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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第十章―赤ネーム
36/111

35 「もう、逃げない!!!」

ドボン!


我に返ると、まこはすでに水の中に立っていた。


むぐち やよいは白樹の根元にもたれ、深手を負っている。腰と背中に裂傷があり、血が周囲の湖水を赤く染めていた。


「むぐちお姉ちゃん! どうしたの?!」まこは慌ててしゃがみ込む。


「気をつけ……」

むぐちは手を上げ、前方を指さした。


浪人の男と魔導士の女が水の中に立っている。男は大斧、女は長い魔杖を構えていた。

さっきの宿にいたプレイヤーだ!


だが二人とも殺戮状態には入っておらず、装備も平常のままだ。


「え? なにが起きてるの?! まこ、わからないよ……」

まこは慌てて左右を見回す。


「城戦でPK解放して、ノクスを殺した……。システムに私が犯人だって判定された。PVP解放後は……パーティー外の人全員に、私が赤ネームで見える。奇襲されてから気づいた……。油断した……」

むぐちは痛みに顔を歪め、傷口を押さえた。


「おい、下がれ。お前に危害は加えないが、赤ネーム狩りの邪魔はするな。」

浪人の男が大斧でまこを指す。


「待って! むぐちお姉ちゃんには理由があるの!」

まこは必死に訴えた。


「私たちを馬鹿にしてるの?」

魔導士の女が苛立って言う。


「むぐちお姉ちゃんは城戦で反乱軍を止めるために、城主を倒したの!」

まこは声を張り上げた。


「なあ、聞いたか?」

魔導士の女が嘲るように浪人へ振り向く。


「聞いた聞いた。反乱軍を止めるために城主を殺した、だってさ。ははっ。城主様~、護衛はどこだ?」

浪人の男が一歩前に出る。


「その……すぐには説明できなくて……。お願い、やめて……」

まこは声を落とし、涙をこぼした。


「やめろ? 赤ネームは殺人犯だ。俺たちは正義を執行してる。それに~、金も持ってそうだ。装備も経験値も、相当だろ。」

浪人の男は唇を舐めた。


「やだ……」

まこは水の中にへたり込む。


「逃げて……。まだPK解放する気がないうちに。あなたは赤ネームじゃない、傷つかない……」

むぐちは必死に刀を支えに立ち上がる。


「まだヒーロー気取り? フレンド転送の表示、残りHP二〇%だ。楽にしてやるよ!」

魔導士の女が高笑いし、魔杖を掲げた。


「溶岩術!」

赤く灯り、溶岩を滴らせる火球がむぐちへと撃ち出される。


まこは呆然とむぐちを見つめ、脳裏にかなの顔がよぎった……。


「聞いて……私のIDはmu――」

言い終える前に、火球が目前に迫る。


ドン!

