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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第二十三章—再起動
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97 【システムメッセージ: フレンド まつみ ログアウト】

「仮想の恋は本物なのか?

それとも恋そのものが、ただの幻なのか?

愛した相手が存在しないなら、愛そのものは存在するのか?

もし互いに一度も会ったことがなくても、感情は生まれるのか?」


その問いが、テープの残響のようにまつみの頭の中で何度も繰り返された。


……


Kanatheonギルド最上階・議事ホール――


「昨夜はパシュスが失礼しちゃって、ごめんね」

まこは買ったばかりの黒と赤のミニスカ衣装で、苦笑した。


「大丈夫なの? 最後、まっすぐ歩くことすらできなかったよね」

ニフェトは口元を押さえてくすくす笑う。


「心配しなくていいよ。昨日は家の人が駅まで迎えに来たし。男の子って無理するんだよね。しょうたも来てたら絶対笑い転げてたよ、ははは……あ、そうだ! ニフェトって思ったよりずっと綺麗だね。目は私より大きいし、髪も私よりさらさら。まこ、悔しいなぁ。私も短くしようかな」

まこは頬をふくらませ、負けず嫌いに言った。


「そ……そう? パシュス、何か言ってた?」

ニフェトは頬を赤らめ、細い指で髪を耳にかける。


「ううん~。乗った瞬間からずっと吐いてたよ……はは」


ニフェトは一瞬固まり、がっくりとうつむいた。


【システムメッセージ: フレンド むぐち やよい ログイン】


「よっ」

むぐち やよいが軽く手を上げて合図した。


「おはよう、むぐちお姉ちゃん~」

まこは弾むように手を振る。


「うわ! 一日でハググの居住プレイヤー102人増えてる。街の面積も11%増だって!」

むぐちはインターフェースを開き、ハググの経済指標が大きく伸びているのを見て目を輝かせた。


「そんなに?」

ニフェトも待ちきれない様子でインターフェースを開いて確認する。


どん、と地面が一度だけ揺れた。


「ニフェト領主。港に来客です。名は――アンドリア、と名乗っています」

NPCの獣人が扉を開けて告げた。


三人は顔を見合わせ、湖畔へ向かう。そこには石竜にまたがったアンドリアがいた。


灰青の鎧に着替えていて、いつもの銀鎧に赤マントの凛々しさはない。


むぐち やよいが手を振り、渡ってくるよう合図する。アンドリアはうなずき、振り返ってひとりを抱え上げて渡ってきた――まつみだ。


まつみは気絶していない。だが目は死んだ魚みたいに空っぽで、ひと言も発しない。


「まつみ?」

まこが体を揺すっても、反応はなかった。人形みたいに、ぼんやり前だけを見つめている。


「二時間ずっと話しかけたけど……返事がない……」

アンドリアは悲しげで、いつもの傲慢さが消えていた。


「どうしたの?」

ニフェトが眉をひそめる。


アンドリアは深くため息をつき、無力そうに首を振った。


……


Kanatheonギルドホール――


「AI?!」

皆が一斉に息をのむ。


アンドリアは無表情に肩をすくめ、角でうずくまって落ち込むまつみを、申し訳なさそうにちらりと見た。


「そんなはずないよ。かみこって、冷静すぎる以外は人間そのものだったじゃん!」

まこが青ざめて言う。


まつみがはっと顔を上げた――「かみこ」という名が聞こえたからだ。


「しっ……」

ニフェトがすぐに合図し、まこに声を落とすよう促す。


まこははっとして、自分の口を手で押さえた。


「だから鏡の盾をあんなに神業みたいに扱えたのか。あれ、超精密なコンピューターそのものだ」

むぐちは震えた声で気づきを口にした。


「まつみは一晩中寝てない。きっと限界よ。もっと気にかけてあげて……だって……あのAIへの気持ちは、本気だったんだろうし。傷ついたのだって、本物なんだと思う」

アンドリアはしみじみ言った。


「そもそも仮想なんだし、作り話だと思えばいいんじゃない?」

むぐちは眉を寄せて言う。


「人が、心から湧いた感情を無視できるなら……心の病なんて生まれない。たぶん、そういうのも人間の一部なんでしょうね」

アンドリアは顔を背け、まつみをこれ以上見られなかった。


応接間は一瞬で静まり返り、ブチャの羽ばたきだけが風を鳴らした。


「プラムスの状況、そんなに悪いの?」

ニフェトが空気を変えようと話題を振る。


「はぁ……」

アンドリアは長いため息をついた。その声は枯れ葉さえも萎れるほど、沈み切った声だった。

「建物の八割以上が焼失。上級プレイヤーの四分の一が離脱。さらに味方の戦死者は四十人超。戦力は大打撃よ。次の城戦までに立て直せるかも怪しい」


むぐち やよいは内心ほくそ笑んだ。ハググの人口が一夜で増えた理由は、プラムスの難民だったのだ。

「木材四万、獣人の技師二百人を送るよ。復興を手伝わせて。一週間もあれば、元の姿に戻せる」


アンドリアの目が一瞬だけ輝き、すぐにうつむいて木の机に爪で傷を刻んだ。

「四万の木材と二百人の技師……対価を払える自信がない」


「ふふ、贈り物だよ~。貸しはいつか返してもらうけどね」

むぐち やよいはいたずらっぽく笑う。


「経済は時間が解決する。でも一番厄介なのは、プレイヤーが銀龍の刻印への信頼を失ったこと。関係を立て直すのに時間がかかる。次の城戦で援軍に回れる保証はないわ」

アンドリアは迷いながら言った。


「大丈夫。あなたにはグズ湿台があるでしょ?」


「グズは滅びる覚悟で奪った土地よ! むぐち やよい、まさかそれを奪う気?!」

アンドリアは怒鳴る。


「違うよ~。手放さなくていい。むしろ、ちゃんと管理してほしい」


「………………え?」


「銀龍の刻印は痛手を受けた。でも主力は健在。戦死したのは三流の同盟や雇われプレイヤーが中心でしょ? 代わりはいくらでもいる。ハググは勢いがあるけど、Kanatheonはまだ銀龍の刻印ほどの名声はない。二つの王都を抱える力はないんだよ。だからグズはあなたたちが管理するのが最善。私たちが欲しいのは、グズの城主の金の鍵だけ。魔王城の門を開くためにね。防衛が必要なら人も出す。どう? 悪くない取引でしょ?」

むぐち やよいは自信満々に微笑んだ。


アンドリアはしばらく彼女を見つめ、それから苦笑する。

「副長で終わらせるには惜しいわね」


そのとき、隅から赤い光が弾けた。


【システムメッセージ: フレンド まつみ ログアウト】


三人は同時に振り向く。そこにいたはずのまつみは、もういなかった。


「赤い光……?」

ニフェトが眉を寄せる。プレイヤーがあの色に包まれるのは、オークション会場でGMが出現するときだけだった。

……


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