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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
一緒に魔王を討伐しよう!
19/32

18 赤の大広間

*R18*に関わる内容は、別の場所で公開します。

# 第6.0章-赤の大広間


ニフェトが目を覚ますと、髪も服も乱れたパシュスが優しく抱きかかえ、顔についた埃をそっと拭ってくれていた。


思わず唇を軽く舐め、何か言いかける。

「回復術!」自分に治癒をかけると、すぐに立ち上がった。


「-_-」パシュスが顔文字を入力する。

「せめて一言くらい、礼を言えよ」


「ありがとう」ニフェトはパシュスを見て、柔らかく微笑んだ。


「経験カードも一枚あった」むぐち やよいは黒いカードを口に放り込み、噛み砕く。

全身が金色に輝き、レベルが一気に五つ跳ね上がった。


「二人はどうしたの?!」ニフェトは地面に倒れているまつみとまこに気づく。


「聖殿の頌歌!」反応なし。

「浄化術!」反応なし。


「心配いらない。ただの『過負荷』だ」むぐち やよいはそう言いながら、武器を手入れしていた。


「『過負荷』って?」ニフェトが尋ね、パシュスも怪訝そうにむぐち やよいを見る。


「『過負荷』はスタミナを消費して、身体能力の限界を超えるシステムだ。

強い『精神波動』に晒されたとき、低確率で発動する。たとえば、まこは君のために復讐しようとして『過負荷』に入った。雷導術が白雷じゃなく赤雷になり、威力と範囲が跳ね上がった代わりに、魔力と疲労値を一気に使い切った。

まつみは力と敏捷を大幅に引き上げた。その結果、二人ともスタミナを使い果たして昏倒した。早くても、目を覚ますまで三十分はかかる。ちなみに昏倒の影響は、現実の身体にも及ぶ」


「そんなの、強すぎないか? PvPが壊れるだろ」パシュスは先ほどの二人の戦いぶりを思い出しながら言った。


「違う。戦闘中の『過負荷』は、ほぼ自殺行為だ」むぐち やよいは淡々と否定する。

「消費されるスタミナは不安定で、いつ終わるか分からない。強化される能力や効果も制御不能だし、『仕様上の制限』は超えられない。アーチャーは魔法を使えないし、魔導士は未習得のスキルを使えない。

それに発動条件は『精神波動』だ。攻城戦では、多くが覚悟を決めて戦っているだけで、精神波動とは別物だから発動しない。二人が『過負荷』に入った理由は、ただ一つ……」


「理由って……?」ニフェトが促す。


「馬鹿だからだ。ゲームに、そこまで本気になってる」むぐち やよいは二人を見つめ、ほんの一瞬だけ優しい目をした。


「でも、そのほうが変化があって、面白いよな」パシュスは笑った。


「さあね。頭目もそろそろリポップだ。先に出るぞ」むぐち やよいが言う。


「魔力ポーションが切れてて、照明ができない」ニフェトはバッグを漁りながら言った。


「どうして照明が要る?」むぐち やよいが首をかしげる。


「まさか、暗闇のまま来たのか?!」パシュスが驚く。


「設定で『画面の明るさ』を上げればいいだろ」むぐち やよいは平然と答える。

「目は痛くなるけど、洞窟を出たら戻せばいい」


「………………」


「はぁ~、日光サイコ――目がぁぁぁ!!!」まつみは目を押さえて悲鳴を上げた。


「だから『画面の明るさ』は戻せって言ったでしょ」むぐち やよいが言う。


「まこ、悪夢見たみたい……蜘蛛だらけの悪夢……」まこは脚をきゅっと閉じた。


「そういえば、レア装備が出たぞ」パシュスがバッグから、淡く光る布袋を取り出した。


「みんなで開けよ!」まこが嬉しそうに言う。


革紐をほどき、パシュスが手を突っ込む。


「やわらかい。武器じゃないな」パシュスは笑った。


むぐち やよいは一瞬で興味を失った。


「防具かな?」まつみが聞く。


「てか、柔らかすぎない? しかもすげぇツルツル……」パシュスは口元を歪め、眉をつり上げた。


「パシュス早く! まこ待てない!」まこが興奮して言う。


パシュスは宝物を引き抜き、高く掲げた。


「衣装:

