14 ソックス! ソックス! ソックス!
*R18*に関わる内容は、別の場所で公開します。
幾度かの攻防の末、ついに蜘蛛の群れは退いた。
周囲には、無残に砕けた蜘蛛の死骸が散乱している。
「はぁ……」
パシュスは盾を落とし、大きく息を吐いた。
「矢、残り八本しかない」
まつみが言う。
「魔力ポーションはまだある。続行は可能だ」
ニフェトが答える。
「まこが攻撃魔法を防御に使ったのが大きかったな」
パシュスが言った。
「運が良かっただけ……。早く離れよう」
まこは不安そうに言う。
四人は暗闇の中、来た道を引き返した。
……
「えっ!?」
先頭を行くパシュスが叫ぶ。
「どうした!?」
まつみが問う。
「こ……これは……」
パシュスは愕然と前へ進み、行き止まりに突き当たった。
「別の岩の裂け目に入ってしまったみたい……」
ニフェトが不安げに言う。
四人はすぐに引き返し、今度はニフェトが先頭に立った。
「そんな……」
目の前には分岐路が現れ、左右どちらも果てしない深淵へと続いていた。
四人は分かれ道の前で、立ち尽くした。
...
「環境が暗すぎて、分岐を見落としてたのかもしれない……」ニフェトは唇を噛み、悔しそうに言った。
「二分の一だろ。適当に行こうぜ!」まつみは焦って言う。
「いや……もっと分岐があった可能性もある」
パシュスは険しい表情で言った。
「ど、どうしよう……?」
まこが不安げに声を震わせる。
「そうだ! 転送アイテムで城に戻ろう!」
ニフェトがひらめいた。
「システムメッセージ: 転送に失敗しました。ダンジョン、地下遺跡、洞窟、海底などのエリアでは転送機能を使用できません」
「ちっ……まつみ! どっちか選べ!」
パシュスが腹を括って言った。
「はぁ!? なんで俺様なの!?」
「バカは運がいいんだよ!」
パシュスは自信満々に言い切った。
「じゃ、右だ」
まつみは頬を膨らませた。
曲がりくねった通路を進み、途中で何度か蜘蛛の奇襲を撃退しながら――ついに、遠くに光が見えた。
駆け足で飛び出すと、そこは大きな円形の空洞だった。
天井の破れた穴から、陽光がまっすぐ差し込んでいる。
周囲の岩壁には骸骨が積もり、ところどころから緑色の汁が垂れていた。
「日光って……こんなに幸せだったのかよ!!!」
まつみは両腕を突き上げて叫んだ。
「やるじゃん……バカ!」
パシュスが笑う。
「でも、どうやって上に登るの?」
ニフェトは天井の穴を見上げた。
「ね、ねえ……あれ、誰……!?」
まこが反対側の暗い穴を指して、悲鳴混じりに叫ぶ。
白いボディスーツに身を包み、白手袋。
白い吊りストッキングをつけた、豊満な女が――ゆっくりとこちらへ歩いてきた。
白髪は羊角のようにまとめられ、赤い瞳が妖しく光っている。
その視線は、獲物を弄ぶみたいに甘く絡みついてきた。
「やべ……スタイル、反則だろ……」
パシュスは口に出さず、内心で浮かれた。
「ねえお姉さん! 迷ったの? 一緒に上行こうぜ!」
まつみは恥知らずに手を振って叫ぶ。
女は自信満々に微笑み、陽光の下で足を止めた。
「……待って。おかしい」
ニフェトが目を細め、警戒する。
「そりゃおかしいわ! あの体は反則だろ!」
パシュスはニヤつきながら、視線を隠そうともしない。
まつみは白いストッキングに引き寄せられるように、ふらふらと歩き出していた。
「まつみ! しっかりして!」
ニフェトは、まつみが『魅惑』状態に入っているのに気づく。
だが、まつみは聞こえていないみたいに足を止めない。
「氷牢!」
まこが女に向かって魔法を放つ。
「システムメッセージ: 無効な対象です」
「えっ!?」
まこが目を見開いた、その瞬間――
女の背中から、さらに六本の脚が伸びた。
一本一本の長い脚にも、白いストッキングがぴたりと張りついている。
「まさか――白糸の女王!?」
ニフェトが気づき、叫んだ。
「まつみって……やっぱりバカだな!!!」
パシュスは、まつみに道を任せたことを心底後悔した。
「脚がいっぱいだぁ……!」
まつみはよだれを垂らしながら美女の胸に飛び込む。美女は両腕を広げ、受け止めるように迎え入れた。
ドンッ!
