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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
一緒に魔王を討伐しよう!
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27 後ろの正面

むぐち やよいが、初めて明確な動揺を見せた。

両手が震え、打つ手が見つからない。


「最初から逃げろと言っただろう。

暗門の先は、我がギルドの倉庫だ。

戦闘中は開かない――だから、私はここを死守する」

ノクスは静かに言った。


……


「護衛もいないのか?

五人の新手だけとは、人手不足にも程がある。ははは」

ルシュは余裕たっぷりに前へ出る。


「シモンは?」

ノクスが冷静に問う。


「最後の瞬間まで戦って、逃げた。

気に入ったから、見逃してやった。

俺が城主になったら、きっと戻ってきて懇願するさ」

ルシュは愉快そうに笑う。


「悪役らしく、事情説明でもするか? 危険だぞ」

ノクスが皮肉を返す。


「北門は血の海。

東門は――我々が完全制圧。

アンドリアは激戦の真っ只中。

つまり、お前は孤立無援だ。理解したか?」

ルシュは高笑いした。


「私には、まだ五人の仲間がいる。

お前には、利で動く屑どもしかいない」

ノクスは冷たく言い放つ。


「ち、ちなみに俺は中立だからな!」

まつみが慌てて叫ぶ。


――バシッ!

パシュスが即座に頬を叩き、黙らせる。

五人は、無言でノクスの背後に並んだ。


「義理だの良心だの――弱者の妄想だ。

強者には、自然と従者が集まる。

お前は無能なくせに、アンドリアの背中に隠れて楽をしてきた。

大変だったろうな……ああ、後でじっくり“躾けて”やろう」

ルシュは舌なめずりし、下卑た笑みを浮かべた。


緑の閃光がルシュの眼前を走った。

刹那、彼は反射的に後方へ跳び退き、眉の端がわずかに削ぎ落とされる。


大広間に、半透明の鎌を携えた幽霊が七体現れた。


「……無駄口はやめろ」

ノクスは無表情のまま、眼窩骨から緑の火を噴き上げる骸骨杖を取り出した。


ルシュは血の滲む眉を押さえ、凶悪な眼差しを向ける。


「ルシュ命令だ! 城主の首を取れ!」

彼は大仰に指示を出すが、誰一人として動かない。


黒衣の者たちは初めて見る霊媒師の召喚物を前に、軽々しく踏み込めなかった。


「腰抜けども、行け!」

ルシュは三人の黒衣を前へ突き飛ばす。


「くそ……やるしかねえ!」

彼らは武器を抜き、幽霊の一体へと迫った。


だが、物理攻撃は一切通じない。

逆に幽霊の反撃は短時間の恐怖状態を引き起こし、

彼らは制御不能のまま逃走し、一人が大鎌で斬り倒された。


「魔法を使え!」

ルシュが怒鳴る。


「白の矢!」「炎龍吐息!」


白と紅の魔法が幽霊へ直撃し、わずかに後退させる。

その半透明の身体が炎に包まれた。


「効くのは魔法だ!

魔導士と神官、攻撃魔法を全部叩き込め!」

ルシュの号令で、二十名以上が詠唱を始める。


ノクスは骸骨杖で床に円陣を描き、強く突き立てた。


円形の大広間が、緑の光に呑み込まれる。


黒衣の者たちは一斉に後退し、光の中へ踏み込もうとしない。


「構うな! 幽霊を先に消せ!」

ルシュが叫び、数十の魔法が七体の幽霊へと降り注ぐ。


――パァン!

地面からせり上がった異形が魔法を遮り、眩い光が弾けた。


次の瞬間、大広間は骸骨で埋め尽くされる。

長槍、大剣……さまざまな冷兵器を携えた骸骨兵たちだ。


黒衣の集団は完全に動揺し、後ずさる。


「物理無効に魔法無効の召喚物か……

なるほど、霊媒師が城主になる価値は理解した。

だが、手品は見抜いたぞ!」

ルシュは最後方から叫ぶ。

「重装、前へ! 魔導士は幽霊に集中! 反撃だ!」


近接部隊は意を決して骸骨兵へ突撃し、

大広間は一気に刃と刃が交錯する修羅場と化した。


幽霊たちは前線へ引き寄せられ、

大鎌を振るって黒衣の群れを薙ぎ払う。


だが、広間はあまりにも狭い。

後方の遠距離部隊も安全圏を保てず、

鎌の一撃で重傷、あるいは即死する者が続出し、

各所から光塵が立ち昇り始めた。


「ふん!

召喚物で時間稼ぎとは、甘いな!

