17 ソックス! ソックス! ソックス!
*R18*に関わる内容は、別の場所で公開します。
その時、白い巨体の脚元から黒い影が一気に跳び上がり、頭部へと取りついた。
白糸母蛛は驚いて跳ね、口元の短い付属肢で影を払い落とそうとする。
ブチッ――!
二つの巨大な赤い眼が、引き抜かれた。
白糸母蛛は八脚を痙攣させ、狂ったように跳ね上がり、天井へ激突してから地面に叩きつけられる。
「ニフェトを……」
白糸母蛛の頭上で、まつみがゆっくりと立ち上がった。
その双眼は赤く光っている。
「返せ!」
先ほどとは比べものにならない俊敏さで、頭上を跳び回り、一時的に女王を抑え込んだ。
「まつみとまこ、どうなってる……?」
パシュスが呆然と問う。
「後で説明する。今は頭目だ」
むぐち やよいは即答した。
「簡単に言うな!」
パシュスが叫ぶ。
「どんな頭目にも弱点と『破壊ギミック』がある。
それがあるから、上級者なら低レベルでも単独討伐が可能になる」
むぐち やよいは説明を続ける。
白糸母蛛の巨脚が迫り、身を翻してかわすと、言葉を切らさず続けた。
「さっき、脚をすべて切断したことで第二形態に移行した。
まこと私の『連携』は派手だが、実際のダメージは高くない」
「まだ続くのか!? 時間がない!」
パシュスはニフェトに付与された「消化」状態の残り時間が、二分を切っているのを見て叫んだ。
「第二形態にも理論上は『破壊ギミック』がある。
足殻は硬すぎて斬れない。可能性があるのは『眼』か『脚部関節』だけだ。
まつみが眼を二つ潰した時に、畳みかけて脚を断てなかった。完全に出遅れている」
むぐち やよいは焦りを隠さず言った。
「残りの眼は五つだな」
パシュスが素早く数える。
ギィィ――!
白糸母蛛が悲鳴を上げる。まつみは突き刺さっていた短剣を引き抜き、間髪入れずに別の眼へ突き立てた。
母蛛の巨体が再び大きく痙攣し、八脚が狂ったように暴れる。
「行くぞ!」
むぐち やよいが跳躍し、大剣を担いで突進する。
「うおおっ!」
パシュスも盾を構えて跳ぼうとしたが、
――ずるっ。
わずか一歩分しか前に出られない。
「おい! 跳べない! ステータス全部スタミナに振ったんだぞ!」
パシュスは子どものように叫び、蜘蛛の巨脚を追って斬りかかるが、体毛にすら届かない。
「旋風斬!」
むぐち やよいは空中で身体を回転させ、独楽のように回りながら白糸母蛛の関節へ斬り込んだ。
ガキッ!
大剣は瓜を割るように容易く関節を断ち、巨大な脚が地面に落ちる。
勢いは止まらない。
回転のまま次の関節へ――。
ガキッ!
二本目の脚も一息で切断し、着地と同時に距離を取る。
白糸母蛛の身体は大きく左へ傾いた。
残った左前脚二本を必死に突っ張り、体勢を保つ。
断面からは排水口のように緑色の血が噴き出している。
まつみはなおも頭部に張り付き、左右へ飛び回る。
白糸母蛛はどうしても振り払えない。
怒り狂った白糸母蛛は、石壁へ向かって強引に突進した。
ドンッ!
