無気力ニートの日常
やぁやぁ、お久しぶりの方も初めての方もこんにちは。
氷硝栖です。
前までのやつは全てシリアス系だったので、今回はほのぼの系を書こうと思いだった所存です。
気を抜いて楽しんで貰えれば幸いです。
ジリリリリリ……。
朝7時を告げる轟音を止め、ぼんやりとした意識が徐々に覚醒してゆく。
窓際に射し込む朝日に目が眩むが、それに反してベッドの上で胡坐をかき、伸びをする。
よし、今日も快調だ!
そう意気込んでベッドから勢いよく飛び出す――。
はずもなく、朝という最もきて欲しくない時間帯を告げる騒音が鳴り響くブツ。
そいつは主人を起こそうと暴れ回った結果、1分ほどで沈静化した。
まぁ、放置すれば止まる設定だから仕方ないと言えば仕方ない。
雨戸は閉じられ、四方は壁に囲まれていて、自然光は一切入ってこない湿っぽい部屋。
一言で言い表わせば、殺風景かつ無機質だろう。
…おっと、二語になってしまった。まぁこのぐらいの間違いなら許容範囲だろう。
さて、今の状況をまとめよう。
機械によって安眠妨害を受ける。
平日なのに予定なし。
そして、眠い。
この3拍子が揃えば、やる事は一つに絞られる。
そう、二度寝というやつだ。
普通の人なら、早く起きてしまった人がやる行為だろう。
だがオレは、いつだって二度寝が許される人物だ。
うん?
あぁ、自己紹介がまだだったか。
…はぁ、面倒くさい。
じゃあ一度しか言わないので、きっちり聞き取ってくださいね。
オレの名前は……。
コンコンッ。
こんな朝早くに誰だよ、などと不機嫌になりつつ生返事をする。
「…どちら様ですかー…」
「おはようございます、新人兄様っ。朝ですから起きてください」
「………」
よし、聞かなかったことにして惰眠を貪ることにしよう、そうしよう。
そうして再び眠りに落ちようと……。
ドスンッ。
「ぐぇっ」
「お兄様っ、朝だって言っているでしょう?起きてくださいよぅ」
オレの腹と思われる部位の上に馬乗りになっている不届き者が約一名。
まだ寝呆けているせいか、顔がはっきりと見えない。
が、オレをこんな風に呼ぶやつは一人しかいない。
「…なぁ里紗。頼むからオレの上から降りてくれないか?」
「新人兄様が起きてくれたら、離れてあげますっ」
「オレは里紗と話してる時点で起きているよな?」
「うぅぅ〜っ!またそうやって里紗を騙すのですね!?もういいですっ!お姉さんに言ってもらいますからっ」
最後は捨てゼリフのようなものを言いながら荒々しくオレの部屋を去っていった。
…ふぅ、何とか安眠を確保できそうだ。
あぁ。不本意な名乗りだったのは謝罪する
抗議文なら里紗に送っておいてくれ。
オレに送ってきても読まないからな。絶対に。
何故かって?
面倒だからに決まっているだろう。
それにしても珍しい名前だって?そんなはずは無いと思うけどなぁ。
だって日本中にゴロゴロ転がってるし。
目的無き人生を歩んでいる非生産的な連中のことだよ。
彼らのことを総称してこう言うよね。
に………
ガンガンッ。
なんと乱暴な音だろうか。
いくらオレの部屋に入りたくないからって、ドアに狼藉を働くのはよくないことだろう。
そのことを抗議しようとしたところ、
「新人、里紗に何をしたの?」
低く怒気を孕んだ声音に一瞬怯んだが、冷静に対応する。
「…別に、何も。里紗がオレの部屋に入ってきたから追い出した。ただそれだけだ」
「そう、それならいいわ。てっきり里紗に手を出したのかと思ったわ」
「…ねぇよ」
「あっそ。じゃ、さっさと降りてきなさい。朝ご飯食べるから」
「美華姉…拒否権は?」
「なし」
有無を言わさぬ問答には、ただただ頷くしかない。
しかし、朝飯を皆で食べるなんて何かあったのだろうか。
別に朝飯なんて、皆でとる理由なんて無……。
ガチャッ。
「…ノックくらいしてくれよ」
「それが久しぶりに会った兄貴への態度か?」
「………」
「まぁいいさ。早く下に降りてこいよ」
そう言い残して声の主である章矢兄貴は部屋のドアを閉めた。
なるほど。兄貴が帰ってきたからか。
そりゃ姉貴も妹も騒ぐわけだ。
……いや、待てよ…?
これで家族が全員揃ってしまっわけで。
話題は必然的にあの話になってしまうわけで。
そんなことを考えるだけで欝になりそうだ。
ここに残ってやり過ごすって方法も悪くはない。が、それをすると後が怖い。
となれば、この安眠と安息の場から脱さないとな。
「……はー…っと」
ため息にも似た無気力な息を吐き出し、布団という魔性のアイテムから抜け出る。
春とはいっても、室温はまだ16℃程度で寒いこと極まりない。
ホント、寒いのは勘弁してほしいね!
…あ、あと暑いのもムリですわ。
さて、ベッドから出たはいいものの、身だしなみが……ねぇ?
ま、身内だし。髪がボサボサで目死んでるけど、許してくれるよね。
こんな社会のゴミでも受け入れてくれるよね。
……うん?名前の読み方を聞いてないって?
それは貴方たちのご想像に任せるとしよう。
じゃ、オレは今から重要な朝飯に行かないといけないんだ。
命を繋ぐために。
明日という未来を切り開くために。
今日を精一杯生きようと思う。
………どうみても無気力だが…。
じゃ、気が向いたらまた会おうね。