触らぬ雷祟りあり
むしゃむしゃ
「うん、帯電と京雷結構使えるな」
夜も近くなっていたので俺はゴブリンの巣を仮拠点として使い、そこら辺で狩った兎を喰いながらスキルの性能を確認していた。結局ステ振りは15Pを筋力、10Pを魔力に振った。
得たスキルは2つ・・帯電と京雷、多分外のゴブリン2匹に電気を纏って攻撃したのが獲得条件だったのかな?
帯電は武器となるものに電気を纏うことが出来るスキルだが欠点として武器の耐久値が減っていく、そのため帯電を使うときには加減が必要そうだ。
強雷は単純に言うと身体強化、捧げたMPの数だけ身体を強化してくれる、その上強化する部位を絞れば絞るほど効果が上昇してくれる。欠点は10分しか続かないと言う点ぐらいだろうか、ぶっちゃけあんまりデメリットでもない。戦闘では京雷が使えそうだが、日常生活では意外と帯電が使える。現に俺の食べている兎肉を焼くための火だって、そこら辺の木の棒を武器として耐久値を削り切り、燃えカスの火種にすることができる。
え?何を燃やして火種を安定させてるって?決まってる・・・制服の上着だ。
これで火に困ることはないな。それにMPだって10分持続で2つしか消費しない低燃費だし。
ついでだが、称号については何も分からなかった、何も書いてなかったし多分意味の無い物なんだろう。
「明日は崖に登らなきゃいけないし食ったら寝るか」
「ふあぁ〜あ、おはようございま〜す」
・・・って、誰もいねぇか、太陽の高さと空気的に5時半ぐらいか?
この世界の太陽が参考になるとは思えんがまあ、無いよりはいいか。
そんな事を考えながら俺は湖に移動し皮袋に水を補充する。節約して飲めば3日は持つだろう。
「よしっ忘れ物もないし・・・よじ登るか」
今は30mぐらいだろうか、登るときにある程度の目印をつけて、それに添いながらよじ登る。
こうして命を天秤に乗せながら登ると学校時代を思い出す。先生について来いと言われ行ったら高層マンションの屋上に連れて来られたあの絶望感、確かあの時は先生を7人で倒す考えにシフトさせたっけ。結局水道管のパイプ伝って降りたけど、懐かしいな〜それに比べた幾分かましか。
「・・・・オラっっと、意外と早く登れたな」
崖で見え無かった正面側を見ると、緩やかな斜面で地面まで行ける様になっていた。別に時間を掛ければ命を賭けずにこの場所まで来れたのかよ。だが過ぎたことを掘り返してもしょうがない、こんな崖をわざわざよじ登った目的は、ここら一帯を見渡して王国を見つけられる可能性があるからだ。
「う〜ん・・・っお、見つけた・・・・あ?」
3MPを使用した京雷で視力を強化し、見渡した所約5キロほど先だろうか、整地された道・・・多分王国に繋がる道で馬車が人に襲われている。このまま王国に行っても良いが、拾える物は拾う主義であるナイスガイの俺は助けることにした。
「京雷 7使用」
20MPを残し下半身に京雷を発動させる。
そして、足部を地面にぶつけずっしりと轟音が鳴り響き。
そのまま斜面に脚を打ち付けながら・・・加速していく。
「はっやっっ!!」
この世界に来て初めて本気で脚を回転させる、明らかに人間から出ては行けないスピードが出ている。
このままの勢いで進めば10分以内に余裕を持って着くことが出来る。
そう、その馬車には身なりの整った男と7・8歳程度の女の子そして護衛が乗っていた・・・
俗に言う貴族である。
そしてその馬車を盗賊が襲っていた。馬車の大きさや装飾から狙われたのだろう。盗賊の数は6人、護衛の数は3人多勢に無勢とはいえ研鑽を積んだ護衛、ただの盗賊如きに負けない程の圧倒的な差がある。
だが盗賊6人の内の1人が・・・・その差を最も容易く覆す。
「ソフィア様、ガルダ様、決してこの馬車から出ないでください。私たちが必ずお守りいたします!」
「頼むぞ!」
(ああは言ったが状況は劣勢、盗賊の5人に問題はない、問題なのはあいつだ)
盗賊の内ただ1人、赤色のマフラーを被った男・・・その男が護衛と盗賊の状況を逆転させている。
その男は決して魔法や能力を使っているわけではない、赤マフラーの剣の腕がとてつもないというただの一点のみである。だがこれは魔法や能力を使われるよりも絶望が深い。
研鑽を積んでいる優秀な護衛だからこそ解る・・・・可視化された圧倒的な力量差
盗賊の1人が護衛たちに笑いながら声をかける。
「今その家族を置いて逃げるなら殺さないでやる」
「そうかよ・・だからはいそうですかって逃げる訳にはいかねぇんだよ!・・・・ったく、明日給料日だってのに」
「自分だって明日デートだったんすよ!!」
「いい加減キャバクラで貢ぐのはデートじゃないって言ってくださいよ隊長」
なんもない様に喋るがすでに戦闘を開始し5分、赤マフラーに付けられた傷により3人全員が満身創痍・・・
ここで勝負を決めなければ少ない勝ち目すらも潰えるのを護衛たちは理解する。
「覚悟決めろよお前ら!!」
「「はい!!」」
その台詞を火蓋に両陣営がぶつかると思われた次の瞬間・・・・・・・
白い稲妻を纏った短剣が両陣営の衝突を遮る。
その短剣は木に轟音を鳴てながら刺さり、投げられた方向に両陣営目を向けると、体からも白い稲妻の走ったフード姿の男が森の中から現れ、喋る。
「今のは稲光だ・・・言ってる意味わかるか?殺される前に立ち去れっていう警告だよ」
落ちる事が出来なかった雲内放電は・・・雷の落とし所を遂に見つける。




