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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第二十章―ハググ上陸戦
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76 砂嵐に潜む殺気

鉄壁の上に、びっしりと赤牙の旗――獣人の族長の戦章が掲げられた。


三つのギルドは一斉に息を呑み、互いを見やる。


まるで命を賭けたレースだ。最初に辿り着けば勝利だが、誰も地雷原に真っ先に踏み込む勇気はない。裂け目を前に、不安が胸を締めつける。


だが機会は、踏み出した者に微笑む――


「援護バフ!」

むぐち やよいが叫ぶ。


Kanatheonが光に包まれ、全員が一気に集中力を高めて武器を抜き、裂け目を睨む。


「やるか、やられるかよ」

ニフェトは神杖を握り、唾を飲み込む。大粒の汗が青い髪を濡らしていた。


「マントを脱げ。前進」

深呼吸のあと、Kanatheonは先陣を切って鉄壁の裂け目を抜け、ハググ領域へ踏み込んだ。


……


突如、激しい砂嵐が吹き荒れ、視界が遮られる。かろうじて大漠に立つ赤牙の大旗だけが見えた。


「聖域浄化!」

ニフェトが巨大な光のドームを展開し、砂嵐を外へ弾き返す。


「トリ、他のアサシンを率いて敵の動向を監視しろ。異変があれば即報告だ。まつみは前方索敵。十分ごとに報告」

むぐち やよいは即座に指示を飛ばす。


「了解!」


Kanatheonは砂嵐を押し分けて進む。外側にいた者は中心へ寄り、嵐の中から何かが飛び出すのを警戒した。


やがて黒い影が砂煙の中を横切り、全員が身構える。


「右――!」

まつみは全速力でドーム内へ駆け戻り、右手を指した。


「重装隊、右へ!」

パシュスが即座に命じ、騎士たちは右側に盾陣を組む。


モォォォ――


屈強な獣人たちが魔牛にまたがり、砂を蹴散らして突進してくる。手には巨大な鋼斧、牙をむき出しにして野太い咆哮を上げていた。


「不動の勢!」

重装隊の体が青く輝き、あらゆるノックバックを無効化する強化を発動する。


「踏ん張れ!!!」

パシュスが怒鳴り、他職は一斉に重装隊の背後へ退いた。


ドォォン!!!!!!!


Kanatheonの重装隊は砂牛騎兵を正面で受け止め、すぐさま激しい白兵戦が始まった。


混戦の中、数騎の砂牛騎兵が防線をすり抜け、補助職ばかりの中央へ突入する。


「こっちだ!!!」

突然目の前に振り下ろされた大斧に、悲鳴が上がる。だが近接職が即座に援護へ入り、ほどなく第一波は撃退された。


「隊形を立て直せ!」

パシュスの号令で、重装は再び前線へ戻る。


砂嵐はさらに強まり、足取りが重くなる。ニフェトは魔盾を断続的に解除し、魔力の消耗を抑え始めた。


「むぐち やよい、他の二ギルドも攻城戦エリアに入りました。風の旅人は砂嵐に流され、城へのルートから北へ逸れています!」

トリとアサシンたちが風をかき分け戻り、報告する。


「よく……聞け……!…………続けろ!」

風が唸りを上げる中、むぐち やよいは叫ばなければ命令も通らなかった。視界も方向感覚も、砂嵐に奪われていた。


「左……いや右……!」

まつみはまた全速力で駆け戻り、叫んだ。


「左か右か、どっちだ?!」

パシュスが怒鳴る。


「左と右だって!!!」


モォォ~~


左右から同時に砂牛騎兵が現れ、挟み撃ちの形でKanatheon両翼へ突撃してきた。


「重装隊、左右に分かれろ。回復班、構え!」

むぐち やよいが叫び、Kanatheonは足を止めて陣形を組み替える。


「ザコども、気を抜くな!」

かなは回復班の中央に立ち、全員が神経を研ぎ澄ませた。


「来るぞ!」

パシュスの警告と同時に、狂牛が目前へ突っ込んでくる。


ドンッ!!!!!


