表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第十三章―黒十字の仮面
49/194

48 処刑人の復讐

村の範囲に足を踏み入れた瞬間、重苦しい圧迫感がのしかかる。

どの暗がりにも危険が潜んでいるようだった。


幸い村は広くない。前方にはワスティン大聖堂が見え、その精巧な鋼鉄の大扉も視界に入る――だが、門の前には数人の青ネームが、獲物を待つように陣取っていた。


むぐち やよいが突然、皆を制止した。

地面に、近くのコテージへと引きずられていく血痕が残っているのに気づいたのだ。


「さっきの暗殺者か?」

ニフェトは血の跡を見つめ、考え込む。


「敵の敵は、味方だ」

むぐちがそう言い、五人は血痕を辿ってコテージの中へ入った。


コテージの中は無人で、簡素な木の机と椅子が置かれているだけだった。


「出てこい。私たちも赤ネームだ」

むぐちが声をかける。


……返事はない。


ニフェトが部屋の隅にある血だまりを指差す。


「出血状態がかなり重いみたいね。アイテムか神官の治療がなければ、すぐに死ぬわよ」

むぐち やよいが挑発するように言った。


すると、黒煙がふっと立ち上り、オレンジ髪の暗殺者が息を切らしながら隅に姿を現した。顔色は真っ青だ。


「聖母の祈り」

ニフェトが即座に回復をかけると、暗殺者の襟元に赤い旗の紋章が見えた。

「ギルドに入ってる?」


「……それを聞いてどうする」

暗殺者は腰の傷を押さえ、痛みに顔を歪めながら問い返す。


「この前の攻城戦、プラムスで戦ってなかった?」


「守備側か、攻撃側か?」

暗殺者は何かを悟ったように聞き返した。


「守備側。アンドリアの仲間よ」


「アンドリアだと……チッ!」

暗殺者は吐き捨て、同時に腰の傷が走り、声を詰まらせた。


「どういうこと?」

むぐちが冷静に問う。


「俺は紅の教条のメンバーだ。二日目の攻城戦で、うちのギルドマスターが戦死した。なのに銀龍の刻印は、その功績を誰にも伝えず、龍貨を千枚渡しただけだ。俺たちみたいな小ギルドを見下してるんだ!」


「それは……残念ね」

ニフェトは一瞬言葉を選び、続けて尋ねた。

「それで、ワスティン大聖堂に何をしに来たの?」


「お前たちと同じだ。赤ネームを洗浄しに来た。ギルドは解散したし、仲間と話して、もう赤ネームはやめようってな。でも……青ネームがこんなに狩りに来てるとは思わなかった。あいつら、何者なんだ?」


「分からない」

むぐち やよいは即答せず、逆に聞き返す。

「仲間はいるの?」


「……いた。二人。でも、今は俺一人だ」

暗殺者は目を伏せた。


「見たわ」

むぐち やよいは淡々と言い、続ける。

「今から大聖堂に入って洗浄する。一緒に来る?」


「門の外、青ネームが待ち構えてるだろ。勝てるのか?」

暗殺者は疑わしげに言った。


「心配ない。あいつら、私たちには手を出せない」

まつみが自信満々に笑う。

深淵装備の黒気が立ち上り、暗殺者は息を呑んだ。


「……その装備、何だ?」

暗殺者は目を見開く。


「細かいことは気にするなって~。で、名前は?」

パシュスが軽く聞いた。


「トリだ」


「よし、トリ。一緒に教会に突っ込もうぜ」

パシュスは手を差し出す。


トリは一瞬迷ったが、パシュスは構わず手を引いて立たせた。


【システムメッセージ: トリ パーティーに参加】


「俺の隠身は最大三十秒だ。その間、どうやって生き延びる?」

トリはまだ不安そうに尋ねる。


「PK解放して、堂々と歩いていくつもりだ」

むぐち やよいは笑った。


「心理戦なら、もう一手いるな……お前、魔導士だろ? 爆炎系を準備しろ」

トリがまこを見る。


「え……私は召喚師だよ。爆発系は使えない……」


「はぁ?! 暗殺者がいて、火系魔導士がいないのか? 集団隠身を使わないのか?!」

トリは本気で驚いた。


五人は黙って首を横に振る。

トリは深くため息をつき、仕方なさそうに秘技を説明し始めた。


「爆発効果のあるスキルと、暗殺者の影の粉を組み合わせると、範囲隠身が発生するんだって?!」

ニフェトが目を見開く。


「ああ。前のギルドじゃ、それで何人も殺した……もうやる気はないし、教えても構わない」

トリは感慨深そうに言った。


「……分かった。やり方は掴んだ」

むぐちは自信ありげに微笑んだ。

...


