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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第二十一章―南方の角笛
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87 南方の角笛


グズの城外縁、黒き森――


「うおおおお!」銀龍の刻印のメンバーがハイエルフの銀槍兵方陣へ突撃する。


激しい押し合い。均衡は崩れない。


アンドリアは空中で天使守衛と斬り結んでいた。刃が閃く。


こちらの火力は上回っているが、グリフォンでは大天使守衛の機動力に及ばない。追撃に手間取っている間に、時間を削られていく


「縺薙l繧偵・∬・縺・・―― 縲後€・」天使守衛が再び不可解な精霊語を放つ。


意図的にアンドリアを足止めし、地上部隊が敗走を確認すると即座に撤退。


「逃がすか!!!」アンドリアは叫び、グリフォンを駆って残兵を追う。


銀龍の刻印はついにグズ湿台への突破口を開いた。


「行動パターンは予想以上に厄介です。Kanatheonを待ってから総攻撃を」ノクスが進言する。


「不要だ。想定より弱い。プラムスの常備軍を呼べ。私一人でグズを落とす」アンドリアは自信満々に笑う。


「アンドリア様……深追いは危険かと」


「私を信用していないのか、ノクス?守備隊三十名で十分時間は稼げる。常備軍七十名を投入すれば三日でグズを血で染められる。その時はKanatheonと戦果を分ける必要もない」


「承知しました、アンドリア様」


「グズとプラムスを手に入れれば、最後はKanatheonも私の傘下に入るしかない。そのまま魔王城へ総攻撃。完璧なエンディングだ」アンドリアは満足げに頷いた。


ハググの砂漠は次第に緑に覆われていった。森が増えたことで群れを成す銀髭猿や肉食性の電網蜘蛛、さらには大量の食用家畜まで定住し始める。


魔物が棲みついた森はプレイヤーの狩場となり、人の流れが生まれ、周辺の村は一日三十軒の建物が建つ勢いで発展していった。監視塔を建設し、周辺の非協力ギルドを掃討したことで交易も安定。商隊は五頭のヤクから二十頭へと増え、往復の頻度も上がる。


「わぁ~~!!!」ニフェトは目を見開き、領主操作パネルで本日の収支レポートを確認する。


「どう?」むぐち やよいも身を乗り出す。


【ハググ交易記録:プラムス商隊到着。利益1500竜貨。——3時間前】

【ハググ交易記録:プラムス商隊到着。利益511竜貨31羊貨。——3時間前】

【ハググ交易記録:プラムス商隊到着。利益2700竜貨89狼貨。——1時間前】

【ハググ交易記録:プラムス商隊到着。利益-13狼貨87羊貨。——1時間前】

【ハググ交易記録:木材57872本取引。利益3553竜貨】


「木材だけで三千五百竜貨……私たち、金鉱を見つけたわ!」ニフェトは興奮に頬を染める。


「ギルドも数日で五十人まで増えた」むぐち やよいはギルド画面を見て満足げに頷く。


「このまま精霊の城を落として、魔王を討伐よ」


「順調すぎて怖いくらいね。一緒に頑張りましょう」むぐち やよいは肩に手を置いた。


……


プラムス南門――


「アンドリア様、もう数日帰還していません」南城壁の盾兵が呟く。


「ハイエルフが魔王陣営に入ってグズの城を落としたらしい。メインシナリオかな」槍兵が応じる。


「どうせ俺たち末端には関係ない。あと一週間働いて給金をもらったらハググに行こう。あっちはレベル上げが楽らしい。銀龍の刻印は給料が安い」盾兵はため息をつく。


「違う!!!お前たちこそ物語の中心だ!!!」城壁下から怒号が飛ぶ。


二人は驚き、周囲の兵も集まる。


「何者だ?!プラムスは封鎖中だ。商隊以外は出入り禁止だ!」兵が叫ぶ。


「聞こえたぞ。城主が不在なんだな?」城壁下の男が言う。


「関係ない。去れ。さもなくば射る!」弓兵が足元へ矢を放つ。


「うわっ、痛っ!」なぜか矢は男の足の甲に突き刺さった。男は片足で跳ねながら大声で騒ぐ。


「早く行け!次は頭だ!」弓兵は困惑していた。本来なら当たらないはずだ。


「返そうか?」男は足から矢を抜き、血を一筋垂らしながら平然と問う。


「黙れ!」弓兵は顔面を狙って放つ。


パキン!


男は抜いた矢を城壁へ投げつけ、空中で弓兵の矢を叩き落とした。


ドシュッ――血飛沫が弾けた!


放たれた矢は勢いを失わず、そのまま弓兵の身体を真っ直ぐ貫く。相手は一瞬で崩れ落ち、光塵となって消えた。


「は、早く門を封鎖しろ!敵襲だ!一人だ!」城壁上は一気に混乱に包まれ、十数名が慌てて太い丸太で門を固める。


重厚な青銅の大門は幾重にも補強され、攻城槌でも十数分はかかる堅牢さだ。


「敵だ~~」男が突然、朗々と叫ぶ。


守備兵たちは城壁の狭間に身を縮め、恐る恐る様子を窺う。


「敵だぁぁぁぁぁッ!」男は慟哭のような叫びを上げ、背から巨大な逆十字を引き抜いた。右腕が眩い金光を放つ。


脂ぎった黒髪がゆらりと浮き上がり、全身を血のような赤い瘴気が包む。両目は金色に染まり、黒い法衣が風に乱れ舞った。


「来たぞぉ!はははははははははははははははははは!」男は狂気じみた笑い声を上げ、青銅門へと突進する。


「止めろ!」哨兵が叫び、城壁から十を超える魔法が放たれる。


だが男の速度は土煙が落ちきる前に門前へ到達するほどだった。巻き起こした風壁が矢を逸らす。


「来たぁぁぁぁぁぁぁぁッ!わははははは!」


逆十字が振り下ろされる――――


ドォォォォォォン!!!!!!!!!


鼓膜を裂く金属爆裂音。城壁の兵は耳から血を流す。


分厚い青銅門に亀裂が走る。男はさらに力を溜め、裂け目へ叩き込む――――バァン!!! ついに門に穴が穿たれた。


「は、早く……アンドリア様に報告しろ!敵は一人だ!」門脇の隊長が叫ぶ。


ドンッ!! 隣にいた部下の身体が突如消え、地面には大量の血だけが残った。


「訂正だ。一人じゃないぞ――ほら」


男は血塗れの十字架をゆっくりと持ち上げ、腰の抜けた隊長を礼儀正しく支えながら、門の穴の向こうを指す。


――南方から、低く重い角笛が鳴り響いた。


五十を超える巨大な逆十字と、無数の松明がゆっくりとプラムス南門へ進軍してくる。


「会長に伝えておけ。手間をかける。H十字軍が聖都を洗い清めに来たと」荒道一狼は丁寧に一礼する。悪鬼の仮面の下から、不気味な笑みが漏れた。

……



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