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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第三十六章—可愛い人
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186 牙――

「違う……むぐちお姉ちゃん……私たちはただ人を助けたいだけ……」胸を見えない刃で刺し貫かれたような苦しさに、まこは顔を上げることもできない。


「さよなら……まこ……」むぐちは突然、まこの喉元を強く掴み、そのまま持ち上げた。


まこは呻き声も出せない。締めつけは次第に強まり、口を大きく開けても声にならなかった。


むぐちは無表情のまま、紫に変わっていくその顔を見つめる……変わったのは自分なのか、それともまこなのか。


心は突然ぐちゃぐちゃに乱れた。まこの喉を締める手は、まるで自分の心臓を握り潰しているかのように苦しい。

「どうして……外の人間ばかり助けて、私を助けてくれないの……!?」


まこの両目に血の筋が浮かび上がり、丸太のような大剣を手放し、本能的にむぐちの腕を掴む。


風衝ふうしょう!!」荒道一狼が間一髪で駆けつけ、横合いから高速の拳を叩き込んだ。


本来はレックスと慎重に間合いを探りながら戦っていたが、むぐちの叫びを聞き、まこの危機を目にした瞬間、迷わず救援に飛び込んだのだ。


「むぐち!気をつけろ!!!」動けないレックスは叫ぶことしかできない。


まだ迷いを残していたむぐちは、ちょうど荒道一狼の姿を見た瞬間、すべてを悟った。まこを変えてしまったのは、この男だ――あの純粋で従順だったまこを……許せない。


絶対に……他の奴らには奪わせない……


【システムメッセージ: 隠し血魔四次転職 食師グルメ を解放】


バキィッ――

荒道一狼の拳がむぐちの身体を貫き、血飛沫がその場に散った。


「むぐちお姉ちゃん!!」まこは我を失い、慌てて荒道一狼を押しのける。


牙――


むぐちの口元から、突然何本もの鋭い牙が伸びていくのを見た瞬間、まこは恐怖で動けなくなった。

鋭い眼光を放ち、血の滴る口を大きく開いてまこへ噛みつく。


「うあああ!!!」まこの左腕が根元から噛み千切られ、地面に倒れて絶叫した。


むぐちの両眼は黒く染まり、全身から不吉な赤い血霧が噴き上がる。新たな状態が付与されていた――

【ステータス強奪:知力30 残り5分】


荒道一狼は危険を承知で教会へ突入し、柑柑とまこを救い出す決断をする。長く戦うつもりはない。


「魔鬼の触手!」超巨大な血管がちょうど彼の尻に吸いついた。


「うおっ、痛ぇ!」臀部に激痛が走り、全身から力が抜けていく。HPが一気に流出する。慌てて血管を引きちぎったが、すでにむぐちは目の前に迫っていた。


「ぐあっ!」左肩の肉を大きく喰らい取られる。


むぐちは頬の血を拭い、まったく表情を変えず、冷ややかな視線で二人を見下ろした。


「なあ……悪いが、お開きにさせてもらうぜ。いいよな?」荒道一狼は異様な気配を察し、撤退を決める。むぐちの戦い方は初見だ――どうやら彼女は……隠し四次転職だ。


「あなた……だけは……帰さない。他はもうどうでもいい。」全身に血霧をまとったむぐちは、荒道一狼を指差した。


「は? 俺?」


「まこを返してぇぇぇぇ!!」むぐちは慟哭した。


レックスは声を聞くと、思い切って家の外で足を止め、それ以上は近づこうとしなかった。


荒道一狼はむぐちの情緒が乱れた隙を突き、突然拳を放つ。だが次の瞬間、むぐちは片手でその拳を受け止めた!


「なにっ!?」荒道一狼は愕然とする。先ほど肩を噛まれた時、むぐちはすでに筋力30を奪っていたのだ。ステータスの譲渡で、二人の力の差は一気に60も縮まっていた。


むぐち やよいは荒道一狼を蹴り飛ばし、その勢いのまま柑柑とまこもまとめて大通りへ叩き出す。


重たい足取りと、さらに重たい心を引きずりながら、三人の方へ歩み寄る。


荒道一狼はまだ戦える。しかし不意の重撃で視界が揺れ、しばらく立ち上がれない。


むぐちは彼を踏みつけ、カタールを振り上げて止めを刺そうとする。


その時、まこが荒道一狼の前に立ちはだかった。


「……私があなたを殺さないと思う?」むぐちは無表情のまま問いかける。


「ごめんなさい……」まこは涙をこらえながら答えた。


むぐちは泣き笑いのような表情になり、ふと視線が自分の噛み千切ったまこの断腕に止まる。次の瞬間、嗚咽が漏れ、大粒の涙が地面を濡らした。

「どうして……」


「私たちはただ人を助けたいだけ……あなたを裏切るつもりなんてなかったよ、むぐちお姉ちゃん。」まこは強い眼差しで言う。


「彼女は私たちギルドの敵よ。Kanatheonなんて、あなたにはもうどうでもいいの?!」むぐちは激しく怒鳴った。


「責任は私たちが取る。絶対に!」まこの目が鋭く光り、迷いに沈んだむぐちの視線をまっすぐ射抜く。


「もう私たちのことなんて忘れたの!? あの荒道一狼って何よ!? 盾になる? 死ぬのよ!? 外の人間のために命を捨てるなんて……私たちの気持ちは考えたことある!? 私のこと……少しでも大事に思ったことあるの!?」むぐちはカタールをまこの眉間に突きつけた。


黒真珠の荒れ果てた大通りは、鳥の声すら消えたように静まり返る。世界そのものが止まったかのように、長い時間が流れた。


「……私たちは、ただ人を助けに来ただけ。」まこはもう一度言う。


むぐちは胸が引き裂かれそうな痛みに震えながら、カタールを振り上げる。


共に死線を越えてきた光景が、次々と脳裏をよぎる。高木湖での奇襲、ハググの龍亀――いつも命がけで自分を救ってくれたのは、まこだった。そして孤独に生きてきた自分を新しい輪の中へ引き入れ、初めての楽しさを教えてくれたのも、まこだった。


もしかすると……今のまこは……もう自分を必要としていないのかもしれない。


「……レックス、行こう。」むぐちはついにカタールを下ろし、背を向けた。


「むぐちお姉ちゃん……?」まこは震える声で呼ぶ。


むぐちは一瞬立ち止まり、数秒ためらった。そして振り返ることなく、レックスと共に夢の唇のギルドホールへと向かい、ニフェトと合流した。

……



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