表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第三十五章—鏡幻の迷宮
179/195

178 「ゼロから牛乳を売る生活、想像したことある?」

教皇の宣戦からすでに四時間。ニフェトたちは依然として迷宮の中をさまよっていた。


迷宮は危険だらけで、少しでも気を抜けば罠が発動するか、待ち伏せを受ける。


刻一刻と時間が過ぎていく。焦りと不安が胸を締めつけ、迷宮はまるで蟻の巣のように無限に広がっているように感じられた。


目の前に現れたのは、またしても行き止まりだった。


「はぁ! また道を間違えた!」まつみは苛立ちを露わにし、すぐに踵を返す。


「同質消去。」かみこは鏡の盾を呼び出し、隣の壁面を爆ぜさせた。銀粉が床一面に散る。

「入口からすべての経路を記録している。曲がり角、死角、罠の位置――全部把握済み。さっきこの分岐を通った時、このレンガ壁は存在しなかった。明らかに幻術。」


まつみとニフェトは思わず顔を輝かせた。かみこの頼もしさは桁違いだった。


かみこは二人を導き、左右へと迷宮を縫うように進む。足取りは次第に速まり、曲がる時も迷いがない。まるでギルドの礎石の位置をすでに掴んでいるかのようだった。


「くそっ……なんでこんなに早く迷宮を突破されるのよ……」柑柑は曲がり角の影に身を潜め、神経質に指を噛んだ。


チン、チン、チン、チン、チン。暗い通路に突然、複数の小さな銀盾が浮かび上がる。


そのうちの一枚に、冷たい眼差しのかみこの瞳が映ったのを見て、柑柑は息を呑み、慌てて背を向けて逃げ出した。


「貫雷の槍。」旋回する雷槍が瞬時に飛来し、正確に柑柑を撃ち抜く。全身が痺れ、動けなくなる。


まつみは黒い縄で柑柑を高所から引きずり落とし、そのまま馬乗りになって短剣を振り上げた。だが、目の前の柑柑が必死に首を振り、命乞いする姿を見て手が止まる。


妖艶で人を惑わす魔女だったはずの彼女が、今はまるで近所の少女のように無垢な顔をしていた。一瞬、どうしても刃を下ろせなかった。


そのとき柑柑はゆっくり手を伸ばし、まつみの耳を引き寄せて囁く。

「私と合体しよ~」


次の瞬間、全身から紫光が噴き出し、四肢が蜘蛛のように絡みついてまつみを拘束した。


「神よ、あなたが私の最後の盾!」


ドンッ!!!


【システムメッセージ: フレンド まつみ HP残り 20%】

【システムメッセージ: フレンド まつみ HP残り 0%】


柑柑は激しく自爆し、半径二メートル以内のすべてを一瞬で粉砕した。だがニフェトが素早く反応し、まつみの命だけは救い出す。


死の淵から戻ったまつみは地面に座り込み、荒い息をつきながら背筋に冷たいものを感じた。目を細めたかみこがじっとこちらを見つめている。


【密信 パシュス:ニフェト無事か!?――05分前】

【密信 かな:あのバカ瞬殺されたの?!相手の職業は何?――05分前】

【密信 六口弥生:戦況は?――05分前】

【密信 真子:まつみ大丈夫?!――05分前】


数羽の小さな白い鳥が同時にニフェトの肩に止まり、戦況を問いかけた。


「火力が常識外れすぎる……」ニフェトは前方の瓦礫の山を見つめ、呆然と呟く。


爆心地には粉塵だけが残り、周囲の壁は黒く焦げ、ひび割れていた。


「鏡像師はレベルが上がるほど操れる鏡体の数が増える。上限はない。ただし破壊された鏡体は再構築に時間がかかる。戦闘中に壊された分はすぐ補充できない。分身を一つずつ潰せば、使える鏡体は減り続ける。最後は基本の鏡の盾すら出せなくなる。」かみこが淡々と説明する。


「でも、あなたも同質消去を使い続けて……」ニフェトは、かみこが自分の鏡体で柑柑の幻術を消していたことを思い出した。


「そう。残りは46.7%。」かみこは眉を寄せた。


「急いでギルドの礎石を見つけよう!」まつみが言う。


「未探索なのは、あの一帯だけ。」かみこは無言で右前方を指さした。


彼女たちはさらに二度角を曲がり、三枚の幻壁を消し去った末、円形の空き地へと足を踏み入れた。


ぴったりとした戦闘服をまとった柑柑が、円の中心で三人を待ち構えている。


「想像できる? この小さな地下室こそ、黒真珠の始まりの場所なのよ。」柑柑は懐かしそうに空間を見上げ、満足げに微笑んだ。


三人は気を緩めず周囲を観察する。円形空間の壁にはいくつもの窪みがあり、中はすべて空だった。


「悪いけど、もう投降を受け入れるつもりはないわ。」ニフェトは心を鬼にして言う。


柑柑は微笑み返し、その言葉をまるで気にも留めなかった。

「ただ運がよかっただけよ。小説の主人公みたいに、いい人やいい出来事にばかり出会って、苦労もせずに名声と成功を手に入れる。自分がすごいなんて勘違いしないで。」


「私たちの成功は簡単に手に入ったものじゃない。あなたみたいな詐欺まがいの人には分からないでしょうね。」ニフェトは悔しげに言い返す。


「ゼロから牛乳を売る生活、想像したことある? 夢の唇は最初ここでスタミナミルクとモンスター情報を売ってたの。毎日同じことの繰り返しで、心も体もボロボロ。でもね、不思議と楽しかった。だんだんここが“家”みたいに感じられて、ログインするたび現実の悩みを忘れられた。当時は一日一人あたりの利益が竜貨2枚だけ。装備を買うために全部貯金して、ポーションすら買えなかった。高レベルプレイヤーに襲われたら一瞬で全財産を失う。衛兵もいない、城壁もない、同盟もない。それでも黒真珠は少しずつ発展していった。」


「私の誕生日にディベルがくれたのは、特売のゴスロリ衣装。50竜貨よ。どれだけ高かったか分かる? 味気ない魔導士装備を脱いでそれを着た瞬間、他のプレイヤーが私に注目し始めた。友達を紹介してくれて、店は急に賑やかになった。日銭が一気に100竜貨まで跳ね上がった。あの時決めたの。どんな手を使ってでもギルドを強くするって。気づけば夢みたいに、黒真珠が出来上がっていた。私たちはほとんど経済戦であなたたちを追い詰めたのに……教皇が突然聖戦を仕掛けてきた。はは……」柑柑は小さく笑い、尽きない感慨をにじませる。


ニフェトは胸の奥でため息をつき、いつしか敵ながら同情を禁じ得なかった。


「黒雷。」複数の黒雷が突然、柑柑へと撃ち込まれる。


「鏡像反射!」柑柑は慌てて鏡体で身を包み込み、黒雷をすべて弾き返した。


「ちょっと、今しゃべってる最中でしょ!」彼女は激怒し、かみこを軽蔑の目で睨む。


「構わない。続けていい。貫雷の槍。」かみこは淡々と追撃する。


「森羅万象!!!」柑柑はついに己の武器――伝説の杖‧幻音ゲンオンを引き抜いた。


「無駄話はここまで……」

「自分の“家”くらい、ちゃんと守らせてもらうわ……」


同じ姿、同じ幻音を手にした柑柑が二十体以上、壁の窪みに並び、冷たい視線で三人を見下ろす。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