146 蒼穹の決戦
ふわりと、アンドリアは火竜を召喚し、空へ舞い上がった。
「五倍速!」瞬時に自己強化を重ね、赤光をまとって王座上の蕾を見下ろす。
「飛ぶ誇りか。その自信、叩き折ってやろう。」蕾は冷たい視線で睨み返す。二人の女王の瞳がぶつかり、互いを容れない。
蕾の背後で銀花が噴き上がり、純白の翼が三対――六翼が展開する。
ラロ神に最も近い存在、万物の頂点に立つ六翼天使。
翼を得た蕾はさらに眩く、直視するだけで目が焼ける。
「炎塵!」アンドリアが橙色の光粒を撒き、六翼の反応を探る。
蕾は王座に立ったまま、動かず、軽蔑するようにそれを見下ろす。
炎塵が流星のごとく降り注ぎ、女皇の周囲で爆ぜた。
ドォン、ドォン、ドォン!
濃煙が立ち込め、下の者たちが背伸びして様子を窺う。
アンドリアは直撃を期待していない。ただ反応を見たかった――だが蕾の聖光は、王座からすでに消えていた。
こめかみに鋭い痛み。
右側から純白の閃光が走る。
火竜が即座に翼を畳み急降下し、蕾の巨剣がアンドリアの頭上をかすめた。
アンドリアは回避したと思った瞬間、蕾が光の羽を一枚放ったのを見た。
竜の背に立ったまま上体を大きく反らし、手綱を強く引いて火竜を急上昇させる。
だが火竜の反応はわずかに遅く、光羽が翼膜を貫き、白い光点を一つ残した。
【警告: 誘導中】
「なに?!」
蕾はアンドリアへ巨神剣を掲げ、周囲の光粒が刃先に集まり白い球を形成する。
「創世の暁光。」蕾は静かに告げた。
無音のまま、太い七色の極太光線がアンドリアへ直撃する。
「天虹衝撃!!」アンドリアは後方へスキルを放ち、空に一本の虹色の軌跡を描いた。
しかし光砲は追尾し――
ドォン。虹の終端で血飛沫が弾ける。
火竜は一撃で消滅し、光塵となって空へ散った。衝撃波で意識を飛ばされたアンドリアは、そのまま高空から落下する。
銀龍の刻印の者たちが着地点へ殺到する。
「**、****!」ノクスが必死に制止しようとする。
ボウッ。
「**!」
数人が足元の聖火の輪を忘れ、白炎に呑まれて転げ回った。
「痛っ……待て……なに?!」アンドリアは空中で意識を取り戻し、地面が猛烈な速度で迫るのを見た。
ふわっ――。
最後の瞬間、黒淵竜を召喚し、かろうじて落下を止める。
「正面から決着だ!」アンドリアは騎槍を掲げ、空中で冷然と見据える蕾へ突撃する。
キィン。
地上の者たちは、空に数百メートルの銀線が走るのを見た。それはアンドリアのいた位置を貫いた。
振り返ると、蕾はすでに遠方へ飛び、双頭巨剣が眩い銀光を放っている。
「くそ……私を侮るか?!」手綱を強く引き黒淵竜を旋回させようとした瞬間、違和感に気づく。前を見れば、黒淵竜の首はすでに斬り落とされ、光塵へ崩れ始めていた。
「くそくそくそくそくそくそ!」再び無重力となり、アンドリアは落下する。急いで騎獣リストを開き、最後の輸送用マウント――石竜を呼び出した。
その時、銀光が優雅に円を描き、上空から急降下する。
桃色の髪が風に揺れ、かすかに精霊の香りを感じた。
ゴキッ。石竜は首を断たれ、アンドリアを乗せたまま。
「うああ!!」アンドリアは空中で叫ぶ。着地点は聖火の上だった。
「******!!!」ノクスは覚悟を決めて聖火の輪へ踏み込み、白炎に包まれながら一歩ごとに全身を刺されるような激痛に耐える。
自らの痛みを無視し、落ちてくるアンドリアへ必死に歩を進める。
【システムメッセージ: フレンド ノクス HP残り20%】
「*…****…**…」しかし耐え切れず、聖火の中で倒れ伏した。
「うあああ!」
50メートル。
30メートル。
10メートル。
5メートル。
アンドリアは顔から落ちる。助からない。
ズキン。肋骨に激痛が走る。地面まであと一メートルで止まった。つま先が聖火に触れかける。
腰を強く引き上げられた。
見上げると、救ったのは精霊白の女皇・蕾だった。
「去れ、敗者。」蕾はアンドリアを安全に王座の台座へ戻し、視線を外す。
【システムメッセージ: 王権競技 参加済み 3/15】
アンドリアは言葉を失った。誇りだったドラゴン族の騎乗獣が、ものの数分で蕾に手際よく斬り刻まれたのだ。顔は死人のように青ざめ、うつむいたまま階段を下りていく。
「……どうやら蕾は、挑戦者を殺さないみたいだな」むぐちは目を細めて言った。
…
「名を名乗れ」蕾が問う。
「まこ」まこは唾を飲み、答えた。
「プレイヤー 真子。魔獣使い。
殺戮数:87人。
キャラ自己紹介:私たちは考えすぎて、感じることが少なすぎる。
生涯の51%をファッション収集に、21%をPVPに費やす。
所持称号:
【収集家】衣装三十セット所持。
【身を挺した守護者】第三者プレイヤーを守るため、PvPで過負荷。
あなたは、カジュアル型のプレイヤー。
汝、何をもって王となる?」
「分からない。ただ今は、誰かがあんたと戦って時間を稼ぐ必要がある。それだけ」まこは怯まずに答えた。
「命を賭して仲間のために時間を買うか。勇気ある勇者だ。王たる者には、犠牲の覚悟で臣民を導き、敵に抗う意志が要る――かつて私がエルフを率い、魔王討伐へ赴いたようにな」蕾はまこに告げた。
「挑戦を受け入れる」
【システムメッセージ: 蕾 挑戦を受理。制限時間20分】




