23 罠
*R18*に関わる内容は、別の場所で公開します。
近接職が、矢と魔法の嵐を突き抜け、濁流のように城壁へ殺到する。
攻撃側の魔導士が前進し、強力な術を放つが、
途中で城壁の狙撃手に撃ち抜かれ、次々と即死していく。
「黒雷!」「ブリザード!」「焔風!」
狭い城壁上で雷光と氷雪が乱舞し、狙撃手と弓兵が押し戻された。
突如、二つの銀色の渦が浮かび上がり、魔法を吸収して城外へ反射する。
「ミラーメイジに注意!」
直後、火の竜巻が発生し、攻撃側の戦士たちは散開した。
後方では、多数の神官と主教が仲間へ祝福と祈りを送り続ける。
「攻城塔を狙え! 撃て!」
北門防衛の火原トカゲの魔導士たちが一斉に黒雷を放ち、八条の雷撃が攻城塔を粉砕した。
木片の間から大量の光塵が立ち昇る。
だが、すべてを止めることはできない。
ついに一基の攻城塔が城壁へ到達した。
重い塔門が叩きつけられ、
大盾を構えた騎士たちが先陣を切って城壁へ躍り出て、守備兵を押し退ける。
「野牛轟撃!」
続いて、巨大な斧を振るうバーサーカーたちが狭い通路で範囲重撃を放ち、魔導士や弓兵が逃げ切れず、無残に吹き飛ばされた。
守備側の近接部隊が即座に反撃し、侵入者を押し返そうと殺到する。
ドン、ガン、バン――!
城壁上は刃と刃がぶつかり合い、戦吼が轟く死闘の渦と化した。
…………
「アンドリア様。東壁が大きく押されています。城壁の制御を失い始めました」
シモンは白目を剥き、鷹の視界を通して戦況を報告する。
「北門は?」
アンドリアが即座に問う。
「同盟軍が城壁上で接近戦中です。
火原トカゲは一度城壁を退いて隊形を再編。
精霊ねこ屋は前線が突破され、近接と遠距離が混在して乱戦状態。
純近接のガブリエル聖剣だけが、なお陣形を保って抗戦しています」
シモンは額に汗を浮かべ、細部まで見逃すまいと集中していた。
「西門に敵影は?」
アンドリアは白狐を歩かせながら問う。今すぐ前線へ出たい衝動を抑えきれない。
「ありません」
「よし。私が北門へ向かう」
アンドリアの瞳に、鋼のような決意が宿る。
「待ってください、アンドリア様!
東門は我がギルドが城壁から追い落とされかけています。このままでは失陥も時間の問題です。
それに、あなたが軽々しく出陣すべきではありません。西門の同盟軍を回して防衛すべきです!」
シモンは鷹の視界を切り、必死に進言した。
「我がギルドの平均レベルは低い。東門はいずれ落ちる。
だが、西門には必ず伏兵がいる。軽率には動けない。
局面を打開できる唯一の機会は北門だ。シモン、東門の支援は任せた」
アンドリアは決意を固め、背後の騎兵団へと向き直った。
「三次転職の誇りを見せる時だ! 私を失望させるな、我が騎士団!」
白狐の背で紅晶の騎槍を掲げ、アンドリアは高らかに叫ぶ。
騎士団が腕を振り上げ、熱を帯びた咆哮で応えた。
「出陣!」
アンドリアの号令とともに、十数騎が昂然と駆け出し、土煙を上げて去っていく。
「そろそろ、私たちの出番かな?」
待ちきれない様子で、まつみが言った。
「俺も存在感、稼いどきたいんだけどな……」
パシュスは気まずそうに笑う。
「大人しく待ちな。外は、私たちが手を出せる戦場じゃない」
むぐち やよいは大剣を枕に、のんびりと言った。
……
「尖陣!」
狐騎兵たちが三角錐の陣形を組む。
先頭にはアンドリア。白銀の外套が翻り、耳元の火羽が焔の軌跡を引いた。
騎兵陣は雷鳴の勢いで城門へ突進する。
狐たちは牙を剥き、白い刃を覗かせた。
「狂熱!」「二倍動能!」
騎兵団の咆哮とともに、全身が眩い金光に包まれる。
「アンドリアが出陣する! 城門を開けろ!」
ガブリエル聖剣の団員が即座に機構を回し、重厚な門が開かれた。
「ア……アンドリアの狐騎兵だ!」
無防備だった敵陣に、動揺が走る。
「殺せえええええ!!!」
アンドリアは紅晶槍を突き出し、城門を飛び出した。
……
「第一、第二班は補給品を持って東門へ!」
シモンは戦場を監視しながら指示を飛ばす。
まつみは鳥肌を立て、腹を抱えてしゃがみ込んだ。
「お腹……ちょっと、具合悪いかも……」
「俺たちじゃないからな……バカ」
パシュスはまつみの頭を叩いたが、自分も冷や汗をかいていた。
西から、軽音部のギルド員が三十名以上駆け込んでくる。
「戦況はどうだ?」
軽音部の隊長が問いかけた。
「なぜ持ち場を離れた! すぐ戻れ!」
シモンは即座に怒鳴り声を上げる。
「こちらはハンター視野で確認した。東門が崩れかけている。
西門のギルドで協議し、三十名を回した。百人以上は残してある、問題ない」
隊長は冷静に言った。
「関係ない! 戻れ!」
シモンは鷹の視界を切り、隊長に食ってかかる。
「私は会長と城主の命令しか聞かない。悪いな」
隊長は冷ややかに言い残し、部下を率いて東門へ走り去った。
「……勝手な連中だ」
シモンは舌打ちし、再び鷹の視界へ戻った。
……
狐騎兵は赤い矢のごとく敵陣へ深く突き刺さり、その騎獣の周囲には厚い光塵が飛沫のように巻き上がる。彼らは城外の敵陣を縦横無尽に駆け巡り、幾度も突撃を繰り返した。
「アンドリアに応えろ! 敵を城壁から叩き落とせ!」
北門守備隊の士気が一気に高まり、侵入者を壁際まで押し返した。
城壁下の敵は遠距離や支援職が多く、
三次転職の重装騎兵の前では紙のように脆い。瞬く間に崩れ、屍が積み重なる。
城壁に取り付いた重装部隊も、遠距離支援を失って後退を余儀なくされた。
守軍は勢いに乗って侵入者を城壁から一掃し、そのまま猛虎のごとく城門を突破して、
アンドリアのもとへ雪崩れ込んだ。




