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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第二十一章―南方の角笛
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88 「…………聖都を洗い清めに来たと~」

ハググ城壁――


「ふぅ~……疲れたぁ」ニフェトが大きく伸びをする。


怒涛の発展から五日。街はようやく落ち着きを取り戻した。


「ブチャも有名になったわね。見物目当てのプレイヤーが増えてる」むぐち やよいは城壁の銃眼に手を置き、湖外のオアシスを眺める。


「達成感あるね」ニフェトは微笑み、並んで景色を見渡した。


かつて闇に沈んでいたハググ砂漠の半分は、いまや人口密集の城町へと変貌している。その傍らには銀柏樹の森。


NPC魔物が定住してから森は自律的に拡大を始め、未緑化地帯へと広がっていく。その成長速度は、かずきの植樹すら追い越す勢いだ。


雲ひとつない深い群青の夜空。砂漠は神秘的なミッドナイトブルーに染まり、街の灯りの温かな金色と鮮やかな対比をなす。


通りや家々の窓から柔らかな光が漏れ、笑い声が絶えない。


砂漠の外は静寂。だが夜空の下、二つの商隊が松明を掲げて進む。


まるでムー大陸の生命力すべてが、ハググへ集っているかのようだった。


「よし~今日は秋祭りだ。俺はログアウトして準備するね」むぐち やよいは微笑んで手を振った。


「俺としょうたとまこは今夜出かけるぞ。むぐちとニフェトも来ないか?そろそろオフ会だろ!」パシュスが興奮気味に提案する。


「行きたい!むぐちお姉ちゃんとニフェトが現実でどんな感じか知りたい~!」まこが即座に手を挙げた。


「かみこも一緒に来る?」まつみがかみこの手を引いて身を乗り出す。


「断る」かみこは即答した。冷静で、残酷なほどきっぱりと。


「距離がちょっと遠いの。今回はやめておくわ。休みを楽しんで、明日は早めにログインする」むぐちはやんわり断る。


「ニフェトは?」パシュスが尋ねる。


「わ、私は……今夜……」ニフェトは頬を染め、言いよどむ。


「夕飯も済んでるし、住んでる場所も俺たち三人と近いだろ?今回は言い訳なしだぞ」パシュスが畳みかけた。


ニフェトは小さくうなずいた。


「じゃあ決まり!夜八時に雨町駅集合ね!」まこが跳ねるように叫ぶ。


「ゴホン」アンドリューが横でわざとらしく咳払いする。


まこが口を開きかけた瞬間、パシュスが素早くその口を塞いだ。


「君たち、雨町なのか?俺も近いぞ」


アンドリューはかみこのように単純明快ではない。どこか距離を取りながら、妙にまこへ近づこうとする雰囲気があり、鼻につく。


「ごめんね~今回はむぐちとかみこがいないから、オフ会じゃなくてただのプライベート集まりなんだ。部・外・者・はお断り~」パシュスはわざと区切って強調する。


「人数は少ないほうがいいの。ネットの友達と初めて会うんだし……」ニフェトは銀の法衣をぎゅっと握った。


「聞いたか~部・外・者・の・席・は・な・い・ぞ~」パシュスはさらに挑発的な口調で畳みかける。


「思い出した。今夜は用事があった。残念だな」アンドリューは笑って受け流す。


「へぇ~ご自由に~」パシュスは大げさな仕草で口元を押さえ、嘲る。


アンドリューは拳を握り締め、金属が軋む音を立てながら、胸の奥から湧き上がる怒りを押し殺した。


「おやすみ、まつみ」かみこが何事もないように言う。


まつみは一瞬、かみこの表情の奥にかすかな寂しさを見た気がして、自分の感情を投影しているのではないかと戸惑った。


……


グズの城入口――


「位相シフト!」銀龍の刻印の鏡像師が叫び、高精霊の幻光魔法を反射させる。だが、前線の味方に誤爆した。


グズ湿台の狭い入口には、ハイエルフの銀槍兵が厚い隊列を敷き、その後方に多数の弓兵。周囲の屋根にはエルフの魔導士が潜む。


銀龍の刻印の大軍が雄叫びとともに突撃し、整然と槍陣へ迫る。


「▒▓ 縺薙」ハイエルフが叫ぶと、兵列が一斉に銀槍を投擲し、後方から無数の白銀の矢が放たれた。


密集した矢の雨が悪魔の雨のように降り注ぎ、銀龍の刻印の先鋒が次々と倒れる。頭を射抜かれ、脚を貫かれ、全身傷だらけで攻勢は鈍る。


「食い止めろ!アンドリア様の時間を稼げ!」ノクスが怒号を飛ばし、幽霊を操って銀白の防衛線へ突撃させた。


ハイエルフの槍兵は幽霊の大鎌を防ぎきれず、次々とその場で斬り伏せられる。雪のように白い死体がゆっくりと積み重なっていった。


銀龍の刻印の部隊はその隙を逃さず突撃する。重装隊が密集陣形を組み、人間の破城槌のように再びハイエルフの防衛線へ体当たりした。


ドンッ!


