうお方が嘘など吐くものかと思ってらっしゃるの。」

「お嬢様は、そう思ってはいらっしゃらないのですか?」


 アリーシャの顔を覗きこむようにして、メイドの女は口元を僅かに上げて問いかけた。瞳には悪戯を仕掛ける直前の妖しい光が湛えられている。少女よりもかなり背の高いこの女は、仕える主に問いかけるのに少し背を丸めて屈んだ姿勢を取っていた。上目遣いの含みをもった微笑でアリーシャを見ていた。

「メリーアン。そういうあなただって、わたしの方が正しいと思ってるんでしょう?」

「そうですね、少なくとも私の知るヴェルトーク卿は、旦那様ほど良い方ではありませんね。」

 頷いて、メリーアンがそう答えた。



《sideB 説明形式》


「ギルドの窓口はすべて封鎖されているんだ、一番近い所でも村を一つ隔てた隣町だ。ここと同じ鉱山都市でな、こっちが涸れちまって、皆そっちへ移っちまったんだよ。そこなら、幾つもギルドはある。商工ギルドに冒険者ギルド、それに……大きな声じゃ言えんが、アサシンのギルド支部もな。」

 マスターはカウンターから僅かに身を乗り出すようにして、少女の耳元へ口を寄せる。告げ口のように密やかな声で教えてくれた。


「ここ、ヴェルトーク領じゃアサシンズギルドは幅を利かせた存在だが、他の場所じゃあそうもいかない。伝手を見つけるだけでもひと苦労するって噂だ、そうそう大手を振っていられる商売じゃあねぇからな。」

 視線でアレンを盗み見しながら、意味深な笑みを口元に浮かべてマスターが言った。


「多くは商談、あるいは観光と見せかけて、依頼したい奴等はこの領内へ入るんだ。言い換えりゃ、商工、冒険者、職種の違いはあれど、すべてはアサシンズギルドの息が掛かっているってことだな。だから、何処でも受理可能なんて話になってんのさ。」

 大きな力を持つ組織だと言外に仄めかし、マスターは肩をそびやかすような仕草で、屈めた背を伸ばした。

 次に出た言葉は元の声量に戻っている。


「カルタナって街だ。おい、アレン。そこくらいなら連れてってやっても構わないんじゃないのか? 山ひとつ越えた程度だ、マケてやれよ。」

「口が過ぎると災いを招くぞ、マスター。」

 自身へ向けられた言葉に、憎々しげに表情を歪めてアレンが答えた。




以上。


どです?

上記、sideAの会話のほうが、読んでいてなんだか気分よく読めません?(笑


なぜなら、Aの文は貴女が推理しながら、自分が主導権を握ってその場面を眺めているから。

下記Bの文は、いわば説明会場で、演説を延々と聞かされているようなもので、貴女は完全受け身の傍観者だからです。

上では貴女は探偵役で、ヒントを出してくる役者に付き合っている。だから、気分よく読める。(笑


けれど、イマドキの若手読者は下記の方が読みやすいと思ってる人も多いんだけどね。

それで、読後に満足感がないことを奇妙に感じている。(笑


一般で多い、Aの形式で書かれた小説は、読後に達成感がありますがな。「自分が」読み解いたんだから、そりゃ満足感はあたりまえっすよ。(笑

対して、下記の説明文小説ってのは、ストーリーのアウトラインをちょっと詳しい目にして書いたダイジェスト文章に近いです。

なのでBは、さくっと読めはしてもなんかイマイチ頭にも心にも残らない。(笑


そんなのは、当たり前だ、と。

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