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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第十一章-ダークエルフ
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37 古ぼけた地図

チチッ。


何かが、まこの肩の上でぴょんぴょん跳ねている。


重たいまぶたを開くと、視界はぼやけ、白い霧しか見えなかった。


白樹にもたれ、水の中に座り込んでいる。わずかに身体を動かしただけで、全身の関節が悲鳴を上げ、骨がギシギシと鳴った。


チチッ。


小さな白い鳥が三羽、肩にとまり、くちばしで一枚の紙切れをくわえている。


紙を受け取ると、小白鳥たちはすぐに花粉となって散っていった。


【密信 パシュス:どこにいる? 運動終わったぞ。──00日02時間37分前】

【密信 パシュス:密信見えてないのか、バカ?──00日02時間12分前】

【密信 パシュス:むぐちからも返事がない。一緒にいるのか?──00日01時間03分前】


慌てて目をこすり、左右を見回す。


「むぐち……どこ……?」


そのとき、肩に柔らかな重みを感じ、隣を見ると、むぐち やよいが寄りかかるようにして眠っていた。


視界が徐々に戻り、浪人と魔導士の姿が消えていることに気づく。周囲には誰もいない。


場所は、変わらず高木湖のほとりだった。


満天の星が夜空を埋め尽くし、静かな湖面は鏡のように星空を映し出す。まるで、無限の星光に包まれ、宇宙の中心に立っているかのようだった。


木々の上にも、湖面にも、空気の中にも白い光点が漂い、深夜の高木湖はまるで夢の世界のようだ。


「よかった……」


むぐちの手を握り、目を閉じる。魂が洗われていくような感覚に、身を委ねた。


「勇者さま~、お目覚めですかな?」


その声が、静寂を破った。


びくりとして振り返ると、白樹の陰から薪を担いだ 木こり姿を現した。


「あなたは……白糸の洞窟の 木こりさん?」

かすかに、その顔を覚えている。


「そうです、勇者さま。ここで薪を割っておりましたら、お二人が水の中で倒れているのを見つけましてな。休めるよう、運ばせてもらいました。いただいた竜貨で良い農具も買えまして、仕事も楽になりましたぞ!」


そう言って、手にした鎌を掲げて笑う。


「私との好感度って、どれくらい?」

好感度でNPCの反応が変わることを思い出し、思わず聞いた。


「勇者さま、それは気持ちのことですかな。もう、恩人だと思っておりますよ。」


木こりはそう笑い、薪を下ろして近づくと、銀色の葉を二枚差し出した。


「箔葉です。勇者さまの身体に残った状態異常を消してくれます。」


「ありがとう。」


銀葉をむぐちの額に当てると、すぐに表情が和らいだ。


「おじさん、私たちが気を失っている間、何があったの?」

苦労して立ち上がると、 木こりが慌てて支える。


「わしには分かりません。来たときには、お二人とも倒れておられただけで。」


その瞬間、むぐち やよいが跳ね起き、刀を抜いて身構えた。


「……あれ? 人は?」

静かな高木湖を見渡し、首をかしげる。


「誰のこと?」

まこが笑って聞く。


「最後、過負荷で二人を倒したはずなの。でも、そのあともっと人が集まってきて……私たち、どれくらい気を失ってた?」


「二時間くらいかな~。パシュスが探してたよ。あなたにも密信来てる。」


そう言って、むぐちの肩にとまった小白鳥を指さした。


【密信 パシュス:まこと一緒か? 返事がなくて心配してる。今から探しに行く。──00日01時間03分前】


二人はぎょっとして、即座に武器を抜き、跳ね起きた。


「パシュス、どこ?!」まこが叫ぶと、むぐち やよいがすぐに口を押さえる。


「静かに。もしかしたら、彼が人を引き離してくれたのかもしれない。こっちが目を覚ましたこと、まだ知られてない。」

むぐち やよいの視線が、木々の間を忙しなく行き来する。


「まこ! むぐち!」

遠くからパシュスが手を振り、走ってきた。


「来た!」

むぐち やよいは刀を抜く。


まこは再び魔狼を召喚した。すでに最初の細身の犬の姿に戻っている。


だが、パシュスは一人きりで、背後に追手の姿はなかった。


「二人とも返事しないから! 心配で死ぬかと思ったぞ!」

パシュスは思わず怒鳴り、首筋の血管と頬を伝う涙が、その気持ちを物語っていた。


「不意打ちを受けた。助けてくれたのは、まこ。」

むぐち やよいは刀を収めたが、目はまだ周囲を警戒している。


「不意打ち?!」

パシュスは驚き、すぐに周囲の森を見回した。


「道中で、他のプレイヤーを見た?」

むぐち やよいが尋ねる。


「見てない。……まこが助けたって?」

パシュスは、髪が乱れ、布鎧がぼろぼろに焼け焦げて肌が露出しているまこを見た。


「最後は六口のおかげだけどね。」

まこは舌を出し、気まずそうに言った。


「ノクスを殺して赤ネームになった。PVP解放後、酒場で会った二人に不意打ちされた。過負荷で勝ったけど、そのあと他のプレイヤーに囲まれた。……本当に、誰も見なかった?」