全身の筋肉を震わせ、力の限り押し込む。女エルフの槍列が崩れかけたその瞬間、周囲に潜んでいたエルフの魔導士が友軍へ祝福をかけ始めた。


エルフの弓兵が豪雨のようなのような密度で魔法の矢を放つ。天を覆う緑光の雨が銀龍の刻印の重装隊へ降り注ぎ、何人もが傷つき倒れた。


「どけぇッ!!!」アンドリアがついに五騎の狐騎兵を集結させ、狭い街路で防衛線へ全力突撃する。


ドォンッ!


ハイエルフの隊列から悲鳴が上がり、死体が地に散る。


騎兵団はブルドーザーのように防衛線を押し潰し、守りを失った遠距離部隊はプレイヤーに蹂躙された。


ハイエルフは総崩れとなり、銀龍の刻印は一気に制圧する。生き残ったエルフたちは中央の内側のピラミッドへ退却した。


「皆殺しだ!」アンドリアが怒号を放つ。紅晶の騎槍が白くしなやかな胴を次々と貫き、エルフの鎧は紙のように裂けた。


プレイヤーたちは勢いに乗って、東門からなだれ込み、街路を掃討していく。


城内に悲鳴が響き渡り、混乱が広がる。黒いエルフの血が石畳の窪みに溜まっていった。


「気をつけろ!!!」先行した部隊が背後へ叫ぶ。


緑の閃光が炸裂し、全員の視界を数秒奪った。


ゴゴォォン……グズの城全体が激しく揺れる。


【システムメッセージ: ギルドメンバー … HP残り20%】

【システムメッセージ: ギルドメンバー … HP残り20%】

【システムメッセージ: ギルドメンバー … HP残り20%】

【システムメッセージ: ギルドメンバー … HP残り20%】

【システムメッセージ: ギルドメンバー … HP残り20%】


内ピラミッドの頂に、深い深緑の胸元が深く開いたハイレグの長衣をまとい、長い脚をあらわにした巨大な天使が立っている。背には虹色に輝く翼。


その周囲を、銀白の甲冑スカートを着た三十体の高天使守衛が取り囲み、空を舞う。


「こいつが大天使長か……望むところだ!」アンドリアは唇を舐めて笑った。


その肩に小さな白い鳥が止まる。


【密信 シモン:プラムス南門が突破されました。敵軍の人数不明。他ギルドの守備隊は市内で奮戦するもほぼ壊滅。至急、帰還を。──五分前】


「南門が突破されたって!?」


「どうしました?」ノクスは、アンドリアがここまで動揺する姿を見たことがなかった。


「王都が襲撃された! 攻城戦直後に仕掛けるなんて、どこの馬鹿よ!? みんな消耗しきってるのに!!!」アンドリアは頭を抱え、爪を噛み続ける。


「落ち着いてください。決断を!」ノクスが強く呼びかけ、混乱から引き戻す。


アンドリアは内ピラミッドの頂に立つ大天使長を睨み、悔しさを飲み込んだ。

「騎兵は私と来なさい! 他はノクスに従って攻撃継続!」


石龍を呼び出し、騎兵団を乗せてプラムスへ帰還する。


「大天使長は?」ノクスが骸骨杖を握り直す。


「倒さなくていい……足止めしなさい。」アンドリアは不敵に笑い、城外で飛翔した。

……


石龍が全速で夜空を裂く。冷たい風が頬を切り裂くが、胸の内は燃え上がるほど熱い。


「どういうこと……」


アンドリアは口元を押さえ、震える手で眼下を見下ろす。


プラムス南側と東側は炎に包まれ、街のあちこちで戦火が瞬いている。


シモンが信号矢を放ち、アンドリアはその近くへ急降下した。


「状況は!?」石龍から飛び降り、シモンに詰め寄る。


「不明です。敵は南門から侵入、門を容易く撃ち抜きました。」


「撃ち抜いた!? あれは三万五千竜貨かけて精錬された銅で作らせた門よ!?」


「申し訳ありません。弁償はできませんが……命で払えと?」


その声の主が、通りの奥に立っていた。


背後には処刑人しょけいにんが二人、そして屈強な修羅アシュラが二人。


「あなた誰!? 正気!? 攻城戦は終わってる! 今の戦闘に意味なんてないわ!」アンドリアが怒鳴る。


「小生、荒道一狼と申します。拙者の目には……攻城戦より被害が甚大に見えますが?」荒道一狼は唇を尖らせ、甘ったるい声で言う。


「ただ壊したいだけ……? いいわ、相手になってあげる……」


ポンッ、と白煙。


深淵龍を召喚し、上空からボロボロの法衣を纏ったH十字軍を見下ろす。


「おお~すごいですねぇ。」荒道一狼は拍手し、まったく怯えない。


「狂ってる……」アンドリアは嫌悪を隠さず、今すぐ消し飛ばしたくなる。


「アンドリア……良き名だ。だが調教するなら“ドド”の方が呼びやすい。」荒道一狼は顎に手を当て、真剣に考え込む。


「天虹衝撃!!!」


荒道一狼はにやりと笑い、鬼面を持ち上げた。


現れたのは、やつれた蒼白の中年男の顔。濁った黒髪が舞い上がり、瞳は黄金に輝く。全身を黒紅の幽光が絡みつく――過負荷状態へ突入。


アンドリアは息を呑む。しかし勢いが強すぎて止まれない。


荒道一狼は巨大な逆十字を担ぎ、狂気じみた笑い声を上げた。

「ははははは! 失望させるなよ……ドド!!!」



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