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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第十九章―黒騎士の逆襲
74/196

73 「……どこ?」


【 読み込み中、しばらくお待ちください———————】


全員がプラムスの庭園、黒龍像の下へと転送された。


「ゴホッ……ゴホゴホ!」

むぐち やよいは地面に伏して咳き込み、全身が袋叩きに遭ったかのような激痛に襲われていた。


「結局、負けか……」

かなは口を尖らせ、気力の抜けた声で呟く。


「この人、誰?!」

まつみがアンドリューを指さして驚いた。


彼はまこの背後に立っており、まこは恥ずかしそうに俯いたまま何も言わない。


「チッ……Kanatheon、運が良すぎるわね。そこの鏡像師の教育はちゃんとしとけ。次にチート野郎と遭遇したら、見つけ次第潰すから。団練はここまで、勉強になったわ〜」

アンドリアは見下した口調で言い放つ。


「外部ツールは使っていません。ご指導ありがとうございました。」

むぐち やよいはそう答え、アンドリアと握手して別れた。


「フン、行くわよ!」


「礼だ。」

ノクスの一声で、銀龍の刻印の全員がKanatheonに向かって一斉に一礼し、背を向けて去っていった。


「まこ! これって新しい召喚物?!」

まつみが興奮気味にアンドリューの装甲に触れる。


「この召喚物、めちゃくちゃ強そうだな!」

パシュスは武器と盾をじっと観察した。


二人が遠慮なくアンドリューの身体に触れるのを見て、まこは顔を引きつらせ、必死に首を横に振る。


「やあ〜、勇者様。」

アンドリューが突然、樵夫の姿に変わった。


「なに!?!?!?!?!?」


「説明が山ほど必要みたいだね。場所を変えよう。」

樵夫は苦笑した。

……


プラムス北側城壁の下、開けた空き地―――


Kanatheonの面々は肩を落とし、地面に適当に腰を下ろしていた。


「今日の自分たちの出来、満足してる? 3:1で負けだ。」

むぐち やよいが単刀直入に切り出す。


場は水を打ったように静まり返った。


「実は、相手の銀龍の刻印は平均レベルが君たちより10高い。今回はアンドリアと話をつけて、精鋭を全投入してもらった。だから3:1という結果は悪くないよ。しかも一試合は取り返した。みんな、普段以上の動きだった。」

ニフェトは笑顔でそう励ました。


「それに、アンドリアはうちのギルドの成長を気にかけている。GvG訓練を提案したとき、二線メンバーを出す案も出してくれたけど、私が断った。大規模戦の経験が必要だと思ったからね。かみこの件が誤解されなければ、逆転もあり得た。ははは。」

