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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第三十章—聖白の女皇
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144 王権の威儀

蕾の魔眼が血色の月のように高みから射し込む。

「人界の者よ、何ゆえ我が皇宮へ踏み入った?」

静かな声が、直接耳元で響いた。


「…………」

誰も答えられない。


「繰り返さぬ。答えよ」

蕾が再び告げる。


突如、胸が締めつけられ、呼吸が苦しくなる。毎秒1%のHPが削られていく。


「王権の威儀……状態異常?」

ニフェトが新たなバフ表示を確認する。


「サヴァンスの死……貴様らが関与しているのか?」

再び問いが落ちる――HP減少は毎秒2%へ上昇。


胸が裂けるように痛み、全員が膝を折る。軍旗が傾いた。


「そうだ!」

アンドリアが叫ぶ。


その瞬間、圧迫感が霧のように消える。

「げほっ……!」


たった二問、十秒足らずで連合軍は翻弄された。正面衝突は危険だと全員が悟る。


「他の大天使長は?」

蕾は高台から絶対君臨の威圧を放つ。


再び王権の威儀が発動し、HPが削られる。


「全部倒した! お前が最後だ、覚悟しろ!」

アンドリアが苛立ち混じりに怒鳴る。


「……」

蕾は沈黙し、思案する。


「質問に答えるのがギミックだ。だがどうやって削る?」

むぐちは幹部と素早く相談する。


「突撃すればいい! あの高台から引きずり落とせば!」

アンドリアが拳を握る。


「だが相当強い。軽率は危険だ」

むぐちは制止する。


「このまま問答が続けば、いずれ答え損ねて全滅だろ!」

アンドリアが怒鳴る。


「貴様らはハイエルフを憎むか?」

蕾が顔を上げ、赤い瞳を細める。


「……選択肢イベントじゃない?」

ニフェトが息を呑む。


「適当に答えろ……胸が苦しい」

まつみは汗を流し、胸を押さえる。


「憎んでいない!」

むぐち やよいが高らかに答えた。


「ならば、我が民を殺したのは遊び半分のためか?」

蕾の怒気が爆ぜ、雷鳴が轟く。


【警告: 精霊白の女皇 ライ 激怒】


「うあぁ……」王権の威儀のダメージが、秒間5%まで跳ね上がった。


胸の奥が痛み、心臓の鼓動が乱れていく。

このままではショック寸前だった。


「違う!私たちはヴィニフ宮殿の鍵が欲しいだけだ!」むぐちは即座に正直に答え、全員が一斉に息をついた。


「大地聖歌!」

「慈悲の……」

司教団が朗々とスキル詠唱を始め、張りつめていた空気を無理やり崩そうとする。


「私は、あなたたちの発言を許可していない。」蕾は淡々と言った。


【システムメッセージ: 使用スキル 大地聖歌 失敗。理由:沈黙状態】


その瞬間、背筋が凍った。

スキルが使えない。


「広域沈黙……?!」むぐちは、蕾の力の底が見えず言葉を失う。


城主の玉座は目の前にある。

なのに、途方もなく遠かった。


「我が種を支配する鍵を求める者は、すなわち敵。私は王位を奪われた身であっても、なおエルフの正統なる血脈の継承者。ハイエルフ最後の尊厳、守らせてもらう。」


蕾はサヴァンスが残した神翼大剣を持ち上げた。


キィン――


神翼大剣が180度、ひらくように展開し、双頭の巨剣へと変わる。

刃には鮮やかな蒼の呪文が無数に浮かび上がった。


【システムメッセージ: エルフ白の女皇 ライ との敵対関係が確定しました】

【システムメッセージ: 沈黙状態 解除】


「大地聖歌!」

「聖炎術!」

「ラロの賛歌!」

司教団が即座に味方へ加護を積み直す。


誰も余計なことは言わない。

広場に残ったのは、重い呼吸音だけだった。


連合軍は命令を待つ。

短時間で女王を倒すため、命を賭けて突撃するつもりだった。


「王権競技。」蕾が小さく呟く。


五角形広場の外周が、純白の聖火で燃え上がった。


「私はかつて民を黄金の時代へ導いた。だが最後は、民に倒された。私が優れた王でなかったのかもしれない。ならば、私より強い者が挑め。公平な競技の機会を15回与える。全て失敗すれば――皆殺しだ。」蕾は双頭巨剣の切っ先を、地に群がる下々へ向けた。


