41 ∑(°Д°)
彼らは北の森の果てへ辿り着いた───
前方の茂みをかき分けると、待ち受けていたのは城壁のようにそそり立つ壮大な断崖だった。
断崖の下部には不規則な形の石洞が口を開け、銀の槍を持つエルフが二人、見張りに立っている。
左右には松明が突き立てられ、洞内は闇に沈んでいた。
「二人だけ~行ける!」
まつみが即断で飛び出そうとし、パシュスに引き止められる。
「バカ! 中にもっといるに決まってるだろ!」
パシュスは苛立って言った。
「地下牢の内部構造は分かる?」
むぐち やよいがルークに尋ねる。
「分からない。樫の牢獄から生きて出た者はいない。急がないと!」
ルークは焦りを隠せない。
「うーん、戦術が必要ね。」
ニフェトは顎に手を当てて考え込む。
…
草むらから狼の遠吠えが響き、銀槍のエルフ二人が同時に武器を向けた。
「︼ヤ?」
エルフが声を発する。
草むらが激しく揺れ、葉が次々と落ちる。
「蛟倶ソ晏~」
もう一人が言い、ゆっくりと草むらへ近づいた。
足音を殺して銀槍で慎重にかき分けるが、異変はない。
振り返った瞬間、仲間が片手で喉を押さえ、もう一方で必死にまつみの攻撃を受け止めているのが見えた。
銀槍のエルフが角笛を取り出そうとした瞬間、パシュスが体当たりで倒し込み、体重で押さえつける。
その拍子に装甲の下の薄布がめくれ、白い脚の間から一瞬、聖なる光が閃いた。
「伝説のR指定設定?!」
パシュスは目を見開き、煩悩に飲まれて力が抜ける。
その隙にエルフは転がって距離を取り、角笛を口に含んだ。
「炎牙!」
魔狼が正面から飛びかかり、彼女の顔に噛みつく。
「ヤヤヤヤ~」
噛まれたまま嗚咽するしかなく、やがて光の粒子となって消えた。
五人はレベルアップした。
「作戦成功。まつみ、一人で制圧できるなんてすごい。」
むぐち やよいは親指を立てて称える。
「そ、そうかな……」
実際のまつみは顔を腫らし、死力を尽くしての勝利だった。
…
入口の守衛を排除し、二人は地下牢へ進む。
松明を手に、暗く長い階段を慎重に降りていった。
ほどなく、前方からエルフの会話が聞こえる。
まつみが単独で偵察に向かい、ほどなく黒煙となって戻る。
「下は正方形の部屋で、エルフが二人。反対側に通路があって、両脇は牢房。」
パシュスはまつみの肩に手を置き、力強く頷く。
その直後、まつみは踵を返して階段を上ろうとし、四人に引き戻された。
「任せた!」
パシュスは満面の笑みで言い、まつみを蹴り落とす。
直後、部屋の中から激しい戦闘音が響いた。
【注意: フレンド まつみ HPが20%になりました】
「合図だ。行くぞ!」
パシュスはにやりと笑う。
…
部屋は灰色の荒い石レンガで組まれ、揺れる火光が冷気を際立たせている。
通路の奥から怨嗟のうめき声が漂い、ルークは牢房の並ぶ回廊へ向かった。
濃茶の木柵の向こうにあるのは白骨か、干からびた人影ばかり。
手足は鎖で縛られ、餓死したと分かる遺体の前には必ず小さな紙片が置かれている。
【システムメッセージ: ブランデン隊長の遺体】
【システムメッセージ: 村の少年の遺体】
【システムメッセージ: 狐狩りの遺体】
「かわいそう……こんな場所で死ぬなんて。」
まこは遺体を見つめ、眉をひそめた。
「どうやら全員、「隠しクエストのNPCみたいだね。誰も任務を達成しなければ、筋書き通りここで死ぬ。」
むぐち やよいが言う。
「早く村長を見つけないと!」
ルークは焦った声を上げた。
六人はさらに地下牢へ進み、より多くの隠しNPCの死体を見つける。
カチ。
最後尾を歩いていたまこが、誤って浮き石を踏んでしまった。
直後、背後の石壁の穴から毒矢が三本射出される!
