7 翠の血
*R18*に関わる内容は、別の場所で公開します。
三人はまるで王者のように胸を張り、すでに制圧した妖魔の森を抜けて、河霊の流域へと足を踏み入れた。
周囲には一面の緑が広がり、川に沿って、空中には人型をした水の泡がいくつも漂っている。
水精霊たちは彼らの姿を見ても攻撃する様子はなく、相変わらず悠然と浮遊し続けていた。
三人は上機嫌で大地を探索していたが、やがて遠方に、雲を突き刺すようにそびえ立つ尖塔を見つける。――プラムス領主塔だ。
「プラムス中央要塞! 俺様、参上!」
まつみは手綱を放たれた暴れ馬のように、塔へ向かって駆け出した。
ボウッ――!
次の瞬間、まつみの目前に炎の壁が突如として燃え上がる。
止まりきれず、そのまま火の中へ突っ込んだ。
「うわっ……あれ?! 痛くない?」
まつみは炎の壁の中で、呆然と立ち尽くす。
燃え盛る炎の中へ手を伸ばしてみても、何の感覚もなかった。
「何者だ。」
赤髪の男が、冷え切った声で問いかける。
「まつみ!」
パシュスが即座にまつみを引きずり出し、まこも駆け寄ってきた。
「パシュス……」
炎の壁をじっと見つめていたまつみは、突然ぴょんぴょん跳ね回り、興奮した声を上げる。
「超スリル満点! ぜんぜん痛くねぇ!」
「ダメージがないのは、俺が殺戮状態を解除しているからだ。」
赤髪の男は、青い宝石をはめ込んだ象牙の魔杖を取り出し、黒衣を翻して戦闘態勢に入る。
「最後の警告だ。名を名乗れ。さもなくば、相応の覚悟をしてもらう。」
「待ってくれ!」
パシュスが叫ぶ。
「装備を見ろ。金の紋様入りの黒いローブに長杖……二次転職の職業だ!」
「まこ、怖いよ……」
まこは魔杖を握りしめ、震え声でつぶやいた。
「なぜプラムスに来た?」
赤髪の男が追及する。
「俺たちは初心者の村を出たばかりで、中央要塞の任務を受けに来ただけだ。」
パシュスが答える。
「背負っている荷を開け。検査する。」
赤髪の男が言い放つ。
「はぁ?! なんでお前の命令なんだよ!」
まつみが一歩踏み出し、睨みつける。
「理由を聞かせてもらえないか。」
パシュスが食い下がった。
赤髪の男は、まこが怯えて言葉を失っているのに気づき、小さく息をついた。
「これが俺のギルドの徽章だ。」
男は襟元を開き、龍紋の紋章を見せる。
「城門に掲げられている旗と同じだ。攻城戦は五日後に始まる。城主の命で、入城者の所持品を検査している。爆薬や集団転移用の道具がないかをな。条件を満たせば、通行を許可する。」
「ああ、もうすぐ城戦が始まるのか。」
パシュスが納得したように言う。
「すごく厳しいね……」
まこはおそるおそる、背負っていた荷を下ろした。
「チッ、面倒くせぇな!」
まつみは不満げに舌打ちする。
三人は観念し、それぞれ背負い袋を差し出した。
「……問題ない。全員初心者のようだな。手間を取らせた。」
赤髪の男は頷き、続ける。
「中央要塞へようこそ。これは城主からの、ささやかな補償だ。」
そう言って、狼貨を三枚差し出した。
「じゃあ装備も脱いで、続けてチェックする?」
まつみは急に猫なで声になって言う。
「警備は念入りな方がいいですからね。」
パシュスも真顔で同調した。
「え、わたしも脱ぐの?」
まこは首をかしげ、純粋に問い返す。
「……お前たちのパーティー、まともなやつが一人もいないのか……」
...
門をくぐった瞬間、繁華な街並みが視界いっぱいに広がった。
通りは人で溢れ、行き交うプレイヤーでごった返している。
道の両脇には店がずらりと並び、飲食店、装備屋、アイテムショップ、マウント、衣装……ないものはない。
主城の城壁は正方形を成し、その中央には小高い丘があり、尖塔と壮麗な宮殿がそびえ立っていた。
「城主って、ずっと宮殿に引きこもってるんだろうな」
まつみは丘の方を指さして言った。
「月に十五パーセントの税収って……いったいいくらになるんだ?」
パシュスは賑わう商業区を眺めながら考え込む。
通りには殺気をまとい、全身を重装甲で固め、発光する武器を携えたプレイヤーたちが目立つ。
「初心者の村とは空気がまるで違うな。もう攻城戦の圧を感じるぜ」
まつみは周囲を見回し、楽しそうに言った。
「そういえば、まこは?」
パシュスが周囲を見渡す。
「よっ」
まこが手を振った。黒と白を基調にしたゴシック調のワンピースに、黒いタイツ姿だ。
「絶!対!領!域!最!高!」
パシュスは鼻血を噴きそうになりながら叫ぶ。
「もう……。いくらだ?」
まつみは半ば諦めた声で聞いた。
「狼貨三枚だよ」
まこは舌をちょこんと出して言う。
まつみは全身から血を搾り取られた気分になった。
「まさか……城主からもらった金じゃないだろうな?」
「うん」
まこはにっこりとうなずく。
「うわぁぁ……俺様のブドウ味スライムがぁ……!」
「いいじゃないか。まこ、すごく似合ってるぞ」
パシュスがフォローする。
「金返せぇぇ!」
まつみは腐った瘴気でも纏ったかのような雰囲気で、手を突き出した。
「それより、早く雑貨商人を探そう」
パシュスは慌てて話題を変えた。
……
「えっと~、雑貨商人のライドさんって、どこにいますか?」
まこは可愛らしい声で、巡回中の重装衛兵二人に声をかけた。
「うーん、俺も詳しくは……。よかったら一緒に探そうか」
一人目の衛兵が言う。
「え? NPCって自由に動くの?」
「まこ! この人たちプレイヤーだよ!」
パシュスは慌てて取り繕うように笑った。
「大丈夫だよ。装備にギルドの紋章が刻まれてるから。商人の場所を聞くなら、城門のNPC兵士に聞くといい。あっちは簡素な装備で、ギルド紋章もないからね」
衛兵はそう説明しつつ、内心でと思っていた。
「この子、可愛すぎだろ……」
……
「勇者様! ついに―――」
雑貨商人ライドが興奮気味に話し出す。
「そうそう! 最近―――」
「うん、だから注意が―――」
「噂では―――」
「くそったれ! 誰がそんな話聞くか! さっさとクエスト出せ! 俺様、金がねえんだよ!!!」
まつみはNPCの襟首を掴み、鼻息荒く怒鳴りつけた。
……
「ちっ、光芒草一株だと? 無駄に長い前置きしやがって!」
まつみは道端の小石を蹴り飛ばす。
三人は主城を後にし、東のマップ――緑歌丘陵へと向かった。
「まあ、ゲームには最低限のストーリーが必要だからな」
パシュスは苦笑する。
「まこは時間があれば、ちゃんと読むけどね」
まこは唇に指を当てて言った。
「お前が無駄遣いしなけりゃな……」
まつみの黒い瞳から、怨念のような光が放たれていた。
……
更新は基本【毎日1話】。
さらに、
ブックマーク10増加ごとに1話追加、
感想10件ごとに1話追加します。
書き溜めは十分あります。
一緒にテンポよく、魔王討伐まで突っ走りましょう :)




