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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第十三章―黒十字の仮面
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47 「アーメン!」

ワスティン大聖堂はムー大陸の中央に位置し、多くのプレイヤーが中継地として休息に立ち寄る場所だ。その周囲には自然と集落が発展し、北から南へと翡翠色の細い川が貫いている。


木造の家屋と大樹が道沿いに整然と並び、若葉を透かした陽光が降り注いで、小さな土の道を鮮やかな緑に染めていた。


プレイヤーたちは思わず歩みを緩め、明るい田園の景色を味わう。


ワスティン大聖堂は長方形の建築で、正面には尖塔の鐘楼が二基そびえ立つ。青銅の大扉には精緻なレリーフが刻まれていた。


聖なる外壁は強い日差しを反射し、容易には踏み入れられない神聖さを放っている。

……


集落の外れ―――


深淵装備から滲み出る不吉な黒気が黒いマントの襟元から漏れ出し、五人はまるで亡霊のように、道の真ん中を大股で歩いていた。


「見て!!! あれ、プレイヤーじゃない?!」

「この黒い気、何なの?」

「こっちに来る! 逃げよう~」


周囲のプレイヤーは、まつみたちの姿を見るなり道を空ける。


まこの体が興奮で小刻みに震え出した。

「ぷっ! まこ、気分サイコー! みんな私を怖がってる!」


「我慢しろ。目立つな」

むぐち やよいは余裕たっぷりに歩き続ける。


五人は集落の中央にあるワスティン大聖堂へと向かった。


「俺たち、もうレベル230だよな? 他のプレイヤーを怖がる必要ある?」

パシュスが尋ねる。


「関係ない~。この優越感、最高だろ! はははは!」

まつみは手足を振り回し、鼻歌まで歌い出す。


「赤ネームを洗浄したら、次はどこ行くの?」

まこが聞いた。


「東へ進んで獣人の領域だ。レベル250、三次転職してからだな」

むぐち やよいは気だるげに答えた。


カン、カン、カン!


前方から、激しい武器の打ち合う音が響いた。


青い魔導士ローブを着た赤ネームの男が、木造家屋の二階の窓から投げ出され、地面に叩きつけられる。顔は血まみれで、ズボンは裂け、傷口から肉が露わになっている。


もがきながら起き上がろうとした瞬間、割れた窓から一人が飛び出し、その頭を踏みつけた。


白い経文がびっしりと記された黒い修道服。背中には巨大な赤い十字の紋章。手には巨大な十字架を武器として構えている。


そして何より目を引いたのは―――黒い十字の仮面。その頭上に表示された称号は、青色だった。


「青ネーム?」

むぐち やよいは内心で息を呑む。


「殺……殺してくれ……」

瀕死の魔導士が、修道士に命乞いをした。


黒衣の修道士は十字架を高く掲げる。


「アーメン」

静かに呟き、十字架を力任せに振り下ろした。


魔導士はまだ死なず、声も出せないほどの苦痛に身をよじる。


「アーメン」

再び叩きつける。

「アーメン」

「アーメン」

「アーメン」

「アーメン」

「アーメン」

「アーメン!!!!!!!!!!」


血肉が飛び散り、隣の木造家屋の壁まで赤く染め上げた。


「天の罰!」

白銀の大剣が天から落ち、魔導士の身体を貫いた。そこでようやく彼は光の粒子となって消え、金袋とわずかな装備だけが残る。


白髪に銀衣の女神官がコテージから現れ、黒衣の修道士と合流する―――彼女もまた、黒十字の仮面を着けていた。


その瞬間、橙髪の暗殺者が影から飛び出し、仮面の二人へ短剣を投げつける。すぐさま魔導士の遺留品を拾い上げ、透明化して逃走した。


修道士の反応は異様に速い。十字架を横薙ぎに振るい、不可視の暗殺者を捉えた。左腕から血が噴き出し、傷を押さえたまま暗殺者は一目散に現場を離れる。


「追うぞ~」

修道士は十字架を担ぎ、追撃に出ようとした。


だが、銀衣の女神官がその裾を引き、まこたち五人を指差す。


「待っ――」

まこが説明しようとした瞬間、むぐちが全力で彼女の尻をつねり、口を塞いだ。

「喋るな……動くな……」


「彼ら、どんな装備を着ている?」

女神官が問いかける。


「分からない……関わらないほうがいい……」

黒衣の修道士は五人から滲み出る不吉な黒気を見てそう言い、二人はゆっくりと村の中へ戻っていった。

……


五人はその様子を見て一斉に走り出し、道端の草むらへと身を隠す。


「な、何あれ?! なんで名前が青色なの?!」

まつみは今にも漏らしそうな顔で叫んだ。


「名前じゃない。アンロック系の称号だ……あの黒十字の仮面、たぶん“贖罪者システム”だ。クローズドβの時点では未実装だった新要素だろ」

むぐち やよいは眉をひそめる。


「青ネームって、好き勝手に人を殺せるの?! 赤ネームと何が違うんだ?!」

パシュスが動揺して聞く。


「青ネームは、たぶん赤ネーム専門の狩人だ。キャラの初期カルマ値は0で、人を一人殺すごとに-10、称号か身体が赤く光る。逆に赤ネームを狩ればカルマ値+10で、光が青になる……そんな仕組みだと思う」

むぐち やよいは推測を口にした。


「俺たち、かなと一緒に赤ネームも殺したけど、青くなってないぞ?」

パシュスが首をかしげる。


「知らないって言ってるだろ!」

むぐち やよいは苛立ったように吐き捨てる。


「さっきの十字架を担いでた人、何の職業……? 怖すぎる……」

まこは震えながら言った。


「三次転職の処刑人だ。あれだけ強いのに、直接プレイヤーを殺せないのが証拠だ。処刑人は真神に代わって裁きを執行する存在だが、システム上の制限で“プレイヤーを殺せない”。だから相方がトドメを刺す必要がある。さっきの天から剣が落ちる技は、主教専用の攻撃スキルだ。つまり――あの二人、どっちも三次転職の神官職だ」

ニフェトは胸元を押さえ、荒い鼓動を落ち着かせた。


「早く大聖堂に入って赤ネームを洗浄しよう! ここは長居できない!」

まつみが焦って言う。


「赤ネームは皆、大聖堂で洗浄するからな。それを狙って、青ネームがこの村に集まってるんだろ。まだ他にも潜んでるはずだ」

むぐち やよいはさらに推測する。


「このままだと進行不能になる。王都は赤ネーム立ち入り禁止区域が多いし、クエストも大量に逃す」

ニフェトが現実的に言った。


「……装備差はある。三次転職が二人相手でも、必ずしも負けるとは限らない」

むぐち やよいは深く息を吸う。


「話してるだけで鬱陶しい! 一気にPK解放して大聖堂まで突っ切ろうぜ!」

まつみは黒いマントを翻し、真っ先に飛び出した。

……


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