爆ぜた火球が黒煙を巻き上げた。


「ふん、カッコつけ。」

魔導士の女と浪人の男が歩み寄る。


黒衣の人物が、むぐちの前に立って火球を受け止めていた。


「もう、逃げない!!!」


まこはPK解放を決意し、目を見開く。魔狼の瞳も赤く輝いた。


「愚かな選択だ。」

浪人の男が大斧を担ぐ。


「私……もうHPがない。このままだと、あなたも逃げ切れない……」

むぐちはよろめきながら立つ。


「それでも……最後になっても。友だちを守る!」

まこは震える両手を握り、叫んだ。


戦うのは怖い。

でも、友だちが光の塵になるのを見る方が、もっと怖かった。


強い意志が、恐怖を押し伏せる。


「ふん。二人で一人分だ。来い。」

浪人の男が大斧を回して肩を慣らす。


「魔力共鳴!」

まこは召喚杖を掲げ、声を張り上げた。


身体に赤い紋様が浮かび、魔狼の毛並みの奥から青い光が滲む。低い唸り声が響いた。


浪人の男と魔導士の女は、わずかにためらう。召喚師と戦うのは、初めてだった。


まこは二人を睨みつける。頭の中は混乱し、戦術など浮かばない。


「なら、望み通りだ!」

二人は同時に攻めに出た。


まこは魔狼を前に出す。

数度の跳躍で敵前へ躍り出ると、まず魔導士の火球をかわし、続けて浪人の斧撃を躱す。二人の間を縫うように走り回り、一瞬で注意を引きつけた。


「なんだこの犬は?!」

浪人は魔狼の動きが想像以上に素早いことに驚き、ほんの一瞬気を取られた。その隙に、魔狼が肩へ噛みつく。


「炎牙!」

まこが即座に指示を飛ばす。魔狼の口内が一瞬で灼熱の溶岩に満ち、浪人の肩を焼いた。


「ぐあああっ!!!! 誰か、早く引きはがせ!」

浪人は激痛に叫ぶ。


「氷晶嵐!」

魔導士の女は、味方ごと巻き込む形で範囲魔法を放ち、魔狼を強引に退かせた。


「戻って!」

まこが叫ぶと、魔狼は軽やかに跳び、すぐ傍へ戻る。


「私も……」

むぐち やよいは二刀の刀を握り、参戦しようとする。


「座って。私が守るから。」

水しぶきをまとったまこは微笑んだ。月光に照らされ、その姿は白い梨の花のように澄んでいた。


むぐちは、その背中を驚いたように見つめる。


浪人の右肩には無数の噛み跡が穿たれ、焼け焦げて血も流れていない。慌てて回復ポーションを一気に飲み干した。


「くそ……あの狼、やたらと厄介だな。」

傷口を押さえ、魔導士の女に吐き捨てる。


「一緒に召喚獣を落とす?」

魔導士の女が問う。


「いや、お前は――」

浪人は眉をひそめる。


「氷牢!」

まこが先手を取り、浪人の動きを凍らせようとする。同時に魔狼を突撃させた。


相手は間一髪で氷魔法をかわし、水中を二度転がる。魔狼が追いすがり、再び飛びかかって噛みついた。


「何を見てやがる、さっさと召喚使い本人を狙え!」

浪人は灼熱の牙を必死に押さえ込み、仲間へ怒鳴る。


「白の矢!」

魔導士の女はようやく我に返り、まこへ直接放つ。


「白の矢!」

まこも同じ術式を撃ち返した。


ドンッ!


二条の白光が正面衝突し、爆風が走って水面を大きくうねらせる!


「なっ……うあっ!」

魔導士の女は数メートル吹き飛ばされ、水飛沫を引いた。


「雷導術!」

まこは間髪入れず追撃する。紅い雷が天から落ち、魔導士の女を貫いた。


「ぎゃああっ!!!」

女と、近くにいた浪人が同時に落雷を受け、悲鳴を上げる。


どうやら水属性エリアでの雷属性攻撃には、環境による追加ダメージが乗るようだ。


「二次職を使え! あの犬、強化で魔法攻撃力が上がってる。動きが速すぎて捕まえられんし、火力も高い。放置できない、速攻で決めるぞ!」

浪人は大斧を振るい、なおも魔狼と斬り結ぶ。


「氷晶嵐!」

魔導士の女が叫び、無数の氷の刺がまこへ降り注ぐ。


「うわああっ!!!」

まこは回避せず、氷晶の雨を最後まで受け切った。胸元には氷刺が突き立ち、血が滲む。


「溶岩術!」

範囲技で動きを縛られたのを見て、魔導士の女は最大火力の単体火属性魔法を叩き込む。


灼熱の火球がまこへ一直線に飛ぶ。沸騰する表面が水面を蒸発させ、白い蒸気の尾を引いた。


「まこ、避けて!」

むぐちが叫ぶ。


「白の矢!」

まこは火球を睨み、弾き飛ばそうと放つ。


ドンッ!

溶岩が四散した。


【システムメッセージ: フレンド まこ HPが20%になりました】



「絶対に許さない!」

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