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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第三十章—聖白の女皇
142/198

141 テイム失敗

「さあおいで、子どもたち。秘毒の花蕾」

ミミが蛇杖をくるりと回すと、草地から巨大な白い花が無数に芽吹いた。


花弁が一斉に開き、甘い香りが漂う。紫の霧が戦場を包み込み、手足がかゆみを帯び、舌がしびれはじめる――神経毒だ。


「聖火輪!」

司教たちが地面に蒼い炎の輪を展開し、仲間の解毒を図る。だが範囲は狭く、全員が押し合いへし合いで飛び込む。入れなかった者は、歯を食いしばって耐えるしかない。


「むぐち……攻撃する?!」

かなが焦った声で問う。これ以上ミミのダメージを強化させるわけにはいかない。


「する……でも一撃で仕留めるしかない」

むぐちは空中の大天使長を睨みつけるが、決定打が見えない。


泥濘、毒溜まり、爆発トラップ――足元のギミックだけでKanatheonは手一杯だ。反撃に割く余裕がない。


七武聖はサヴァンスと激しく斬り結び、地面から樹線を突き抜け、空へと戦場を移す。


「向心拳!」

三人の武聖が同時にサヴァンスの頭部へ重拳を叩き込む。


ドン。

サヴァンスは意識を失い、高空から落下、泥地へと深く沈んだ。


「サヴァンス! この卑劣な人間ども……」

ミミはすぐさま救援に向かおうとする。


「大天使長はすぐ湖面に戻る! 今のうちにミミを落とせ!」

むぐちは総攻撃を命じる。


「タリン! ミミを気絶させて、可能な限りダメージを与えて!」

ニフェトが叫ぶ。


タリンは一瞬だけ黙し、静かにうなずいて姿を消した。


ミミはサヴァンスの治療に集中し、自身の周囲に猛毒の花を咲かせてプレイヤーを寄せつけない。


その目前に、黒地に紅紋の魔法陣が浮かび上がる。


「魂祭魔法……まさか?!」

ミミの瞳が歓喜に揺れる。


黒原霊はすでに背後へ転移していた。巨大な拳が背中へ叩きつけられる。


バキッ!

ミミのHPは一瞬で黄色へ転落し、過剰ダメージにより初めて地に伏して昏倒した。


黒原霊は長い髪をつかみ、人形のように空へ放り投げる。さらに上空へ転移し、腕を膨張させて力を溜める。


「血祭の祖!!!」


ドォン!

渾身の一撃が、昏迷するミミを撃ち落とした。


流星のように地へ叩きつけられ、深い昏睡状態へ。ついに護盾が消失する。


「静電荷」「雷導術」「黒雷」「氷晶暴」「星火連焼」「溶岩術」「砕顱」「炎牙」「雷矛」


怒涛の魔法が重傷のミミへ集中砲火を浴びせる。


轟隆――!


【システムメッセージ: ミミ大天使長 重傷】


土塊が空へ舞い上がり、雨のようにローズ湖へ降り注ぎ、幾重もの波紋を広げた。


「忌々しい人間ども……」

サヴァンスは神翼の大剣を握りしめ、ゆっくりと立ち上がる。


黒原霊がKanatheon前方に姿を現す。サヴァンスと同等、いやそれ以上の巨躯。


「ミミを攻め続けろ! 黒原霊がサヴァンスを止めろ!!!」

むぐちは畳みかける。


【システムメッセージ: 武聖 ルカート 死亡。ユニット制御権喪失】

【システムメッセージ: 武聖 メイン 死亡。ユニット制御権喪失】

【システムメッセージ: 武聖 ライバルト 死亡。ユニット制御権喪失】

【システムメッセージ: 武聖 タリン 重傷】

【システムメッセージ: 武聖 アンベナ 重傷】

【システムメッセージ: 武聖 ヨングリエン 重傷】


黒原霊は風に溶けるように散り、地には三人の負傷した武聖だけが残された。


ニフェトはその場で凍りついた。

武聖に対し、必ずミミを自分の目の前へ叩き落とし、可能な限り深手を負わせるよう命じた。だがその命令を果たすため、武聖は三名を犠牲にした。


「暴虐の悪魔!」

サヴァンスの白金の鎧が赤く染まり、大剣を振り上げてミミの周囲にいるプレイヤーへ叩きつける。


ドォン……! ドォン……! ドォン……!


【システムメッセージ: ギルドメンバー … HP残り20%】

【システムメッセージ: ギルドメンバー … HP残り20%】


隊形など保っていられない。プレイヤーたちは我先にと散り散りに逃げ惑う。


赤く変貌したサヴァンスが剣を振るうたび、神翼が大きく展開し、攻撃範囲はさらに広がっていく。


「オォォォォ!!!」

血走った目で、地を這い逃げるプレイヤーを虫でも潰すかのように追い斬る。


武聖の足止めが消えた今、サヴァンスはまさに無人の野を行くがごとく蹂躙を始めた。


「慈悲の涙!」

ニフェトが神杖を掲げ、森へ聖水の雨を降らせ、仲間のHPを回復させる。


「アアアアアアア!!!」

天地を震わせる咆哮が響き渡る。


全員が足を止めた。


【システムメッセージ: ミミ大天使長 テイム失敗】

【システムメッセージ: ミミ大天使長 覚醒】


ミミの身体から不吉な紫黒の気配が噴き出し、ゆっくりと起き上がる。


「次に会う時が貴様らの最期だ!」

サヴァンスは顔面蒼白となり、翼を打ってヴィニフ宮殿へと退いた。


ミミはゆらりと宙へ浮かぶ。瞳は完全な漆黒へ染まり、輝いていた銀髪は黒紅へと変色していく。


「憐れまれるのは嫌い! 同情なんていらない! 治療なんて、いらないの!!」

両腕を震わせ、怒声を張り上げる。


蛇杖を逆手に持つと、それは生きた蛇へと変じ、自らの胸へ噛みつき、心臓を引きずり出した。


「何が引き金に?!」

かなが絶叫する。


「たぶん……私が、回復してしまった」

ニフェトの声が震える。


「なるほど……ずっと自傷を要求していた。逆に回復が本当のダメージ手段か!」

むぐちは目を見開く。


「人間の偽善なんて要らない! 女皇のように一撃で私を倒せない者なんて……慕わない! 一緒に滅びろ!」

ミミは心臓を握り潰した。


血色の骸骨が高速でニフェトへ迫る。そばにはまこ、そして一般メンバー二名。回避は不可能。


「受け取れ……無尽の怨念を!」

狂気の笑いが響く。


時間が凍りついた。


「天護の衝撃!」

パシュスが迷いなくまこの前へ飛び出す。


ニフェトはその背中を呆然と見つめる。まさか……まこを選ぶなんて。


「二倍速!!!!!」

別の巨大な黒影が横から割り込む。


ドン――


【システムメッセージ: ギルドメンバー …… HP残り0%】

【システムメッセージ: ギルドメンバー …… HP残り0%】

【注意: フレンド パシュス HPが20%になりました】

【注意: フレンド 真子 HPが20%になりました】

【注意: フレンド ニフェト HPが20%になりました】

【システムメッセージ: ギルドメンバー カンドウ HP残り20%】


「もっと……もっと……痛みを……女皇……どこに……いるの……」

濃い眠気に包まれ、ミミはかすかに微笑み、瞳を閉じる。身体は銀の花へと変わり、静かに消滅した。


【システムメッセージ: ミミ大天使長 死亡】



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