弓兵、ノクスを直接狙え!」


ルシュの判断は早かった。


大広間中央の魔物群を越え、

矢の雨がノクスとまつみたちへ降り注ぐ。


「き、来たぁ!!!」

まつみが悲鳴を上げる。


「回避するスペースがない!」

ニフェトが叫んだ。


カン、カン、カン、カン――

無数の矢が飛び交う。


むぐち やよいは大剣を旋回させ、

風を唸らせながら矢を弾き落とす。

パシュスは城主の前に立ち、盾を掲げた。


二人の身体に、なお数本の矢が突き刺さる。

HPが、一気に削り取られた。


ノクスの身体にも五本の矢が突き刺さっていた。

だが、その表情に苦痛はほとんど見られない。


「高位祈祷!」ニフェトが我に返り、戦闘に復帰する。


「雷導術!」まこが叫ぶ。


まつみも弓を引き、反撃に転じた。


「いいぞ!」

ノクスが低く喝を入れ、場の士気が一気に持ち直す。


「瘴気!」

ノクスは骸骨杖を掲げて叫ぶ。

幽霊たちの身体から、汚れた緑色の霧が噴き出した。


周囲の黒衣たちはそれを吸い込み、即座に目眩を起こす。

HPが、見る間に削れていく。


「聖火の環!」

神官たちは自分を中心に、青い炎の輪を展開し、瘴気を遮断した。


「血飲の宴……」

ノクスは歪んだ笑みを浮かべる。


今度は骸骨兵が赤い光を放った。

彼らは武器を捨て、黒衣の者たちへと飛びかかり、噛みつく。


無数の赤い線がノクスの身体へと繋がり、

HPが絶え間なく回復していく。


「バーサーカー! 出ろ!!!」

ルシュが怒鳴り散らす。


後方から、巨大な斧を携えた黒衣が三人飛び出した。

一振りごとに骸骨兵を粉砕し、山を割る勢いで前進する。


「魂の連結!」

ノクスは骸骨杖を地面に突き立て、両手で握りしめ、目を閉じた。


後方を彷徨っていた一体の幽霊の双眼に、緑の炎が宿る。

それは他の幽霊とは違い、鋭く俊敏に動き、

大鎌を舞わせて一人の狂戦士と互角に斬り結んだ。


大広間は、人と死霊の激突で埋め尽くされ、

しばらく勝敗は見えなかった。


ルシュは外套の下から、黴のように黒ずんだ毒液を取り出す。

矢に塗り込み、ノクスへと放った。


ノクスは冷静だった。

冷箭を警戒していた彼は、幽霊を操り、

飛来した矢を一刀で叩き落とす。


だが、ルシュは間髪入れず、二本目を放つ。


矢道は空中でわずかに逸れ、

ノクスは自分には当たらないと判断し、

そのまま狂戦士との戦闘に集中した。


「きゃあっ!」

背後で、まこが悲鳴を上げる。


毒を塗られた矢の真の狙いは、彼女だった。


「まこ!!!!」

パシュスが盾を投げ放つが、距離が遠すぎる。


「ぐっ――!」

ノクスは刹那、身体を捻り、まこの前に割り込んだ。


矢は、彼の身体を貫いた。


「ははははははははは!!

愚かなノクスよ!

新手一人のために、この身を差し出す価値があるのか?!

はははははは!!

仁者が王になれぬ理由だ! 本当に愚かだな!!」


ルシュは狂ったように笑い続ける。


「ぐ……っ……!」

ノクスは大量の黒い血を吐き、視界が揺らぐ。


「それはブルーホール・スコーピオンの尾針毒だ。

あいつはレベル三百。

大金を積んで、ほんの僅かしか手に入らなかった逸品だぞ。

骸骨の吸血程度じゃ助からん。

残り命は……せいぜい十秒だ。ははははは!」


ルシュの笑い声が、大広間に響く。


次の瞬間、骸骨兵と幽霊は同時に消失した。

術者の精神力と直結していたのだろう。


広間は一気に静まり返り、

彼らは再び黒衣の集団に包囲される。


「……行け……

窓を破って飛び降りろ……死にはしない……」


ノクスは、残る力を振り絞って言った。


「どうして……

まこは、ただの無関係な人なのに……」


まこは魔杖を強く握りしめ、

信じられないという表情で呟いた。


「君たちは無関係だ……。早く行け」

ノクスはふらつきながら、どうにか立ち上がった。


「ふふ……まだ戦うつもりか? やめておけ~。

HPはもう底だろ。アンドリアでも救えないさ!

ははははは! カウントダウンだ……三、二、一!」


ルシュは胸を張り、狂ったように笑い上げた。


――ザンッ!


その瞬間、

大広間にいた全プレイヤーの心臓が止まったかのように、

世界が凍りつく。


塵が床に落ちる音すら、聞こえそうな静寂。


「……あれ?…………は……はは……」

ノクスは視線を落とし、やがて静かに微笑んだ。

「……面白い」


黒衣。

紅鉄の大剣。


むぐち やよいが、 最後の一秒で――PK制限を解除、城主を斬り殺した!


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