木の扉を押し開け、薄暗い小屋から通りへ踏み出すと、周囲のプレイヤーたちはその赤ネームの一団に、怯えた視線を次々と向けてきた。


ワスティン大聖堂の尖塔に宿る金色の光はもう目と鼻の先で、短い石段を上り、少し平坦な道を進めば到着だ。


黒十字の仮面をつけた人物が、脇の屋根の上に立ち、監視カメラのように六人を見下ろしている。


「ふふ……見ものだな」

「行こうぜ。万一やり合いになったら、俺たちが巻き添えだ」

「これだけ青ネームが守ってるんだ。あいつらも無茶はしないさ」


周囲のプレイヤーたちは恐怖を薄め、彼らの近くをうろつきながら野次馬を始めた。


トリは胸騒ぎを覚え、複数の青ネームに見られていることに耐えきれず歩調を落とし、後ろのまこにぶつかった。


むぐち やよいはすぐにまこを支え、二人を前へ強く押して隊列を保とうとするが、本人も内心は緊張でいっぱいだった。

「耐えて。もうすぐだ」


わずか二分が、二年にも感じられるほど長い。


石段を上がると、前方の青ネーム二人が無言で道を開けた。


最後の直線に入ると、ワスティン大聖堂の外壁から放たれる聖なる白光が、彼らの顔を照らし返す。


「仕掛けないのか?」

「馬鹿言え。装備に特効がある。まずは他の連中に様子を見させるさ」


背後で、青ネームたちの小声がかすかに聞こえた。


「楽勝だな。あの処刑人が追ってくるかと思ってた」

トリはそっと振り返り、先ほどの青ネーム以外に処刑人の姿がないことを確認した。


「ネーム洗浄のクエストって、何なんだろ……」

まこが興味深そうに言う。


教会の大扉が、ちょうど彼らのために開いた――わけではない。


扉の隙間から青い光が溢れ出し、先ほどの処刑人と銀衣の主教が、大聖堂から姿を現した。


「どうするんだ?!」

トリは全身を震わせた。


「進め! 止まるな! 平然としてろ!」

むぐち やよいは歯を食いしばり、乱れそうになる歩調を必死に整えた。


ドン――地面が震える。


処刑人が十字架を道の中央に突き立て、六人を見据える。彼らは否応なく立ち止まった。


「その者を渡せ。他は通っていい」

処刑人はトリを指さした。


トリは氷室に放り込まれたように硬直し、張り詰めた神経が、全身を針で刺されるように疼いた。


「……トリを指してる?」

ニフェトが尋ねる。


六人は身を寄せ合い、トリの位置を紛らわせようとするが、処刑人の指先は正確にトリを捉え続けた。


「深淵装備の特効だ!」

まつみが、黒気を放っていないのがトリの黒衣だけだと気づく。


「どうしてだ?」

隠しきれなくなったパシュスが、強がって問いかける。


「軽音部……知っているか」

処刑人は冷静に言った。


「プラムスの攻城戦で全滅したギルド……まさか、あなたは生き残りか?!」

ニフェトが息をのむ。


「会長は死んだ。副長も死んだ。俺とことのは以外、全員死んだ」

処刑人は淡々と語り、その平板さがかえって不気味だった。


「待って。裏切ったのは黒の騎士団と夜勤O棟だ。紅の教条は関係ない」

ニフェトが説明する。


「知っていて報告しなかった。罪を一つ加える」

処刑人は冷たく告げた。


五人は信じられず、即座にトリへ視線を向ける。


トリは俯いたまま、何も答えない。


「もう過ぎたことだし……」

まこが愛想笑いで取りなそうとする。


「過去は、すでに事実となった……」


トリは沈黙を守った。


「本当なのか?」

パシュスは怒りに燃え、トリの黒衣を掴んだ。


「……ああ」


「ふざけるな! 行こう!」パシュスが皆を引っ張って離れようとした。


「俺たちは最後まで仲間を裏切ってない! 反乱側から接触はあったが、会長は応じなかった。ただ漁夫の利を狙っただけだ。なのに翌日、攻城戦が始まった瞬間、最初の一波で殺されたんだ!」

トリは必死に、自分のギルドの正当性を訴えた。


「……なかった?」

処刑人は十字架を力任せに引き抜く。


「なかった! 俺たちは良心に恥じることはしてない!」

トリは胸を張り、真正面から処刑人を睨みつけた。


「なかった? なかった? なかった? なかった? なかった? なかった?!」

処刑人は高速で繰り返し、黒十字の仮面越しでも感情が爆弾のように噴き出していた。


「アサヤ……もういい」

ことのはが眉をひそめ、処刑人の法衣を引いた。


「そうだ、もういい。ここまで本気になるほどのゲームだ。みんな同じプレイヤーだろ。誰が他人を裁ける?」

アサヤはため息をつき、十字架を再び地面に突き立てた。


六人は、ほっと息をつく。


「――なわけあるか!!!」

アサヤが咆哮し、黒十字を高く掲げると、白い雷がその身を貫いた。

十字架は銀光を放ち、金色の経文が浮かび上がり、中央から聖血が流れ落ちる。


ことのはは力なく首を振り、深く息を吐いた。


「……また一人、ガチ勢馬鹿だな」

むぐち やよいが眉をひそめて言った。


「友の命で償え!!!!!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