岩が砕け散り、母蛛は眩暈を起こして地面に倒れる。
まつみは跳び退き、
むぐち やよいは間髪入れず、さらに二脚を斬り落とした。
激痛で覚醒した白糸母蛛は、地面を踏み鳴らしてむぐち やよいを吹き飛ばす。
「待ってくれ……」
パシュスがようやく辿り着いた時には、母蛛はすでに跳び退いていた。
白糸母蛛は自ら壁に頭を叩きつけ、四つの眼を潰す。
残るは、最後の一つ。
重傷で跳躍距離も落ち、攻めに転じるしかなくなった。
右前脚を大きく振り上げ、まつみへ突き刺す。
「力場、全開!」
まつみは手を突き出し、恐れず迎え撃とうとする――。
「注意: フレンド まつみ HPが20%になりました」
当然、ゲームに力場など存在しない。
次の瞬間、彼女は叩き飛ばされ、石壁に激突した。
「馬鹿! 中二病も場を選べ!……って、なんだ!?」
パシュスが怒鳴った瞬間、足裏が絡め取られる。
生き残っていた小蜘蛛たちが動き出し、糸を巻き付けてきた。
白糸母蛛の巨大な脚が、真上から叩き落とされる。
ニフェトの浄化がない。
パシュスは盾を構え、逃げられないまま、何度も杭打ちのような重撃を受け止める。
むぐち やよいは再び跳躍し、右前脚の関節へ旋斬を放つ。
だが白糸母蛛はそれを見切っていた。
脚を折り畳み、大剣を正面から受け止める。
キィンッ!
硬殻と大剣が擦れ合い、火花が散った。
「ふんっ!」
弾き飛ばされたむぐち やよいは地面へ跳び戻り、迫ってくる小蜘蛛を斬り伏せる。
「注意: フレンド ニフェト HPが20%になりました」
「急げ! 残り28秒だ!」
パシュスは白糸母蛛の猛攻を、必死に受け止め続けていた。
「斬れない……ずっと私を見ている!」
むぐち やよいは歯噛みする。
「考えろ! 俺にも遠距離攻撃はないんだ! うわっ!」
一瞬の隙を突かれ、パシュスの肩に蜘蛛脚が突き刺さる。
「注意: フレンド パシュス HPが20%になりました」
ヒュン――!
一本の矢が放たれ、白糸母蛛の最後の眼を正確に射抜いた。
「……最後の……一本……」
まつみは腕から力が抜け、長弓を取り落とし、そのまま地面に崩れ落ちた。
白糸母蛛が再び大きく痙攣し、硬直する。
「最後のチャンスだ!」
むぐち やよいが跳躍し、旋斬で白糸母蛛の左側最後の二脚を斬り落とす。
白糸母蛛は、ついに地面へ倒れ込んだ。
パシュスは盾を捨て、片手剣を握り締めて右脚の関節へ突進する。
一太刀、また一太刀。
緑色の血が飛び散るが、脚はまだ胴体と繋がっている。
「うおおおおお!!!」
パシュスは剣を真上から突き立て、体重を預け、関節をこじ開ける。
「残り17秒!!!」
最後の関節へ駆け寄り、同じように剣を突き刺す。
パキン――!
「システムメッセージ: 道具 水紋剣 耐久度が0%になりました」
水紋剣は関節に突き刺さったまま、無残に折れた。
「くそぉ!!!」
パシュスは全身を震わせ、素手で関節を引き裂こうとする。
ニフェトの残り時間は、あと4秒。
「どけぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
むぐち やよいは蜘蛛の背へ駆け上がり、大剣をそのまま関節へ投げ放った。
紅鉄の大剣が風を裂き、一閃。
関節は見事に断ち切られる。
その瞬間、視界を覆うほどのシステムメッセージが表示された。
「まさか……」
パシュスの胸が、嫌な予感に締め付けられる。
「システムメッセージ: 白糸の女王を討伐しました」
「システムメッセージ: 特殊撃破――獲得経験値+100%」
「システムメッセージ: 特殊撃破――ドロップ率+150%」
「システムメッセージ: レベル50デイリー任務『頭目討伐』(1/1)達成」
白糸母蛛は風船のように破裂し、巨大な光の粒子となって霧散した。
地面には倒れたニフェト。
その傍らから、橙色の光柱が天井へ突き抜ける――希少な頭目ドロップだ。
むぐち やよいとパシュスは、互いに顔を見合わせる。
「成功した……!」
更新は基本【毎日1話】。
さらに、
ブックマーク10増加ごとに1話追加、
感想10件ごとに1話追加します。
書き溜めは十分あります。
一緒にテンポよく、魔王討伐まで突っ走りましょう :)




