第二十二話 余計なお世話で閃いたこと
こないだ短編を読ませてもらって、感想文を残してきたんだけれど。
キャラ設定が、大人気の商業作品の登場人物とモロ被りしてしまっていて、勿体ないという事を書いてきたんだけども。作者さんは気を悪くされたかも知れないな。
で、どうしてそういう事になったんだろうかと、ふと気になって考えた。
つまり、A子というキャラが初登場を果たした時に、なぜか、人気商業作のB子とオーバーラップしてしまっていたという現象だ。登場した途端に、「ああB子の影響受けたんだろうなぁ、」なんて勝手に決めつけてしまっていたんだ。
とてもB子と似通っていたという事はもちろんあるんだが、それでもオカシイんだよ。
商業作品、それも名の通った作家の作品ではそんな事は一度も経験してないんだよ。
それっておかしいと思わんかい?
似たようなキャラなどゴマンと居るわけで、上記のようにそういう有名どころがポッと浮かんでも良さそうなのに、そんな事は長い読書歴で一度もないんだ。作中の人物たちは皆、きちんとその作中の人物として認識されて、他の作品とかは出てこないんだ。
読んだ時にすんなり紹介文にある〇〇〇〇という人物と認識させるって事が、一つのテクニックなんだろうね、つまりは。
そう考えると、なるほど、初登場時からいきなり特徴的なところなど見せないなぁと思う。
まずは人物以外の、事件だとか、世界観だとかを見せて、その物語世界を確立させた上で、登場人物は普通のモブのような顔をして現れて、わずかのうちに個性を見せて〇〇〇〇というキャラクター性を読者に印象付けている。
そういえば、紹介用のエッセイでスコップ振るっている時にも、これは!と思わせられる作品は多い。
冒頭で、重厚な世界観の表示に成功して、読者であるこちらに興味を植え付けてくるわけだ。
そして、間髪入れずに、最高のタイミングで人物が登場し、会話を始める。
ここ、世界観提示に長い間尺を取ってしまうと冗長になり、設定説明がウザくなる。あくまで、興味を与えた時点で切り上げねばならない。
そして、登場人物が出てきて物語の始まりを感じさせると同時に、主役か準主役を印象付けてくる。
だが。
時々、この、人物が登場したとたんにブラウザバックしてしまうような作品に出合うんだ。
重厚な世界観、なのに、そぐわない軽いノリの人物、会話。
興醒めしてしまい、そっと閉じる。
そのまま読み続ければ、そこそこ面白いんだろう。本スレで時々名が挙がる作品だしな。
一般的な読み方となろう読者の読み方は違うのかも知れないと思わせられた一事だ。
(後で、なろう読者は冒頭展開する設定説明箇所は飛ばして会話文から始めると聞いて納得した。)
後にもう一度チャレンジしたが(お勧めだったので)、地の文や世界観の重厚さに比較しての、人物たちのノリの軽さがどうしても我慢出来なくてギブアップした。
暗い世界にはその世界に相応しい人物のトーンがあってしかるべきだとわたしは思う。
(逆に言うならそんな明るい人物たちの住む世界をわざわざ暗いトーンで描写する必要はない。)
《冒頭部の注意》
〇冒頭、第一にはインパクトのある事柄を持ってこないといけない。
〇人物を登場させ、その世界の人物たちの精神性、トーンを明確にする。カルいのか、重いのか。
〇世界設定を垣間見せ、その世界の状態、トーンを明確にする。カルいのか、重いのか。
〇上記、人物と世界がちぐはぐになっていないか。
〇人物が出てきた時に、同時期で世界や事件もリンクさせて他作品をイメージから追い出す。
〇登場人物を、考え方や性質などを垣間見せて「名前よりも人格を」印象付ける。
冒頭部分は、こんな感じ。
具体的な「掴みの方法」を明記したつもりだ。
なお、インパクトについては、テンプレは駄目。
例えば「日雇いクエスト」、最初は主役でも主要人物でもない人物から始まるが、これがインパクトと人物のトーン、世界のトーン、重要な世界観設定の最小限出し、という点を見事クリアしている。
最初の人物は、少なくとも「その世界に暮らす人々の雰囲気」と「その世界の雰囲気」を提示しなければいけないということだね。
主役やヒロインを出すことに執着する必要はない、という事を教えてくれるいい作品だ。
添削を依頼くださった某さん、まずは自分の作品の冒頭を読み返し、上記の点を確認してみてください。
次は中身の分析を開始していきたいと思います。
追記:
世界のトーンに比べて人々の明るい様子を描くのはどうなのだ、という事を書いたが、もちろん、狙って書く部分は言ってない。
わざと、絶望的な世界で明るくタフに生きる人々を描写して、ってのももちろんアリだと思う。だが、その場合は、そういう描写で注釈を付けるべきだろう。チグハグになっている文章を見ても、普通の人は作者の技量不足としか受け取らないわけだし。
矛盾や整合性同様に、誤解ってのは先回りで潰しておくべき要素だ。