だが次の瞬間、白糸の女王が背脚でまつみを蹴り飛ばし、壁まで叩きつけた。
「げほっ! なんで拒むんだよ美女ォ!?」
まつみは血を吐きながら叫ぶ。
「美脚は一組で十分だ! みんな、やるぞ!」
パシュスは目を燃やし、盾と剣を構えて白糸の女王へ突進した。
白糸の女王は豊かな唇を尖らせ、蜘蛛糸を噴き出す。
糸はパシュスの両脚に絡みつき、そのまま蹴り飛ばす気だ。
「浄化術!」
ニフェトの術で糸が消え、パシュスは再び動けるようになった。
すかさず剣を振るう。だが白糸の女王は背中の脚をしならせ、長剣と打ち合ってくる――光景があまりにも異様だった。
「雷導――んぐっ!」
まこが杖を上げ詠唱した瞬間、白糸の女王が蜘蛛糸を吐き、まこの口を塞ぐ。
「沈黙」状態になった。
「女王ッ! 俺様を撃ってくれぇ!」
まつみは涙目で白糸の女王へ駆け寄る。
「天使加護!」
「神速!」
ニフェトはパシュスへの強化に集中していた。
白糸の女王は身を翻し、パシュスを蹴り飛ばす。
そして大きく跳び上がり――ニフェトの真上へ落下し、容赦なく踏みつけた。
「まこ! 魔法、早く!」
パシュスは走りながら叫ぶ。
まこはようやく糸を引きちぎり、「沈黙」が解けた。
すぐに杖を構える。
「雷導――んぐっ!」
しかし白糸の女王がまた糸を吐き、今度も口を塞いだ。
「うおおっ!」
パシュスが盾撃で白糸の女王を押し退ける。
「女王~! なんで俺様にそんな冷たいんだよぉ!」
まつみが突然、白糸の女王の豊かな胴に抱きついた。
白糸の女王は全身の蜘蛛針毛を逆立て、まつみの体に無数の穴を開ける。
そしてさらに強烈な一撃で、まつみを遠くの壁まで蹴り飛ばした。
「注意: フレンド まつみ HPが20%になりました」
「石の裂け目がある! 先にそこへ逃げろ!」
ニフェトは腰の傷を押さえ、まつみの背後にある壁の隙間を指差した。
「よし!」
三人は一斉に、まつみの方へ走る。
白糸の女王が跳び上がり、真上から落下。
最後尾だったまこの後頭部を蹴り抜いた。
「ぐっ!」
まこは地面に叩きつけられ、両手は砕けた石で擦れて血だらけになる。
口はまだ糸で塞がれたままだった。
「まこ!!!」
パシュスは振り返り、盾を全力で投げつける。
頭目は背脚で盾を蹴り払うと、じりじりと距離を詰めてくる。
「高階祷文!」
ニフェトがまこへ術をかける。
緑色の呪文がまこの周囲を漂い、HPが持続回復する。
まこはすぐニフェトの元へ走って戻った。
「くそっ……!」
パシュスが前に出て頭目を止めるが、力の差は歴然だった。
顔は一瞬で腫れ上がり、豚みたいになりながらも必死に下がる。
ニフェトとまこは力を合わせ、まつみを裂け目へ引きずり込んだ。
パシュスも続いて滑り込む。
白糸の女王は裂け目の外で、にこりと笑う。
そして尻をゆっくり揺らしながら、暗い穴の中へ戻っていった。
...
更新は基本【毎日1話】。
さらに、
ブックマーク10増加ごとに1話追加、
感想10件ごとに1話追加します。
書き溜めは十分あります。
一緒にテンポよく、魔王討伐まで突っ走りましょう :)




