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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第三十七章—ロミオの宴
193/195

192 居場所なき祝祭

「黒真珠の魔女!?」

「まさか……生きてたのか!?」

「わざわざハゲグに来たのかよ!?」


地上のプレイヤーたちは一斉にざわめき、空気が一変する。


ディベルの短剣はその瞬間、ぴたりと止まった。


全身を震わせながら司令台を見上げる。スパイダークイーンの妖艶な背中が、かすかに見えた。


八本脚の装備を外したその姿――狂おしいほどに焦がれ続けた、あの柑柑だった。


彼はすぐにニフェトを放し、胸いっぱいに喜びを満たしながら、柑柑の背中へ甘い微笑みを向ける。


ニフェトは人形のように地面へ崩れ落ちた。意識は遠のき、自らを治療することも、助けを呼ぶこともできなかった。


【密信 琉璃:むぐち副長、スナイパーの準備は整いました——05分前】

琉璃は傍らの狙撃手に命じ、照準を柑柑の眉間へ合わせさせた。


むぐちは眉をひそめて思案する。数百もの思考が一瞬で駆け巡る。


そっと腕を引かれた。まこが首を振るのを見て、むぐちは深くため息をついた。


【優勝者、柑柑さん。何か一言ありますか?】GM03は柑柑にシステム発言権を与えた。柑柑は浮台の大きな岩の上に立ち、語り始める。


【みなさん、こんにちは……柑柑です……】柑柑はどもってしまう。自分が死神と踊っている最中だと分かっていた。Kanatheonが今すぐ自分を殺す理由など、いくらでもある。


それでも恐怖を押し殺す。命より大切な使命が、彼女を賭けへと駆り立てていた。


【投票してくださって、本当にありがとうございます。衣装も一生懸命準備しました。でも私は賞品が目的じゃありません。騒ぎを起こすためでもありません。……ただ、この公開発言の機会を使って、ギルドの生き残りを探したいんです。


……私のフレンドリストは削除されてしまって、みんなと連絡が取れません。聞こえていますか? 生きているなら、鐘楼で待っていてくれませんか? お願いです!! 生きているなら返事をしてください!!】


柑柑は突如取り乱し、声を張り上げて泣き叫んだ。


静寂……。


足元に広がる無数の人波は、まるで蟻の群れのように沈黙している。どうやら本当に、友は皆死んでしまったらしい。


焦燥に駆られた瞳が人海を必死にさまよう。たった一本の腕でも見逃すまいとするかのように。


――いない。誰一人、応えてくれない。


柑柑は嗚咽を漏らし、顔を覆って泣き崩れた。


地上のプレイヤーたちも同時にため息をつく。祝祭の空気は、彼女の痛ましい泣き声に押し流された。


【密信 むぐち やよい:好きにさせてあげて。——05分前】


「柑柑様! ライセです!!」群衆の中から絶叫が弾けた。魔獣使いが杖を掲げて叫ぶ。


柑柑ははっと顔を上げる。ライセは周囲のプレイヤーたちに高く持ち上げられていた。


歓喜に震えながら必死に手を振る柑柑。口元を押さえ、嬉しさのあまり涙をこぼす。


パチ……パチ……


むぐちが最初に微笑み、拍手を送った。


ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱち!!


瞬く間に会場は熱烈な拍手に包まれる。柑柑は驚いたように地上のむぐちと目を合わせ、涙を滝のように流した。


【素晴らしい! プレイヤー同士が友と再会できたことは、このパーティーにとっても大きな意味があります! 本日参加している皆さんに、追加で10竜貨を配布します!】GM03はすかさず場の空気を盛り上げた。


会場は一気に歓喜に包まれ、人々は手を振り上げて跳ね回る。


ディベルは顔を涙で濡らしながら、鐘楼へ向かおうと背を向けた。


岩から跳び降りた柑柑の顔には、久しく見ていなかった無邪気な笑顔が浮かんでいる。


その姿を見失いたくなくて、彼はもう半秒だけ振り返った。


――柑柑は、あろうことか荒道一狼の元へ飛びつき。


荒道一狼は蜘蛛装束の柑柑を抱き上げ、まるで姫を扱うかのように、空中で何度かくるりと回した。


柑柑は楽しそうに笑い、軽く唇を噛んで荒道一狼をからかう。そして二人は、そのまま唇を重ねた。


「…………………」


「わあ~!」

「ははははは! いいぞ!」

地上では再び、熱烈な拍手が巻き起こった。


「………」


【システムメッセージ:フレンド ニフェト HP残り20%】

【システムメッセージ:フレンド ニフェト HP残り0%】


「ニフェト!!!」群衆の中でKanatheonの幹部が蒼白になって叫ぶ。歓喜に沸く人波をかき分け、必死の形相でギルドホールへ駆け戻っていく。


「後は……このゲームを楽しんでくれ……柑柑」


ドサッ。


柑柑は下方のハゲグ塔から、ごくかすかな重い落下音を聞いた。なぜか自分にしか聞こえなかったような気がする。


不思議に思い、縁へ歩み寄って覗き込む。だが見えたのは、高塔の根元からゆっくりと漂い散っていく一団の光塵だけだった。


「そろそろパーティーも終わりだな~ニフェト。ずっと君を軽んじていた。でももう迷わない。」パシュウスは告白の言葉を練習しながら、ハゲグ塔の階段を上っていく。


「ニフェト、僕はずっと君をないがしろに……はあ、また違う……」どうやら相当苦戦しているようだ。


そしてついに、屋上へ足を踏み入れた。


ニフェトの冷え切った身体は、屋上の血だまりの中に横たわっていた。すでに息はなく、パシュウスの目の前でゆっくりと光塵へ変わり、風に散っていく…………


「……………」


「美しい結末は すぐそばに

まるで真実だと 信じていた

夢の続きを 追いかけて

こんなに近くに いたはずなのに

それでも まだ遠くて……」


【 BGM再生中: 『近くに』- Vocal by 松美】

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