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第二十六話 文章技巧の必要性

三人称は自在ゆえに統一させる事が難しい、という話を前回にやった。

さて、文章なんざ読めりゃいいじゃん、という向きもあるだろう。事実、なろうのランキングではあまり文章技術は問題にされていない傾向がありありと見て取れる。


しかし、それは「なろうだから」だ。

中高生向けの、ラノベ作品風が主流で、二次三次、劣化、なんでもオケな場所だからである。

慣れ合いで似たようなレベルの作品を気軽に読みたいというニーズの場所だからだ。


文章技術の必要性は、物語とのマッチングにある。

難しいテーマや社会問題を扱い、大人向けの作品を作ろうという時にこそ必要とされるものだからだ。

そういう重厚な作品が、未熟で幼稚な文章で書かれていても、胸に迫るものなどない。

折角の感動も半減だ。


未熟な子供を軸に据えて、その子供にまつわるテーマを扱うならばまた違った味ともなるだろうが、普通は雰囲気を損ねるマイナス要因にしかならない。

大人の問題をテーマの主軸に据えて、大人が語るストーリーでは、高い文章技巧が必要になる。家族に関する問題を掘り下げてテーマとするような物語を、稚拙な文章では書き切れないはずだ。


誰にでも、そういう重厚で難しいテーマを考えることは出来る。

そういうドラマ、漫画、映画など、小難しい小説を読んでいなくとも、他の媒体で「考え方の訓練ならしている」だろうからね。

問題提起する作品に触れれば、無意識にも心の片隅に刻まれているものだ。何かのキッカケがあれば、むくむくと想像は浮かんでくるだろう。

しかし、それを作品にするとなると話が違ってくる。技術が必要になる。


そういう技術の話をここではしている。



幼稚な文章しか書けない作者には、幼稚な内容しか満足には書きだせない。文章レベルに応じた読者の求めにしか応えることは出来ない。

だから、文章技術を磨くことは、本当の意味で多くの読者のニーズに応え、自在に物語を紡ぐ為に必要な勉強だ。


一人称で完全に主人公視点だけで、自身の書きたい部分を余すことなく書き切れるという技術。

三人称で微妙な視点描写の偏りを駆使して、自身の意図するままに文章のイメージを操る技術。

そういうものがあって初めて描き切れるというストーリーは膨大に存在すると思うよ。



ところで、第十九話で蝉川氏はラノベ向きじゃない、という事を言ったが。

作風というものは、おおよそ作者の好む作品群の影響下にあるもので、たぶん氏はラノベをあまり好んで読むわけじゃないんじゃないかなーと思うんだ。(笑

けれど、ファンタジーは間違いなくお好きだろう。だが不幸なことに日本は娯楽に関しては発展途上国であるからして、海外のように重厚なファンタジーの需要が無いんだよね。


本屋を覗けば、本棚にあるのは「ラノベ」「時代劇」「ミステリー」だけだよ。

これを発展途上国と言わずして何処の国を発展途上国と言わしめるのか、てな感じだよ。

貧相な国だったんだね、日本は。(苦笑


ラノベを起爆剤に、ようやくこの発展途上の我が国の文芸にも、光明の兆しが表れた、てな感じかね。昨今のブームは。なんやら廃れてしまっていたSFやらファンタジー系統の続編が次々と刊行されているのを見ると、動き出したのかな、と期待するね。

というわけで、蝉川氏の需要が出てくるにはあと数年待たねばならないかも知れないな、と思った次第であるよ。(笑


日本語の文章が、現状のカタチになったのは、明治維新のもっと向こうなワケで、それを考えるとまだまだ小説文化の歴史は始まったばかり、ということなんだろうね。

(最近、鍵括弧と句読点に関するエッセイを書くのに調べたりして感じたことだけど。)

追記:


漫画文化がものすごい勢いで広がって、最近は停滞気味だ。

今度は小説が少しずつだが既存の勢力版図に変化の兆しが見え始めているような気がする。推理か時代物、だけだったものが他のジャンルを受け入れ始めているなら嬉しい。


想像力ってのは、何もないゼロから生み出す能力ではなくて、頭の中のデータバンクから引っ張り出したモノの改変能力とでも言い換えるべきもので、想像力が低い人ってのは現在流行しているものを引っ張ってくる程度の応用力しかないって意味なんだよね。想像力逞しい人は、過去のちょっと小耳に挿んだ程度のデータすら利用してくる。


このデータバンクのデータは、実体験以外にも、見聞きしたすべてじゃない? 漫画やアニメの映像世界を元データに、小説の文章世界を想像するだけの地力が付いたってことなんだろうか、と思う。

いくら文章で詳しく書かれても、それを想像するには読者の側に地力が必要なんだからさ。ファンタジー世界を、ようやく画面として想像出来るだけのデータパーツが揃ったってことかなぁ。

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