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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第三十一章—決戦の玉座
149/195

148 「我らこそが、最高種族だ!」

むぐちは胸が高鳴る。やはり何らかのギミックを発動させた。


舞台に突風が吹き荒れ、銀花が舞い上がる。下の者たちは悲鳴を上げ、むぐちの身を案じる。


だがむぐちの瞳に恐れはなく、むしろ確信に満ちていた。


ふわり。


舞台に銀鏡の円卓が現れ、上には銀花の茶壺と繊細な杯が二つ置かれる。


「座れ」蕾は自ら創り出した銀木の椅子へ、むぐちを招いた。


むぐちは動かない。これは試されているのか、測っているのかを見極めている。


連合軍の反応は分かれた。首を振る者、うなずく者。


蕾は優雅に腰を下ろし、長い脚を組む。傍らに銀の薄紗が揺れ、茶壺がひとりでに浮かび、淡い青の花茶を注いだ。


蕾は指先で杯を取り、ひと口含んで満足げに息を吐く。


「時間は刻まれている、挑戦者六口弥生」蕾は杯を置き、石像のように立つむぐちを見る。


むぐちは覚悟を決め、椅子に腰を下ろした。

「なぜハイエルフは敗れたか、ご存じですか?」


「まず、私が統べていたのはエルフ族全体だ。ハイエルフもダークエルフも含む。私はすべてのエルフ血脈の正統なる支配者であり、ダークエルフには自治権を与えていただけ。

後世が私をハイエルフの女皇と呼ぶのは誤りではないが、完全でもない。ダークエルフが皇族打倒に加担し、精霊評議会を樹立した時、初めてエルフ族は分裂した。

獣人の族長の騎兵を過小評価し、砂漠で敗れたことは認める。だが、それが外交の失策とは思わない」蕾は静かに過去を語る。


「違います。人間と虫族の反撃による大敗です。あなたは、自らの誤りを理解していますか?」むぐちはエルフ衰退の起点を突く。


「女皇たる私は内憂外患に同時に対処していた。グズ湿台もプラムスも守れなかったのは、私の過失ではない」蕾が反論する。


「そこが盲点です、女皇。あなたには外交経験が足りない。なぜなら、人間性を理解していないからです」むぐちは概念の爆弾を投げつけた。


ゴウッ。


「人間性……?」蕾は眉を寄せ、むぐちの言葉を反芻する。


「やはりね。かみこが言っていた通り、すべてのAIは人間性と自我の定義が曖昧。この二点を疑えば、必ず論理の破綻が出る」むぐちは内心でほくそ笑む。勝機は握った。青い花茶を一口含み、わざと答えず、得意げな笑みで蕾を見つめる。混乱させるためだ。


「外交が、どうやって私のムー大陸統一に寄与する?」蕾は素直に問い直す。


「虫族を打ち破り領土を奪った判断は正しかった。でも人間を破った後は、降伏を受け入れるべきでした。まずエルフは人口が少ない。他種族の労働力に依存せざるを得ない。つまり、あなたの王国には大陸統一を支える基盤がない。戦後、細く長い日常の支出が、少数種族には重くのしかかる。しかも信頼できる同盟もない。いずれ敗北は必至です。

逆に、最初から人間を取り込めば強力な盟友になった。停戦、人間の自治維持、双方向の通商――寛大な条件を提示すれば関係は築ける。ハイエルフは休養でき、統治の負担も減り、漁夫の利を得られた。

人間が急成長すれば重税で抑えればいい。同時に獣人を永遠の敵として温存し、人間と獣人を争わせる。ハイエルフは適切な時に介入するだけでいい。

易きに流れ、難きを避ける、安逸を求める――それが人間性の弱点です」


むぐちの言葉は機関銃のように蕾へ浴びせられる。


パチ、パチ、パチ、パチ。


蕾は拍手した。だがすぐに顎に手を添え、静かに見つめ返す。

「見事な策だ。しかし答えになっていない。外交がどうやって私をムー大陸の統一へ導く?」


「私は、エルフには統一の力がないと言いました。出生率を上げない限り無理です。二つの首都が限界。第三種族を取り込み、第四種族と対立させるのが上策。そうすればハイエルフの覇業は長く続きます!」むぐちは興奮して机を叩き、立ち上がって説明する。


「最善策であることは認めよう。確かに、その道ならエルフは一方の覇者になれた。だがムー大陸は荒れ果てている。ラロ神が創った資源は下等種族に乱用され、日に何万もの樹木が焼かれている。その悲鳴が聞こえるか?

貴族とは、凡人が負わぬ責任を背負う者だ。私はラロ神が創った最高種族の女王。その意思を執行する責務がある。ムー大陸を清め、澄んだ血脈を残さねばならない。挑戦者むぐち やよい、理解できるか? 為すべからざると知りつつ為す。それが皇族の天職であり、最高種族――エルフ族の天職だ」蕾は脚を組み替え、静かに言い放った。


蕾の返答は予想外だった。むぐちはまさか、蕾の設計思想がエルフの繁栄ではなく、使命遂行にあるとは思っていなかった。思考を読み違え、頭の中で用意していた台詞は一瞬で崩れ、思考が混乱する。


「でも、それでは多くのエルフが無駄死にするし、ラロの使命だって果たせないでしょう?」むぐちは焦りを滲ませ、形勢逆転を狙う。


「その通りだ。だからこそ出陣のたびに、この私――精霊白の女皇 蕾は先頭に立ち、他のエルフと共に死を覚悟する。それが真なる王の覚悟だ」蕾は淀みなく言い切る。


むぐち は逆に追い込まれた。今の台詞は明らかに事前に用意された誘導だ。完全にギミックの罠へ踏み込んでいる。


「ハイエルフが優秀だなんて思い込みよ! 虫族や人間の方が強いだけ。時間を与えればエルフなんて簡単に叩き潰される。“最高種族”なんて、あなたたちの傲慢よ!」むぐちは言葉に詰まり、論理から罵倒へと崩れ始める。


「魔王との最終決戦で、ラロ神と共に万軍へ突入したのはエルフだけだ。

我らは先陣を切り、九死に一生を得ながら、全身を傷だらけにして魔王軍と戦った。

他種族は後方で石を投げ、木剣を振っていただけ。

参戦した二千五百のエルフのうち、生還は三百に満たない。

他種族はどうだ? 犠牲は半分にも満たぬ。

魔王軍はムー大陸の連合軍より遥かに強大だった。だがエルフはこの地を守るため、命を捧げ、ラロ神に従い、魔王軍と最後まで戦い抜いた。

そしてラロ神は自らを犠牲にして魔王を退けた。ムー大陸は滅びを免れた。

だが我らが見たのは、他種族が資源を浪費し、己の勢力拡大に耽る姿だ。忍耐は尽きた。我らは神意を執行し、ムー大陸を清めると決めた。

それがエルフの物語だ。

我らこそが、最高種族だ!」


蕾は怒りを爆発させ、血の瞳から銀の涙を流す。


「で、でも……それは……」むぐちは頭の中で必死に言葉を探すが、声はまとまらない。


「去れ、敗者。もはや興味はない」蕾が立ち上がると、舞台の銀卓と椅子は同時に消え去った。


【システムメッセージ: 王権競技 参加済み 8/15】

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