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地の文捕捉 設定説明で進む「例文」

ちょうど良く、改定前の文章を残しておいたのが役に立った。

いや、自戒の為に残してたんだけどね。(笑

《side 設定説明文での進行》



 女王候補が選出されるのは、現女王が退位することが確定した時だけに限られた。早逝してしまう場合や今回のように病の為に退位する場合、また、女王は処女王と決められており、もし、誰かの手が付いたならばその時点でも退位が決定される。実際には処女と非処女の区別など付くはずもなく、懐妊をもって退位と決められていたが。


 選出される娘にはある特徴が必要とされた。

 『魔力』の有無である。魔法が使えることが、女王候補となれる者に必須の条件だった。


 この世界には不思議な現象を意図的に起こすことが出来る者が少なからず存在する。大抵の能力は、内向きのものであり、自身に向けての現象であった。商人の中にたまに見られる不思議な袋の能力などは、袋を通じて別の場所へ物を移動させたり、作り出された別の空間に繋げた入り口であろうと考えられている。


 魔法は、それらとは別次元の力だ。

 他者の受けた傷を癒し、死者を使役し、自然界の力を行使して"外"へと向かわせる事が可能だからだ。

 『能力』は、自身に作用する力であり、『魔法』は、他者に作用する力である。


 力の強さもまちまちで、指先に小さな火を灯すことが限界という者も居れば、一面を焦土と化すことが出来る者もいる。ほんの一握りの人間だけに発現する力だ。そして、魔法を授かるのは、女性に限られていた。それも、王家の血を僅かにでも受け継ぐ貴族の家系からしか、出現しない。

 魔力の大きさ、威力の強さ、風格や美貌などを吟味して、女王は選出される。


 誰かの興奮した声が響いた。


「貴族にとって、候補の娘は価値が高い。途中で落選したにしてもよ、王家の血筋ってことの証明だ、そりゃ大変なことになるんだぜ!」

 身振りまで付けて、声を張り上げた男は慌てて口を噤み、背中を小さく丸める。


 候補の娘も千差万別、とにかく魔法を使える娘はこの時期、一同に集められることとなる。審査にパスする者はそれだけ、容姿と内容が伴う者であり、価値があった。候補に選ばれたというだけで、結婚相手には事欠かなくなるほどに。

 それだけに、強い血統を持つ娘が勝手に貴族間で婚姻を結ぶことは危険視される。結果、選抜戦を辞退するには違約金として、かなり高額の罰金が処された。リスクを課すことで、あまたの貴族たちが徒党を組むことを阻止し、中央に権力を集中する助けともなっている。

 中央で政権を握る、十二の貴族に集中する仕組みが取られていた。


 アリーシャは、静かなさざめきに満たされた薄暗い店内で、湯気のあがる暖かいミルクに口をつけた。

 どこかで、こんな雰囲気を味わった。


 ◆◆◆◆◆


《side 会話文主体での進行》



「ローアセリア様は重篤な病に冒されているってぇ噂だったが、やっぱり事実だったのか。」

「現女王陛下が退位を表明しない限り、女王候補の選出は行われたりしねぇからなぁ。相当お悪いとは聞いちゃいたが、やっぱりかぁ……。」

 ひそひそと、アリーシャのすぐ後ろのテーブル席で屈強な男二人がため息交じりにそんな事を言った。


「まだ年端もいかないお方だったはずだ。昔っから、帝国全土を統べるは穢れなき処女王と決められちゃいるが、それでもなぁ。恋も知らずのままとは、お可哀そうに。」

「本当になぁ。不運の許にお生まれになったもんだ。国の事を誰よりも憂えておられたし、良い女王様だったのに。国民にも慕われて……、これからって時だったのによぅ。」

 出来るなら俺が代わって差し上げたいぜ、と強面の大きな男がジョッキを片手に泣くのである。

 不思議な光景に見えた。


 酒場の男たちは、まるで少女がその場には居ないかのように振る舞い、厄介事に巻き込まれまいとしている態度がありありと見えた。アリーシャが視線を向けると、露骨に目を逸らす。


 アリーシャは、現女王ローアセリアを一度だけ見たことがあった。アウク・ヴァルム神聖帝国――帝国の女王は選任制で、主要貴族の議会決定によって選出される。正統王室ヴァルム家の名を受け継ぐ唯一の存在だ。王家の血筋の証明は、『魔法』であり、代々の女王は魔法を使うことが出来た。

 神の認める正統後継者である証が、魔法を使えることだった。


「女王選出か、自身が生きてるうちに二度も拝めるとは思わなかったぜ。」

「また首都が騒がしくなるな、お祭り騒ぎがひと月ほども続くんだからよ。」

 祭りは一年後だ、と笑いながら誰かが訂正した。


 ローアセリアは類い稀な美貌と気品に満ちた女王だ。

 一段高いひな壇の上で、椅子に腰かけ優雅に微笑んでいた彼の人の姿をアリーシャは思い出した。自身と同じ歳とは思えないほどに大人びて、落ち着いた雰囲気を持つ少女だった。


「候補を絞るだけで一年がかり、さらに一年かけて十二名からたった一人の女王を選び出す。大変な作業だ、例の公爵閣下も多忙を極めることだろうさ。」

 声を落とし、それでも少女に聞こえる程度の音量に絞って、また別の男が囁く。


 場に満ちていた敵意はいつの間にか消え、代わりに不運な少女への同情や、腫物を扱うがごとき遠巻きな空気が、よそよそしい人々の態度と共に強く感じられるようになった。

 誰かの興奮した声が響く。


「貴族にとって、候補の娘は価値が高い。途中で落選したにしてもよ、王家の血筋ってことの証明だ、そりゃ大変なことになるんだぜ!」

 身振りまで付けて、声を張り上げた男は慌てて口を噤み、背中を小さく丸める。


 アリーシャは、再び静かなさざめきに満たされた薄暗い店内で、湯気のあがる暖かいミルクに口をつけた。

 どこかで、こんな雰囲気を味わった。


なぜ上記の文章がダメなのか、お分かりだろうか?


ぐだぐだとは言わない。要するに、よほど興味を引かれた、あるいは小説を読もうと身構えている人しか、読もうという気にならない文章なんだよ。(笑


設定説明文ってのは、「その対象に興味がある人だけが」面白いと思ってくれる文章だってことね。

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