むぐち やよいは豪快に笑う。


虚ろだった視線に次第に光が戻り、空気が持ち直す。


「明後日は攻城戦だ。しっかり休めよ。次の三回はギルド訓練はなし。攻城当日の17時、ワスティン大聖堂の門前に集合。お疲れさま。」

ニフェトの解散宣言で、皆が手を振り、ログアウトしていった。

……


「さて、次はお前だ。」

パシュスは隣に座る樵夫を睨み、警戒を隠さない。


「老いぼれに、勇者様のお役に立てることでも?」

樵夫は腰を折り、苦しそうに言った。


「とぼけるな!」

まつみが怒鳴る。


アンドリューは元の姿に戻った。


「事情を説明しろ。」

パシュスは青筋を立て、目を細める。


「どの話かな?」


「地図はお前が作ったのか?」

むぐちが問う。


「そうだよ。自作だって最初から言ってた。自分には不要だったから君たちに渡しただけ。勝手にNPCだと思い込んでたのはそっちだ。」


「闇精霊の村について、どこまで知っている?」

むぐちは隠しクエストの件を追及する。


「神器を守っているらしい。村長の依頼はずっと手伝ってるけど、肝心の情報は一切くれない。」


「依頼内容は?」

ニフェトが重ねて聞く。


「林妖の掃討、墓地の弔鐘、精霊評議会へ向かう隊商の護衛……そんなところだ。どうしてそこまで気になる?」

アンドリューは不思議そうに首を傾げた。


彼らは顔を見合わせ、アンドリューと情報交換することにしたが、神殿のキーストーンについては依然として伏せたままだった。


「ふむ……実に興味深い。ハイエルフが闇精霊を裏切るとはね。」

アンドリューは思案する。

「知っている隠し拠点は、闇精霊の村、空羽谷、それから最北東の竜尾湾だけだ。他にも隠された場所があるらしいが、まだ見つけていない。」


「もういい、メインシナリオはいったん置いておこう。先に聞かせて。どうして、まこを選んだの?」

むぐちは話題を切り替え、冷ややかに問いかけた。


他の者たちも一歩近づき、アンドリューを睨む。


「理由? 好きだからだよ。」

アンドリューは肩の力を抜き、軽く笑って言った。


まこは頬を熱くし、むぐち やよいの背後に身を隠す。


「お前は赤の他人だろ。諦めろ!」

パシュスが感情を露わにして叫んだ。


「まこ様。あなたは、この人が好きですか?」

アンドリューは優しくまこを見つめ、問いかける。


「えっ?!」


「この野郎! 俺とまこを引き裂く気か?!」


「どうやら、まこはまだ答えを出していないようだね。なら、僕たちは競争相手になれる。」

アンドリューは立ち上がり、パシュスに微笑みかけた。

その笑みには、濃い敵意が滲んでいた。


「はぁ?! 競争相手? 俺とまことまつみは幼なじみだぞ。お前は何者だ!」


「黙りなさい! まこの気持ちを考えなさい!」

むぐちが二人を一喝した。


まこはすでに顔をむぐちの背中に埋め、誰とも目を合わせられずにいた。


「結局、あなたとまこの契約は何なの?」

ニフェトが話を元に戻して尋ねた。


「守魂衛の魂の契約は、契約者の代わりにダメージを受ける。

簡単に言えば、僕が死ぬまで、まこは生き続ける。」

アンドリューはまこに淡く微笑んだ。


「もう一度聞く。……なぜ、まこなの?」


「彼女が好きなんだ。ただそれだけさ。

ムー大陸のあちこちを旅して、数えきれないほどのプレイヤーに会ってきた。

でも、まこの素朴さだけが、どうしても僕の心を惹きつけて離さないんだ。」

アンドリューは自分の唇を指先でなぞり、不敵に微笑んだ。


「念のため聞くけど、前の契約者はいたの?」

むぐちが追及する。


アンドリューの笑みが消え、沈んだ表情になる。


「……亡くなった。」


「なぜ、あなただけ生きているの?」


「リリーが、ゲームオーバーになる直前に契約を解除してくれた。

振り返ったときには、彼女はもう翼竜に引き裂かれていた。」

アンドリューは小さくため息をついた。


誰も、それ以上は口を開けなかった。


「もう、ずいぶん前の話さ。気にしてない。」

アンドリューは無理に笑顔を作った。


「お前は、まこから何を得たいんだ?!」

パシュスはますますアンドリューを怪しんだ。


「幸福だよ。まこが自由に冒険している姿を見るのが、何より嬉しい。

僕がログインしている限り、彼女に危険はない。

思う存分、ムー大陸を探索できる。」

アンドリューは穏やかに言った。


「まこは、お前をNPCだと思って契約したんだぞ! 騙したじゃないか!」

パシュスはまことアンドリューの間に割って入り、怒鳴りつけた。


「何度も言うけど、誤解していたのは君たちだ。

それに、結果的にまこにとっても悪くないだろう?」

アンドリューは問い返す。


「そうだ! 私たちも四次職を果たした。アンドリアに匹敵する力を得たんだ。」

むぐちは何かに気づいたように言った。

「なら、攻城戦では―――」


「待ってくれ。攻城戦には興味がない。

今の僕は無欲だ。ただ、のんびりゲームを楽しみたい。

攻城みたいな面倒ごとに、もう関わるつもりはない。」

アンドリューは眉をひそめた。


「じゃあ、どうやってまこを守るつもりなの?!」

まつみが怒鳴った。


「その三日間、僕が必ずログインできるとは限らない。

それに、この力は血生臭い争いのための力じゃない。

攻城戦で積極的に動くことは当てにしないでくれ。

まこが危険に陥ったときだけ現れる。他のことは一切関与しない。」

アンドリューは、自分の力を乱用するなと警告した。


「はぁ?! じゃあ何のためにいるんだ!

