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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
一緒に魔王を討伐しよう!
29/63

28 後ろの正面



ノクスは彼女の大剣の前で、光塵となって消え去る。


「むぐち……まさか、あなたが?!」

ニフェトは信じられないという表情で叫んだ。


「私が城主になった方が、あの間抜けよりマシでしょ?」

むぐち やよいは大剣を構え、ルシュを指す。


ルシュの脳内に、雷が落ちた。

口を大きく開いたまま言葉を失い、

指が顔を引き裂きそうなほど震える。


「……くそおおおおお!!!!」

彼は崩れ落ち、膝をついた。


「ずっとカウントしてくれたおかげでね。

城主の残りHP、読めたわ」

むぐち やよいは冷たく笑う。


「き、貴様ぁぁぁ!!!

この下劣なクズ女がぁ!!

八つ裂きにしてやる!!!」

ルシュは毒液の瓶を丸ごと掴み、投げつけようとした。


「無駄よ。

城主が死ねば、戦争は即終了。

一日はPVP不可――のはず、でしょ?」


むぐち やよいは、ふと何かに気づき、

平静を装って続けた。


「……ああ、そうだ。

今ここで土下座して謝るなら、

助けてあげてもいいわよ?」


怒りに震えるルシュは唇を噛み締め、

血を滲ませる。


成功寸前の陰謀を、

無名の新人に奪われるなど、誰が予想しただろうか。


「聞こえた?! 土下座しろよ、クズ!!」

まつみが怒鳴りながら、六十人の黒衣へ歩み出る。


「パシュス! 引き戻して!!」

むぐち やよいが叫ぶ。


パシュスは即座に動き、

まつみを力任せに引き戻した。


「どうして?!

PVP不可の一日、使えばいいじゃん!」

まつみは不満げに叫ぶ。


「……システムメッセージが出てない」

むぐち やよいは必死に目を見開き、恐怖を隠した。


「え?」

まつみは眉をひそめる。


ニフェトは、その意味を悟った瞬間、

背筋に冷水を浴びせられたように凍りつく。


「城戦は、まだ終わっていない……。

今もPVPは有効。

本来なら、プラムス全域に通知が出るはず」

むぐち やよいは声を抑え、淡々と告げた。


「な……っ?!」

まつみが息を呑む。


ルシュもまた、異変を嗅ぎ取り、

次第に冷静さを取り戻していく。


「ノクス……死んだんだよな?」

まつみは、むぐち やよいの背に隠れる。


「……ええ。

つまり……彼は城主じゃなかった」

むぐち やよいは恐怖を押し殺し、説明した。


「ノクスが城主じゃない?!」

まつみが叫ぶ。


パシュスは反射的に、

まつみを突き飛ばして黙らせた。


「なに……?!」

ルシュは頭を掻きむしり、焦点の合わない目を彷徨わせる。


――ドォンッ!!!!!


大広間の高窓が、

巨大な何かに叩き破られた。


巨躯のグリフォンが、

大広間中央に浮かび、翼を広げる。


両翼はほぼ大広間を覆い尽くし、

激しい風圧が床の者たちを踏みとどまらせない。


「グ、グリフォン?!

三百レベル超えだぞ!?

城に飼えるはずが……!!」

黒衣たちが悲鳴を上げる。


「ルシュ……随分と、いい度胸だな」


グリフォンの背に、

一人の影が立っていた。


黒衣の群れが見上げた瞬間、 その姿を視認する前に―― 血のように濃い殺意が、 彼らの全身を貫いた。


「ありえない……どこから飛行マウントなんて……!

騎兵にも、魔獣使いにも、そんなのはいないだろ!!」


ルシュは床に崩れ落ち、悲鳴のように叫んだ。


ドン――!


グリフォンが翼を畳み、重く着地する。

床全体が揺れ、大広間に衝撃が走った。


白銀の鎧。

燃え盛る火羽。

紅晶の騎槍――

グリフォンの背に立つその姿を見て、

黒衣の者たちは凍りついた。


「……アンドリア?!」


アンドリアは高みから、虫けらを見るように黒衣たちを見下ろしていた。

「ルシュ。 説明が必要かしら?」

氷のような視線。

圧倒的な威圧感に、反乱者たちは息を詰まらせる。


「ち、違う! ノクスを殺したのは、あいつらだ!!」

ルシュは涙と鼻水を垂らしながら、むぐち やよいを指差した。


「一次転職が、三次転職を殺せるとでも?

聡明なあなたなら、もう少しマシな嘘を用意しなさい」

アンドリアは一切の情を見せずに言い放つ。


ルシュの額から、大粒の汗が滴り落ちる。

頭の中で、狂ったように計算が始まっていた。


「裏切り者。 まだ生きて帰れると思っているの?」

アンドリアは、グリフォンの背から、

地を這う蛆虫を裁く裁定者のように見下ろす。


「死ねぇぇぇ!!」

ルシュは、 青穴サソリの尾針毒が詰まった瓶を丸ごと投げつけた。

あまりにも速く、回避は不可能。


「アンドリア! 危ない!!」

ニフェトが叫ぶ。


毒液は、 アンドリアの銀鎧に、白い肌に、淡い桃色の髪に――

緑黒の液体となって降り注いだ。


ルシュは、勝利を確信したように目を見開く。

「やった……!」


だが――


「敵を絶望させる方法、教えてあげるわ」

アンドリアは指先で毒をすくい、 自ら口に運んだ。


凄まじい苦味と腐臭が、 口内のすべてを侵す。


彼女は一度、咳き込んだ――それだけ。


「それはね。力の差を、思い知らせることよ。

三次転職と四次転職――その現実をね。」

アンドリアは、獣のような笑みを浮かべた。


グリフォンが首を反らし、鋭く、長い咆哮を放つ。


「よ、四次転職……?!」ルシュの顔から、血の気が引いた。


「私こそが、銀龍の刻印のギルドマスター。

プラムスの城主。そして――隠された四次転職職、翼騎兵よ」


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