5 かなの贈り物
*R18*に関わる内容は、別の場所で公開します。
四人は、ようやく新手の村の噴水前にたどり着いた。
「なんでさ~。かながいれば、どんどんレベル上げできるじゃん。」
まつみは地面に倒れ込み、息を切らしながら言う。
「私の魔法系スキル、クールタイムが三倍なの。」
かなは椅子に腰かけて答えた。
「三倍?! なんで?」
「今は一次転職の神職者だから。」
「はぁ~。強い人に引っ張ってもらって、一気に百レベルまで行けると思ったのに~。」
まつみは肩を落とす。
「落ち込むなよ。それに、仮にかなが俺たちを連れて狩りしてたら、本人はスキルを上げられないだろ。無理を言うもんじゃない。」
パシュスは冗談めかして言った。
「まこ、疲労値がもうすぐ上限だよ。このままだと歩けなくなる。宿で休まない?」
まこは背伸びをしながら提案する。
「さっき妖魔の首領を倒して、狼貨が二枚出たんだ。四人で分けよう。」
パシュスは、艶のある銀色の狼頭コインを二枚、手のひらに乗せた。
「装備も買わないとだし、ポーションも、スキルも必要でしょ! お金は無駄遣いできないよ。」
まつみは狼貨を弾いてから握りしめ、迷いの表情を浮かべる。
「はぁ……。」
三人は、同時にため息をついた。
...
「万能ポーション、もう二杯!」
まつみはイノシシの骨を吐き出し、空になった杯を掲げてメイドに声をかけた。
「かしこまりました、ご主人様。こちら、ご注文のアップル味スライムでございます。」
メイドは、淡い黄色のゼリーカップが並んだ皿を置いた。上には小さな紙傘が刺さっている。
「意外と見た目いいじゃん!」
まつみは鉄のスプーンを取り、ゼリーに突き刺した。
その瞬間、ゼリーがぴょんと跳ねて、テーブルの上に落ちた。
「わわわ! ゼリーが飛んだ!」
「大げさだな。」
パシュスは笑いながらフォークを手に取り、スライムに突き刺した。
しかしスライムは突然中空になり、フォークはドンと音を立ててテーブルに突き立つ。
「ちっ!」
パシュスはむきになり、フォークでテーブルをめった刺しにした。
「氷牢!」
まこがスライムをテーブルごと凍らせる。
「今だ!」
パシュスが叫んだ。
「やっと思い出した? 巨人の影の下で生きるってことを。」
顔を歪めたまつみは、哀れなスライムに邪悪な笑みを向ける。
大口を開け、凍ったスライムを丸ごと飲み込んだ。
スライムは必死にもがいたが、やがて噛み砕かれて二つに裂ける。
まつみは、氷のように滑らかで甘い味に衝撃を受けた。
「ちょーちょーちょーおいしい!」
まつみは口を大きく開け、残りのスライムも氷ごと噛み砕いた。
店内の客たちは、冷たい視線で彼女たちを見ている。
「いいよね? 美しいお嬢さん~、いいよね?」
まつみは突然かなの前に進み出て、片膝をついた。周囲がざわつく。
「な、なに?」
かなは顔を赤くし、緑のツインテールが余計に可愛らしさを引き立てる。
「質問はどうでもいい。知りたいのは答えだけ~。イエスかノー?」
まつみは紳士ぶって、かなの小さな手を取った。
「や、やめて、立って……。」
かなは慌てて、まつみの服を引っ張る。
「わ~、大胆なしょうた。かなと知り合ってまだ数時間で告白?」
まこが横で煽る。
「イエス! イエス! イエス!」
周囲の客たちが囃し立てる。
かなは俯き、頬が燃えるように熱くなった。
「美しくて、可愛くて、守ってあげたくなるお嬢さん~。もう一杯スライム奢ってくれない? 今度はブドウ味がいいな。」
まつみは芝居がかった仕草で言った。
――轟隆!!!!!!
大きな銅鐘を叩いたような衝撃音。
店は真っ二つに裂けた。
「PKだ! 殺人だ! 逃げろ!」
客たちは悲鳴を上げて散り散りに逃げ出す。
まつみは腰が抜け、動けずに固まった。
「ご主人様! ここはPVP不可ですが、建物は損壊します! それに、他のお客様が会計せずに逃げてしまいました!」
メイドは怒って叫ぶ。
「……ごめんなさい。弁償します。」
かなは拳を握り、席に座り直した。
「三十一狼貨です。」
メイドは頬を膨らませる。
「これで。お釣りはいらない。」
かなは金色の竜貨を差し出した。
「ちょ、待って! かな、それ竜貨だよ!」
パシュスはかなの手を押さえる。
「うん。」
かなは手の中の竜貨を見つめた。
「チップにしては多すぎるだろ……。」
パシュスは胸が痛む思いで竜貨を見る。
「よ、よろしいのですか、ご主人様?」
メイドは恐る恐る竜貨を受け取る。
「うん。代わりに情報をちょうだい。」
かなは言った。
「情報?」
三人が同時に首をかしげる。
「どのような情報をご所望ですか?」
メイドは微笑んだ。
「ここは初心者の村……。次の妖魔首領が出現する時間と場所を教えて。」
かなは静かに言う。
「二時間三十二分後、妖魔森林の東側、池の中央です。」
メイドはかなの耳元で囁いた。
「うん。十分。」
かなは満足そうに微笑んだ。
「ありがとうございました、ご主人様。」
メイドは深く一礼し、その場を去った。
...
四人は再び噴水池に集まっていた。
「見て見て!」
まこは黒いベレー帽を買い、紫のウェーブがかった髪に被せる。
「すごく可愛いよ、まこ。」
パシュスは笑って言った。
「おいまこ! 無駄遣いするなよ! 私たち一人五十羊貨しかないんだぞ。どうせなら実用的な装備を買えよ。」
まつみは鼻で笑う。
「大丈夫だよ~。前に髪飾りを買ったでしょ? そのおかげでお店のおばさんが値引きしてくれたの。」
まこは甘く笑い、ベレー帽をいじった。
「なに?! いくら安くなったんだ?!」
パシュスが食いつく。
「二羊貨~。」
まこはピースサインを作った。
ぷしゅ。
パシュスはその場で倒れた。
「たった二羊貨で何が割引だよ!!!」
まつみはまこに向かって叫ぶ。
「割引を侮らないことね。NPCとの好感度が上がるほど、割引率も上がる。それに、隠しクエストやアイテムが発生することもある。」
かなは淡々と言った。
「まこ……やっぱり天才だわ。」
まつみは真剣な顔で、まこの肩に手を置く。
「妖魔森林に戻ろう。」
かなが言った。
「え?! なんで?!」
三人が同時に声を上げる。
「私のスキルを上げるため。それから、妖魔首領が再湧きしたら黒雷で倒せばいいだけ。」
三人の目が一斉に輝いた。
「よし! 本大爺の主人公パワー、発動だ!!!」
まつみは村の出口の小道を指さし、呵呵と笑った。
更新は基本【毎日1話】。
さらに、
ブックマーク10増加ごとに1話追加、
感想10件ごとに1話追加します。
書き溜めは十分あります。
一緒にテンポよく、魔王討伐まで突っ走りましょう :)