むぐち やよいは念を押す。


「うん。誰もいなさすぎて、逆に不安になったくらいだ。」

そう言ってパシュスは二人の無事を確認し、ようやく息をついた。むぐち やよいも、そこで警戒を解いた。


「今は、わたしも六口も赤ネームだね~。」

まこはキャラクター情報を開き、下部に表示された“殺戮者”の赤ネームを指さした。


「先にワスティン大聖堂で贖罪クエストをやろう。じゃないと、街でも狩りでも落ち着かない。」

パシュスが言う。


「人の少ないルートを選びたいけど、地図がない。」

むぐち やよいが続ける。


「あっ! おじさん~。この辺りの地形、詳しい?」

まこは振り返って木こりに声をかけた。


「はい、勇者さま。


ここはグズ城の西にある高木湖。さらに西へ進めば、レベル170~190の枯死海岸です。


北東へ行けば、エルフの都ヴィニフ城。途中はレベル250~270の墨色の森。


東へ向かえば、ムー大陸中央のワスティン大聖堂。そこから極東へ進み、レベル200~230の略奪者砂漠を越えると、獣人の首都ハグァグに着きます。


南東へ進めば、プラムス中央要塞です。


以上は主要な目印だけです。細かい分岐は、勇者さまご自身で探索なさってください。」

木こりは嬉しそうに語った。


三人は思わず声を上げた。まさか、ムー大陸全体の概要が一気に出てくるとは。


「地図が手に入る場所、知ってる?」

むぐち やよいが尋ねる。


「今日は疲れましたな。」

木こりは笑い、まったく噛み合わない答えを返す。


「まこ、代わりに聞いて。」


「おじさん、地図が手に入る場所、知ってますか?」

まこが改めて聞く。


「地図は売り買いできません。自作するものです。

わしはムー大陸のつながりを一通り覚えておりましてな。使っていない古い地図があります。よろしければ、勇者さまに差し上げましょう。」

そう言って木こりは、黄ばみ、しわの寄った羊皮紙を取り出した。そこには、はっきりとした地標、王都、村々が描かれていた。


「よかった! ありがとう!」

まこは目を輝かせ、地図を受け取った。


「勇者さまのお役に立てて、何よりです。」

木こりは笑った。


「じゃあ、ニフェトとまつみがログインしたら、ワスティン大聖堂へ行こう。」

パシュスも笑う。


「おじさん、この薪、一人で運ぶの大丈夫?」

まこは胸の高さほどある薪を見て、体力を気遣った。


「問題ありません。ご心配ありがとうございます、勇者さま。」

木こりは穏やかに答える。


「少し手伝おうよ?」

まこは薪を指し、抱え上げた。


「おい~まこ! 好感度はもう最大だろ。これ以上手伝う必要ないって。」

パシュスは困った顔をする。


「ゲームは没入してこそだよ!」

まこは笑い、枝を抱えた。


「仕方ないな~。」

むぐち やよいは首を振って苦笑し、薪を拾う。


「むぐち、どうした?」

パシュスは変化に気づいた。


「バカがうつったみたい。行こう。」


四人は木こりの薪を、グズ城まで運んだ。


「勇者さまは、きっとラロ神がお遣わしになった天使です!」

木こりは感激し、まこの手を握った。


「大丈夫。これは10竜貨。できれば、少し休んでね。」


木こりは10竜貨を見つめ、これほど高価な宝を初めて見たかのように目を見張る。


「勇者さま、どうか老夫と契約を交わしてくだされ。お礼をさせてください。」

そう言って、再びまこの手を取った。


「おい、いい加減にしろ。」

パシュスは不機嫌に、木こりの手を払いのける。


「ふふ。NPCに嫉妬?」

むぐち やよいの一言が冷たい矢のように刺さり、パシュスは一瞬で顔を赤らめた。


「契約?」

まこは首をかしげる。


「ええ。恩返しをさせてください。」


まこは迷い、むぐち やよいを見る。視線で意見を求めた。


「隠しクエストかもしれない。」

むぐち やよいが言う。


「わかった。どうすればいいの?」

まこは笑って答えた。


木こりは小刀で指先を少し切り、親指を差し出す。

まこも同じように血をにじませ、二人の親指が触れ合った。


パシュスは横で、悔しそうに目を赤くする。

──だが、何も起こらなかった。


「ありがとうございます、勇者さま。老夫は急ぎますので、これで失礼します。」

木こりは笑い、薪を担いで立ち去った。


「大丈夫、まこ?」

パシュスが心配そうに尋ねる。


「何も感じないね。」

まこは親指を見つめたが、変化はなかった。


「今日はもう十分だ。先にログアウトする。ありがとう、まこ。」

むぐち やよいは微笑み、手を差し出す。


まこはそのまま抱きついた。

隣には、嫉妬に満ちた視線が残された。

……



まこはやっぱり、NPC攻略の天才だね。

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