白い吊りストッキング――ゲーム内最高品質、最上級のなめらかさを誇るストッキング。

優れた伸縮性と通気性により――」

アイテム説明が続いている。


「こんなのゴミじゃん!!!」まつみが大激怒した。


「それ、最低でも竜貨五十はする」むぐち やよいが言った。


「はぁ?!」全員が仰天する。


「むぐちさん、一緒に冒険しない?」ニフェトが尋ねた。


「どうして?」


「ゲームはやっぱり、友達とやるもんだよ!」まこが笑って言う。


「友達……」むぐち やよいは少し迷った。


「そうだよ! うちのパーティー、美少女はいるけど、お姉さん枠がいないんだ!」まつみが真顔で言った。


「別にいい。ただし、二次転職したら抜ける」むぐち やよいはそう言って、加入を了承した。


「なんでだよ?!」パシュスが驚く。


「二次転職以降の世界は危険すぎる。仲間が原因で死ぬこともある」むぐち やよいは冷たく言い切った。


「その時はその時! ようこそ~、むぐち姉!」まつみがニヤリと笑った。


「で、次どこ行く?」パシュスは地図を開き、頭を抱える。


「補給と、装備の修理が必要だね」ニフェトが言った。


「まこ、120レベルまで上げてから帰りたい……ついでに転職も……」まこはしょんぼりする。


「転職任務は110レベルで受けられる。終われば120になる」むぐち やよいが補足した。


「まだ三十レベルくらい足りないのか……」パシュスが唸る。


「毒蛍の沼に行く?」むぐち やよいが提案する。

「数が多くて弱い。四時間で二十レベルくらい上がるし、ついでに白糸の女王ももう一回狩れる」


「もう一回?! まこ、それはちょっと……!」まこは顔を引きつらせた。


でも、仲間たちはまこを引っ張って進んでいく。


五人はチートみたいな勢いで蜘蛛の群れを瞬殺し、白糸の洞窟を抜けて毒蛍の沼へ辿り着いた。


沼は白い霧に包まれ、小さな光点がそこらじゅうに浮遊している。

枯れかけた背の高い草むらからは虫の鳴き声が響き、水面は鏡みたいに静まり返っていた。

この一帯は、まるで幻みたいに現実味がない。


「ここのマップ推奨は75レベル。でも雑魚は70前後だ。安心して狩れ」むぐち やよいが言った。


「むぐち、ほんとゲーム詳しいよな。まさか……」パシュスはそう言いながらパーティー欄を開き、むぐち やよいのレベルが自分と大して変わらないことを再確認した。


「クローズドβに参加してた。ただ家族と……旅行してて出遅れた。頭目以外の情報なら、だいたい知ってる」


その時、水面から肥えた茶色いカエルが飛び出した。

顎を膨らませた瞬間、電球みたいに黄色く光る。


「あー、黄灯蛙。これだ」むぐち やよいが黄灯蛙を指さした。


パシュスはむぐち やよいにもらった片手刀で黄灯蛙へ斬りかかるが、軽々とかわされる。

「ちょこまか逃げんな!!」


バンッ!