「聖庇所!」
ニフェトが魔力の盾を展開し、毒矢を弾いた。
カチ。今度は先頭のまつみが罠を踏む。
緑色の酸液が突然、まつみの全身に浴びせられた。
ジュウッと音を立てて腐食し、白い煙が立ちのぼる。激しい痒みが一気に広がる。
「聖母の祈り。」
「……チッ。足元に注意して。」
むぐち やよいは床の浮き石を睨みつけた。
毒矢、飛び刃、強酸、麻痺、失明、鈍化……。
気づけば、数え切れないほどの罠部屋を踏破していた。
全員がそれぞれ異なる状態異常を抱え、効果が切れるのを待つために足を止める。
「ルーク、闇精霊の村には元々、何人くらいいたの?」
ニフェトが合間に尋ねる。
「およそ六百人だ。」
ルークが答えた。
「ハイエルフとは、ずっと友好的だった?」
物語を深く知ろうとして、ニフェトは続けて問う。
「同じ源を持つ種族ではあるが、習性や文化が違う。交流は深くなかった。
俺たちはラロ神が魔王を倒し、世界を救ったと信じているが、森には他の精霊も存在すると考えている。ハイエルフにとって、俺たちは異端だ。そのせいで、精霊評議会から闇精霊の代表は追放された。
さらに、俺たちは神の秘術――瞬間転移を受け継いでいる。ハイエルフは何度も教えを請うてきたが、村長は拒んだ。交流は次第に途絶え……そして、あの襲撃だ。」
ルークは拳を握りしめた。
「ハイエルフは女性ばかりだったけど、闇精霊は男だけなの?」
パシュスが唇を舐め、冗談めかして聞く。
「違う。両方の性がある。ただ、ハイエルフは女性が圧倒的に多く、闇精霊は男性が多い。
ハイエルフ社会では女性だけが権力を持つが、闇精霊にはその区別はない。」
ルークは淡々と答えた。
「なるほど。人口が少ないわけだ。」
パシュスは妙に真剣に考え込む。
「今は村長を救うことで頭がいっぱいだ。他のことを考える余裕はない。」
ルークは沈んだ声で言った。
「魔王について、どこまで知っている?」
むぐち やよいが鋭く切り込む。
「伝承は多い。だが主流はこうだ。
魔王は異世界の軍勢を率い、深淵から這い出てムー大陸へ侵攻した。
その時、ラロ神はムー大陸の全種族を率い、ヴァクラングロスティン平原で決戦に挑んだ。連合軍は勝利したが、神はその後、姿を消し、二度と戻らなかった。
戦場跡には、ラロ神の偉業と失われた命を讃える大聖堂が建てられた。それが、今のワスティン大聖堂だ。
導きを失った各種族は分裂し、互いに争うようになった。それでも皆、同じ願いを抱いている――魔王が再び現れる時、ラロ神が戻り、救ってくれることを。」
ルークはそう語った。
五人は食い入るように聞き、何度も頷いた。
「だから勇者様、魔王に神殿のキーストーンを渡すわけにはいかない! そうなれば取り返しがつかないんだ!」
ルークは緊張した声で言う。
そのとき、前方から会話音が聞こえ、数名のエルフが曲がり角からこちらへ向かってきた。
「意外と面白い展開だね。」
むぐち やよいは立ち上がり、刀に持ち替える。
「ふふ……ますます魔王を早く倒したくなった。」
まつみが笑う。
「まずは目の前の厄介事を片づけましょう。」
ニフェトは杖を構え、敵の位置に耳を澄ませた。
…
六人はさらに地下牢の奥へ進み、道中でハイエルフの衛兵を暗殺し、さまざまな罠を回避していく。
木の扉を押し開けると、五十人は入れそうな正方形の大広間に飛び込んだ。
狭い通路に押し込められていた閉塞感が一気に晴れ、まつみは大の字になって床に寝転ぶ。
レベルはすでに十も上がっており、むぐち やよいとニフェトは新しいスキルやステータスポイントを確認している。
壁には各種の拷問具が吊され、灰色の石壁には古い血痕が染みついていた。処刑場だったのだろう。
広間の奥の壁には、黒い巨大な鉄扉があり、荒削りの表面には無数の鉄釘が打ち込まれている。
黒鉄の扉には、かつて闇精霊の村で見た白い紋様が描かれていた。
その脇には、ごく普通の木の扉が一つ。
広間の四隅には鉄格子の檻があり、囚人は一人だけだった。
「村長!!!」
ルークは角の牢へ駆け寄り、叫ぶ。
「ルークか? 本当にお前なのか?!」
痩せこけた老いたダークエルフが鉄格子に身を寄せ、両手でルークの顔を撫でた。
二人は涙を流し、鉄格子越しに抱き合い、口づけを交わす。
「∑(°Д°)」
「∑(°Д°)」
「∑(°Д°)」
「∑(°Д°)」
「∑(°Д°)」
五人は初めて全員が同じ反応を示し、この恋愛イベントを邪魔できずに固まった。
「この設定……」
まつみは呆然と立ち尽くす。
…
鉄格子を破壊しようとあらゆる方法を試したが、びくともしない。
「鍵はこの部屋にあるはずだ!」
ルークは隅々まで探し回るが、見つからない。
「この檻は、典獄長の鍵でしか開かん。」
闇精霊の村長が五人に告げた。
「典獄長はどこに?」
ニフェトが問う。
村長は黒鉄の扉を指さし、恐怖に満ちた目を向ける。
「この紋様は、精霊の封印術だ。」
ルークは紋様に触れ、苦々しく言った。
「解除できる?」
むぐち やよいが尋ねる。
「初歩的な封印しか使えない。これは高位魔法だ……俺には……。」
ルークは首を振り、ため息をついた。
「今、闇精霊一族の運命は君たちに託されている! 必ずこの扉を開き、典獄長を倒してくれ!」
村長は鉄格子を握り、力強く頷く。
「全力を尽くす!」
ルークは黒鉄の扉の白い紋様に向かって詠唱を始め、紋様はすぐに光を放った。
「勇者様、解除には集中が必要だ! 守ってくれ!」
ルークは目を閉じ、呪文を呟き続ける。白い紋様の光が次第に弱まっていく。
「は? おい、ちょっと待――」
パシュスが慌てて声を上げた。
【システムメッセージ: ルークを守れ 残り時間:05分00秒。】
∑(°Д°)