重装隊が左右に割れたことで戦線は薄まり、ついに砂牛騎兵に同時突破を許した。


陣形はまるでサンドイッチの具のように中央へ押し潰される。


獣人の大斧が肉挽き機のように振り回され、遠距離職は撃つ余裕もなく、杖で必死に応戦するしかない。


【システムメッセージ: ギルドメンバー 波多野 HPが20%になりました】

【システムメッセージ: ギルドメンバー …… HPが20%になりました】

【システムメッセージ: ギルドメンバー …… HPが20%になりました】

【システムメッセージ: ギルドメンバー …… HPが20%になりました】

【システムメッセージ: ギルドメンバー …… HPが20%になりました】


一斉にHPが激減する。


「連携回復!」

かなが即断する。


「天洪!」

「聖域浄化!」

「砕岩!」


回復連携が正確に発動し、緑の旋風が一気に広がる。陣内へ踏み込んだ砂牛騎兵を吹き飛ばした。


「火力、右だ!」

むぐち やよいが吠える。


ドォォォォォン!!!


火力班が全力を解放し、右翼の敵を一瞬で殲滅。そのまま左翼へ回り、第二波も押し返す。


……


Kanatheonは再び中央の湖へ向かって前進する。


しばらくまつみから報告がない。むぐち やよいは進路を誤ったのではないかと不安を覚え始めた。


モォォ~~


「何だ?!」

砂嵐の中から魔牛の咆哮が響き、むぐち やよいは息を呑む。


大量の砂牛騎兵が風を裂いて突進し、無防備だった右翼を横から強打した。


「うわっ!」

Kanatheonの右後方がガラスのように砕け、いくつもの小さな塊に分断される。


「右へ回せ! 隊形より生存優先だ!」

パシュスが即座に重装隊を動かす。


「危ない!」

蟹座が叫ぶ。


ドォン!!!!


山羊座が側面から突き飛ばされ、ニフェトの光盾の外へ弾き飛ばされる。砂嵐の中へ転がり落ちた。


「耐えて! 今行く!」

蟹座が駆け出そうとするのを、かなが腕を掴んで止める。


「行くな!この視界で飛び出すのは自殺行為だ!」


【システムメッセージ: ギルドメンバー 山羊座 HPが20%になりました】


砂嵐の中で黒い影が何度も体当たりし、山羊座の緑のHPバーがみるみる削れ、赤へ変わる。


「早く助けて!」

蟹座は必死に抗う。かなと他の者は騎兵を迎撃しながら、彼女を押さえ続けた。


【システムメッセージ: ギルドメンバー 山羊座 HPが0%になりました】


「そんな……」

蟹座は、砂嵐の中で消えていく仲間の姿を見つめる。


「落ち着け! 護心石を持ってるはずだ! 戻るなって伝えろ、ワスティン大聖堂で待機だ――」

かなが叫んだ瞬間、新たな表示が弾ける。


【システムメッセージ: ギルドメンバー まつみ HPが20%になりました】


「まつみ?!」

まこが悲鳴を上げる。


「バカ、見つかったのか?!」

パシュスが周囲を見回すが、その姿は見えない。


「前進だ」

むぐち やよいは唇を噛み、決断する。


「むぐち やよい! まつみがまだ外にいる!」


「俺たちも外だ。後ろの二十人も外だ。進め」

鋭い視線で言い切り、心を鬼にして前へ出る。


「でも……」

パシュスが食い下がろうとするが、ニフェトに腕を押さえられる。


ニフェトは辛そうに首を振り、隊列に従うよう無言で促した。


かみこの周囲を、幾重もの鏡の盾が高速で回転し、防護の縁を不規則に舞っている。

「まつみ……」

……



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