黄灯蛙はむぐち やよいに真っ二つにされ、全員の経験値が一気に伸びた。


「うわぁ……!!!」三人が次々と声を上げる。


「このカエル、経験値多すぎない?」ニフェトが驚いて言った。


「生け捕りのほうが使える」むぐち やよいは淡々と言う。


「どう使うんだ?」パシュスが聞く。


「お楽しみ」むぐち やよいは小さく笑った。

……


五人はエビや虫を斬りながら進み、二匹目の黄灯蛙を待った。


「お前もパシュスも剣士だろ? でもお前のほうがあのクズよりずっと強い!」まつみが突然言った。


「おい!」パシュスが怒鳴る。


「私は火力型。こいつはタンク型。ステ振りが違う」むぐち やよいが答えた。


「二次転職、何になるの?」ニフェトが尋ねる。


「浪人」


すると黄灯蛙が草むらに跳び上がり、鳴いた。

全員が反応する前に、むぐち やよいはもう生け捕りにしていた。


黄灯蛙はバスケットボールみたいにでかくて重い。

むぐち やよいは両手で持ち上げ、押さえ込む。


「尻を弾け」むぐち やよいが言い、黄灯蛙と力比べする。


パシュスはうんざりした顔でまつみを見る。


「俺様だって女の子だもん」まつみは指を噛み、甘えた声を出した。


「ふざけんな、恥知らずが!」パシュスが怒鳴った。


そして指先で、カエルの湿った尻を軽く弾く。


「ゲコッ!」黄灯蛙が叫んだ。


「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」


周囲の草むらから蛙の鳴き声が一斉に返り、五人を取り囲む。


薄暗い沼に、星みたいな紫色の光球が無数に灯った。


「それ持て! 弾き続けろ!」むぐち やよいは黄灯蛙をパシュスに放り投げ、赤鉄の大剣を抜いた。


パシュスがまつみに嫌な笑みを向けると、まつみは観念してカエルの尻を弾き始めた。


「ゲコッ!」紫の光球が跳ねるように襲いかかってくる。


むぐち やよいが大剣を横薙ぎに振り抜き、紫に光るカエルを十体以上まとめて叩き斬った。


「システムメッセージ: レベルアップ!」

「システムメッセージ: レベルアップ!」

「システムメッセージ: レベルアップ!」

「システムメッセージ: レベルアップ!」


「うわぁ!!!」

一斉に歓声が上がった。


「紫光は雄の蛙だ。黄灯の雌蛙の鳴き声と光に引き寄せられる。クローズドβで偶然見つけた。紫蛙は普段、水底に潜んでいるから、他のプレイヤーはこの狩場に気づかない」

むぐち やよいがさらに一閃振るうと、全員の経験値がまた50%跳ね上がった。


「ゲコ!ゲコ!ゲコ!ゲコ!ゲコ!ゲコ!ゲコ!ゲコ!」

黄灯蛙が突然、激しく鳴き始める。


「感じてきた? このスケベ蛙!」

まつみは指を素早く動かし、黄灯蛙の尻を弄った。


薄暗かった沼が、一面の紫色の光に染まる。

まるでナイトクラブのネオンみたいに、妖しく鮮やかだった。


「面白い」

むぐち やよいは軽く大剣を振り、蛙の血を払い落とす。


「くく……」

仲間たちの顔に、血に酔ったような歪んだ笑みが浮かんだ。


「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」

「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」

……


「システムメッセージ: おめでとうございます。レベル80に到達しました。報酬アイテム――護心石がバッグに転送されました」


「やった~! ついに来た!」

まつみは護心石を取り出し、嬉しそうに眺める。


まこは護心石を握り、中央の赤い宝珠を指でなぞりながら、何か考え込んでいた。


「戻る?」

ニフェトが尋ねる。


「…………」

一瞬、沈黙が落ちる。


「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」

「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」「ゲコ!」


「システムメッセージ: おめでとうございます。レベル110に到達しました。プラムス中央要塞で『ベイル男爵』の転職任務を受領してください」


こうして五人は、ようやく帰還の途についた。


農地を抜けると、遠方にプラムス中央要塞の高塔が再び姿を現す。

尖塔の黄金装飾が陽光を受け、まばゆく輝いていた。


その時、パシュスが突然腕を横に伸ばし、隊列を制止した。


「行こうぜ~! 俺様、二次転職だ!」

まつみが興奮して叫んだ瞬間――


パシュスは無言で彼女を草むらへ蹴り飛ばし、他の三人にも身を伏せるよう合図する。


城壁の外、大樹の下で、十数人の黒衣プレイヤーが休憩していた。


「厄介だな……」

むぐち やよいはそっと様子を窺い、眉をひそめた。

更新は基本【毎日1話】。


キャラクターや展開についてのご感想・ご意見があれば、気軽にコメントしてもらえると嬉しいです。

すべて目を通して、必ずお返事します。


一緒にテンポよく、魔王討伐まで突っ走りましょう :)

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