まこ、今すぐ契約を解除しろ!」

パシュスが大声で叫んだ。


「いいえ。ないよりは、あったほうがいい。」

むぐちはすぐにパシュスを引き止めた。


「攻城戦には参加しないが、役に立つ情報なら提供できる。

調べたところ、四つのギルドがハグァグ城を攻める予定だ。

Kanatheon、風の旅人、神曲、そして深淵の手。」

アンドリューはそう告げた。


「深淵の手?! 銀龍の刻印よりも早く創設されたギルドじゃない!」

ニフェトが驚いて声を上げる。


「うん。メンバーはおよそ十五人、全員が三次転職だ。

彼らは北側から攻める。他のギルドは西側だ。

戦闘を避けて獣人の酋長を最短ルートでなら、南側がいい。

ただし、深淵の手の進軍速度は君たちより速い。判断は慎重に。」

アンドリューは各地から集めた情報を一気に語った。


「……なるほどね。」

むぐちは腕を組み、すぐに考え込んだ。


「それじゃ、僕は失礼する。みんなの幸運を祈ってる。

またね、まこ様~」

アンドリューはまこに投げキスをし、光となって転送されていった。


「くそっ! あいつがいない今のうちに、さっさと契約を解除しろ!」

パシュスが怒鳴る。


「まあいいでしょ~。今週はお疲れさま。

あの件は攻城戦が終わってから考えるわ。

私は明日はログインしないで、ゆっくり休む。明後日の朝に入るわ。」

むぐちは大きく背伸びをし、あくび混じりに言った。


「じゃあ、私も明日はログインしない。家族と外食なの。」

ニフェトが続ける。


「まこ~、明日の夜、映画行かない?

最近ゾンビ映画が公開されたんだ!」

パシュスが間髪入れずに誘った。


「行く行く! まこ、ホラー大好き!

しょうたも一緒にどう?」

まこは興奮して叫び、ついでにまつみに振る。


「えっ、ゾンビが走るやつ?!」

まつみは目を輝かせたが、次の瞬間、背筋が冷えた。


パシュスが殺意のこもった視線を向けていた。


「……俺、明日は無理。」

まつみはしょんぼり答える。


「え~、残念。じゃあパシュスと行くね~。」

まこは口を尖らせた。


「みんな、どの地区に住んでるの?」

ニフェトは興味津々で身を乗り出す。


雨町二区あめまちにくだよ。ニフェトも来ない?

会いたいな! むぐちお姉ちゃんも来ようよ。

いっそオフ会にしよう!」

まこは期待に満ちた声で言った。


「明日は予定があるの。行けないわ。」

むぐちは即答する。


「えっ、彼氏いるの?!」

まこが目を丸くする。


「まさか~。むぐちみたいに気の強い人、男の子が逃げるよ!」

まつみが思わず口を滑らせた。


「死にたいの? 大学の友だちとの集まりよ。女の子だけ。

期待に応えられなくて残念ね。」

むぐちは頬を赤らめた。


「パシュス~、攻城戦が終わって、みんな暇なときに観に行こう?」

まこは甘えた声で言う。


「……ああ、わかった。」


「じゃあ、攻城戦の日にまたね~。」

そう言って、皆それぞれ解散した。

……


皆が去ったあと、まこはこっそりとキャラクター情報やスキル表、

各種コマンドを確認し始める。

胸の奥に、言いようのない不安が広がっていった―――


「魂の契約を解除する……項目は……どこ?」

……



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