95 虹光の幻影
ゴゴゴ……かみこの背後の地面が隆起し、巨大な虹色の幻影の鏡が出現する。
荒道一狼は全身を金色の光に包み、十字架で家屋を叩き割りながら突進してくる。
「クソガキ、主役を奪う気か!」
「クソガキ、主役を奪う気か!」かみこはその口調をそのまま真似し、瞳を細めて荒道一狼の数値と出力を解析する。
「これは……まつみのため……まつみまつみ。うああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」かみこの身体から銀色の光柱が天へ突き抜け、半壊したプラムスを真昼のように照らす。
虹光の幻影の鏡の表面に波紋が走る。
荒道一狼は先手必勝とばかりに跳躍し、かみこの頭上へ十字架を振り下ろす。
ドォン!!!!!!!!荒道一狼の逆十字は空中で木片に弾かれ、手が痺れる。
次の瞬間——
そこに立っていたのは、二人の荒道一狼だった。
一人は金色の光をまとい、もう一人は虹光をまとっている。
「鏡……分身だと?!」荒道一狼は目を見開き、言葉を失う。
「うあああああああああああああ!!!!!!!!」かみこは命令も出さず、ただ金色の光の荒道一狼を指差して叫ぶ。
虹光の荒道一狼が即座に十字架を回転させ、本体へ叩き込む。
ドンッ——
二人の荒道一狼が巨大な十字架を振り回し、激しく打ち合う。本体は自分の鏡像を見つめ、突然涙を溢れさせた。
「俺様……こんなにも完璧だったのか! ははははははは!!!」
鏡像の表情は無機質で、本体の狂気とは対照的だ。
ガン! ガン! ガン! 本体の出力が明らかに上回る。
甲高い破砕音が響き、鏡像の武器が砕け散り、銀の粒となって地面に零れる。
荒道一狼は下から振り上げ、鏡像の顎を打ち抜いて地面に叩き伏せた。
「位相シフト!」かみこが光盾を召喚し、荒道一狼の前に展開する。
だが荒道一狼は読んでいた。空中で右手を伸ばす。
「火霊の触手!」
巨大な炎の爪が光盾を鷲掴みにする。
眩い閃光と蒸気が噴き上がり、金属の焦げた臭いが漂う。表面に亀裂が走る。
パキン——光盾は粉砕された。
荒道一狼はそのまま降下し、拳で鏡像の胸を貫く。鏡像は砕け散り、無数の鏡片となって地に散った。
「いやぁ……実に爽快だ。」荒道一狼はかみこを見つめ、ふと哀れむような目を向ける。
「魔導士にしては、ずいぶん長い過負荷だな。相当溜め込んでたんだろう?」
かみこは細身の銀杖を握り、まつみの前に立ちはだかる。頭の中ではなお必死に、まつみを逃がせる可能性を計算し続けていた。
プラムスはいつの間にか静まり返り、城内の血戦は止み、燃え盛っていた炎も消え、空は再び濃い藍色へと戻っている。
そのとき、前方の闇に沈んだ通りに点々と赤い光が灯った。十数本の逆十字が四方からゆっくりと高塔へ近づいてくる――H十字軍はすでにプラムスを粛清し、城内で降伏しなかったプレイヤーとNPCを皆殺しにしていた。
「そろそろ幕引きだ。」
荒道一狼が悪魔のように二人へ迫る。
背後の巨大な黒影が、かみこへ炎の腕を伸ばした。
かみこは思考を止める。勝算はゼロだと理解している。振り返り、まつみを見る。
言葉は交わさない。だが、まつみは満ち足りた、勝者のような笑みを浮かべていた。
かみこはその場で固まる――自分が、笑っている。
「これが……楽しむということ」
頬がくすぐったくなり、淡い黄色の瞳から銀色の涙がこぼれ落ちた。
かみこは振り向き、H十字軍へ微笑みかける。構えを取り、残った鏡の盾が軽快に彼女の周囲を舞い、凛とした姿を描いた。
「今夜は俺様にとって、このゲームで一番尽くせた夜だ。感謝する。」
荒道一狼が真顔でうなずく。
「ふん。忘れないで。あたしが直々に殺すから。」まつみが笑って言う。
「うん。ああ、約束だ」荒道一狼も笑った。
荒道一狼が三人を指差すと、周囲のH十字軍が一斉に押し寄せる。
カン――。
アンドリアに金色の光柱が降り注ぎ、足元に魔法陣が浮かび上がった。
「まさか?!」周囲がざわめく。
ドンッ!!!!
強烈な銀光が炸裂し、H十字軍は思わず足を止めて光を遮った。
光が退くと、アンドリアの傍らに銀色の大旗がはためいている――銀龍の刻印の部隊がついに転送されてきたのだ。
救援はわずか十人。それでもH十字軍には及ばない。だが、その瞳は血走り、怒りに充ちていた。
彼らの家、プラムスは一夜でH十字軍に焼かれ、瓦礫と化したのだから。
銀龍の刻印は武器を掲げて咆哮し、雄叫びとともに突撃する。凄まじい気迫が場を震わせた。
「慈悲の涙」
「浄化の光」
「憐憫」
二人の主教が即座にアンドリアとまつみを治療し、まつみの失われた腕は再生した。
アンドリアは過負荷による昏睡から目を覚ます。
「……う」
即座に戦況を把握する。味方は依然として必敗の劣勢。さらに正面に立つ荒道一狼の存在が背筋を冷やした。
「アンドリア様、ノクスから預かりました。」
主教が慌ててバックパックから橙色に光るカードを取り出す。
「これは!!!!!!」
アンドリアは目を見開き、喜色を浮かべてカードを受け取る。激痛に耐えながらプラムスの高塔へ駆け込んだ。
塔の窓や破壊された箇所から、柔らかな緑光が溢れ出す。
ふう……ふう……ふう……。
塔の内部から吹き出した風が、皆の頬を撫でた。
壁面に純白の魔法陣が浮かび、次の瞬間――ドンッと爆ぜる。
アンドリアがゆっくりと姿を現す。その背後に、二枚翼を持つ巨大なハイエルフが従っていた。
銀の長髪、雪のように白い肌、胸元の開いた深緑の長衣、翼の魔杖を携えた――ライヤ大天使長。
「今夜は本当に興奮する。ムー大陸は最高に刺激的だ!」
荒道一狼が感嘆の声を上げる。
「殲滅モード―ON」
アンドリアは無言のまま、インターフェースを操作する。
「奧義‧七炫の図」