Kanatheonの臆病な二人が、連合軍の最後列でうっかり境界の聖火を踏んだ。


ボウッ――二人は瞬く間に白い炎へ呑まれ、悲鳴を上げる。


【システムメッセージ: ギルドメンバー … HP残り20%】

【システムメッセージ: ギルドメンバー … HP残り20%】


HPは1%まで落ちたところで止まった。

だが聖火は、怨霊のように全身へまとわりついたままだ。司教たちも消せず、連合軍は二人が地面でのたうち回るのを見ているしかない。終わりのない火刑地獄がそこにあった。


聖火は空気の熱を吸い尽くし、気温が急降下する。

白い建築群と相まって、広場は真冬のように震える寒さになった。


連合軍は一斉に中央へ寄り、境界から距離を取って、蕾の中央高台の下に集結する。


時間が刻まれるほどに、聖火の輪が中心へ向けて狭まっていった。


「これが蕾のギミックだ……安全地帯がどんどん減る。つまり、制限時間内に蕾を倒せってことだ!」むぐちは、幾度もの大天使長戦で鍛えられた勘で即座に見抜いた。


「でも……誰が先に行く?」パシュスが重い問いを投げた。


広場は水を打ったように静まり返る。

誰も、確実に死ぬ実験台にはなりたくなかった。


「タリン、命令する。蕾を倒して。」ニフェトは迷いなく告げる。


「ニフェト様……武聖では女皇・蕾に勝てる保証はありません。さらに、その命は私の意志に反します。任務完了後、我らは即座に離脱します。それでもよろしいですか?」タリンは警告する。


「うん……お願い。」ニフェトは強い光を宿した瞳でうなずき、全軍の視線が武聖へ集まった。


「行くぞ。アンベナ、ヨングリエン。」タリンは二人と円陣を組み、低く詠唱する。


巨大な赤い光球が空中に出現し、黒穴のように武聖たちを吸い込んだ。


一瞬、静寂――


次の瞬間、上空に黒紅の巨大な悪鬼が現れ、言葉もなく蕾の背後へ唸りを上げる拳を振り抜いた。


ドン――だが拳は蕾の背後わずか手前で見えない力に止められる。

柔らかな緩衝材を叩いたような感触。力がまるで伝わらない。


「王を選ぶなら、正面から。」蕾は振り返りもせず、赤黒霊へ告げた。


赤黒霊はしばらく宙でぼんやり漂い、数秒後ようやく動き、ゆっくりと蕾の前へ回る。


「名を名乗れ。」蕾は血の瞳を細め、真正面から見据える。


赤黒霊は答えない。ただ黙って蕾を見つめるだけだった。


「早く答えろ、馬鹿! 死ぬぞ!」かなが叫ぶ。王権の威儀が赤黒霊のHPを削り続けている。


「なぜ攻撃しない?!」両ギルドの幹部が愕然とし、階段上の二体の怪物を見上げた。


「AIの欠陥。赤黒霊は三位一体の意識体。自己を定義できないため、名乗れない。」かみこが淡々と告げる。


「蕾の設計は単なる戦闘じゃない。王を選ぶ儀式だ。次代の王を選定するための競技。まだ戦闘フェーズに入っていない。だから赤黒霊はフリーズした……そうだろ、かみこ?」むぐちは大胆に推測する。


かみこは小さくうなずいた。


「じゃあ武聖たちは……」ニフェトが顔を上げる。


【システムメッセージ: 武聖 タリン 死亡。ユニット制御権喪失】

【システムメッセージ: 武聖 アンベナ 死亡。ユニット制御権喪失】

【システムメッセージ: 武聖 ヨングリエン 死亡。ユニット制御権喪失】


王権の威儀に焼かれ、赤黒霊はその場で黒煙となって消えた。


連合軍最強の兵器――武聖は、蕾に傷一つ与えられぬまま全滅した。


【システムメッセージ: 王権競技 挑戦回数消化 1/15】


「どうする?! 一騎打ちじゃ時間がかかる! 挑戦者の死を待つまでもなく、下の全員が聖火で1%まで削られる!」かなが焦り、迫る聖火を睨む。


「誰かが蕾に挑戦している間、聖火は収縮を止める。さっき確認した。挑戦者がいなければ、27分後に地表は完全に焼き尽くされる。」かみこが告げた。


ドン――混乱する群衆の中から熱風が弾ける。


「俺が行く。」レックスは「原罪」と「水銀月影」の二振りを携え、ゆっくりと階段を上る。

全身の筋肉が震え、口元に抑えきれない笑みが浮かぶ。 ついに見つけた。真正面から殴り合える、価値ある敵を。



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