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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
一緒に魔王を討伐しよう!
27/58

26 後ろの正面



シモンの脳内は完全にショートしていた。

思考は破片のように散らばり、もはや整理も統合もできない。


「やはりアンドリアは、西門へ一直線だったか。まったく、単細胞な生き物だ」

黒衣の男がフードを外す。その正体は、黒の騎士団ギルドマスター――ルシュだった。


「は、反……反乱だ!」

一部のプレイヤーが悲鳴を上げ、我先にと逃げ出す。


「下賤な庶民、愚かな将軍、無能な城主。そんな連中で大業が成せると思うか?

このゲームを救うのは――俺だ! はははははははは!」

ルシュは腹の底から哄笑した。


「今日の布陣……まさか、お前の――?」

シモンは、すべてを悟る。


「他のギルドに戦わせて、自分たちは力を温存する。常識だろう?

教えてやる。今日、西門を守るギルドが疲弊していると敵に流したのは俺だ。

軽音部はすでに東門で全滅。

北門は敵主力に張り付かれている。

残る南門の精霊ねこ屋は二十人――戦力にもならん」

ルシュの歪んだ笑みが、目元まで吊り上がる。


「要するに……お前たちに、もう援軍はない」


「まつみ班、合図があったら即座に尖塔へ走れ。城主に警告だ」

シモンは身を低くし、まつみに耳打ちする。


まつみは胸の奥がざわつき、返事ができない。

まこは完全に思考停止し、虚ろな目をしていた。


「……行ける」

むぐち やよいとパシュスが、同時に武器を抜く。


「神閃!」

「天使護甲!」

ニフェトも覚悟を決めた。


……


「ははっ、シモン。お前の周りにいるのは、一次転職と二次転職の新米が三十人ほど。

それで、どうやって俺たちを止める?」

ルシュは腕を組み、余裕たっぷりに言う。

「経験は認めてやる。どうだ、俺の側に来ないか?

もっと高い場所を約束しよう」


「妹に執着する変態と組む趣味はない!」

シモンは即座に吐き捨てた。


「……何だと?」

ルシュの顔が、怒りで歪む。


「行けぇっ!!!」

シモンは空へ紫の球体を十個投げ上げ、弓で撃ち抜いた。


空中で破裂した球体から、濃密な毒霧が広がり、反乱軍の視界を覆い尽くす。


まつみたちは、全力で尖塔へと駆け出した。


だが毒霧は、魔導士の技能によって瞬時に吹き飛ばされる。


「覚悟は決まったようだな。ならば――望み通り、葬ってやる」

ルシュは武器を掲げた。

悪魔の短角弓。


「短弓……刺客系か。

だが三次転職済みの可能性が高い。毒剤師か?」

シモンは相手の底を必死に読み、時間を稼ぐ覚悟を固める。


……


パシュスが紅の大広間の扉を蹴り開ける。

まことニフェトは床に倒れ込み、荒い息をついていた。


大広間にいたのは、ノクスただ一人。

彼は猫型のペットと戯れており、五人が飛び込んできたのを見て一瞬驚いたが、すぐに立ち上がり、無表情に戻る。


「……何事だ」

ノクスは、相変わらず冷え切った声で言った。


「城主様!

黒の騎士団と夜勤O棟が反乱を起こしました!

シモンが一人で食い止めています。警告に来いと!」

パシュスが息を切らして報告する。


「……そうか。把握した」

ノクスは、まるで他人事のように答える。


「はあ!?

反乱軍はここへ向かっています! あなたを暗殺する気ですよ!」

パシュスは思わず声を荒げた。


「……理解している」


「もう我慢ならない!

城主なら、少しは本気を出してくださいよ!

あなたのせいで、どれだけの人が犠牲になったと思ってるんですか!」

まつみは、ついに堪えきれず怒鳴りつけた。


「他に用はあるか? ないなら...逃げろ」

ノクスは淡々と言った。


「このクソ野郎!

アンドリアが、お前のために血みどろで戦ってるのに、ここで猫と遊んでるだと?!」

まつみは拳を握り締め、胸が張り裂けそうなほど怒鳴る。


「……ふっ、はは……ははははははは!!!」

ノクスは何かに取り憑かれたように狂笑した。

腹を抱えて前屈みになり、目尻から涙をこぼしながら笑い続ける。

大広間はその笑い声を幾重にも反響させ、魔音のように魂を貫いた。


「ねえ……こいつ、頭おかしいんじゃない?

通報したほうがいいよ。ログアウト後に他人を傷つけかねない」

まつみは青ざめて言った。


「同意する」

ニフェトも眉をひそめ、ノクスを睨む。


「親切だな。だが――初心者は初心者だ。

ゲームオーバーになる前に、逃げておけ」

ノクスは笑みを消し、平静に戻った。


「じゃあ、報酬を出せ」

むぐち やよいは大剣を握りしめて言う。


「脅しか? ずいぶん力不足だな。一転の剣士。

それに――金も道具も渡せない。帰れ」

ノクスは歪んだ笑みを浮かべた。


「くそっ! 報酬まで嘘かよ?!」

パシュスが叫ぶ。


「来た……!」

まこは窓から目を離さず、声を震わせる。

塔の下から、黒衣のプレイヤーたちが次々と流れ込んできていた。


「仕方ない、行くぞ!」

むぐち やよいが暗門へ駆け寄り、力いっぱい押す。

――だが、開かない。


「どういうこと?!」

まつみが叫ぶ。


キン、キン、キン――


三本の投げナイフが闇から放たれ、

まつみ、まこ、ニフェトへと一直線に飛ぶ。

だが、空中で見えない何かに弾かれ、床に落ちた。


「こんばんは~、ノクス領主」

ルシュが、六十名の黒衣を引き連れて大広間へ踏み込む。


「……最悪。遅すぎた」

まつみは歯噛みする。



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