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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第三十章—聖白の女皇
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136 人間性

倒木が折れ、地が崩れ、戦闘で広範囲の樹木がなぎ倒されている。地面は深く抉られ、掘り返された柔らかな土が一面に広がっていた。


連合軍は戦場の中央に黙って座り込む。勝利の歓声はない。


先ほどのハイエルフ正規軍との初交戦では劣勢に立たされた。武聖が駆けつけなければ、結末は想像したくもない。


……


「まこ!? まこ、どこなの!?」パシュスは、まこが戻ったと聞いた途端、人混みの中で大声を上げる。


「…………」ニフェトは黙って顔を背け、どこか寂しげな表情を浮かべた。


むぐち はすぐにパシュスのマントを掴み、強引に引きずっていく。

「何を大声で騒いでるのよ。子供みたい……アンドリアと会議よ、来なさい」


「……………」人混みに紛れたまこは、その様子をただ見ていた。姿を現すことはない。


「ねえ、四次転職したの?」かなは鋭い視線でまこを見つけ、歩み寄る。


「してないよ……空羽谷で修行してただけ」まこは苦笑した。


かなはその笑みをじっと見つめ、しばらくしてから小さく息を吐く。

「その武器、どういうこと?」かなはまこの背にある霊木の大剣を見上げた。


「師匠が、複雑な魔法が苦手なら無理にやるなって。大剣と召喚獣で攻めたほうが直線的で強いって言われたの。守魂衛が聖杖を主武器にして、支援や回復で仲間を守るのと同じ理屈だよ」まこは笑いながら霊木の大剣を抜いて見せる。


「は……師匠?」


「荒道一狼……」まこは気まずそうに答えた。


「はあ!? あいつが修行とPvPを教えたの!? 理屈ばっかりで戦い方も邪道よ。あんたは私に習うべきでしょ!」かなは憤る。


「信念を捨てるなって教わった。それと……信念のために強くなれって」まこは静かに微笑み、握り締めた拳を見つめた。


かなは眉を吊り上げ、唇を尖らせる。

「ふん……信念に攻撃力があるの? ちゃんと魔法の連携を覚えなさいよ、バカ。もういいわ~」


かなの対人戦への闘志に火がついた。今すぐまこをボコボコにして、何が本物の王道か分からせてやりたい衝動に駆られる。

……


連合軍の幹部たちは丸い平石を囲み、進路を協議する。


「さっきの伏撃で十一人を失った。ほとんどは回復が間に合わなかった後衛職」アンドリアは、まだ白紙同然の幽語の森の地図を見つめる。


「AIが非常に高度。しかも大天使長が二人まだ出ていない。再び罠に嵌まれば、十一人では済まない」むぐち は役に立たない地図を置き、重く息を吐いた。


「武聖がいれば、ハイエルフが何人いようと問題ないでしょ? さっきので怖くなった?」アンドリアは挑発し、むぐち は不機嫌に睨み返す。


「近道か正規ルートか、決めよう。王都戦争の残り時間は少ない」ニフェトが議論を軌道に戻す。


「近道! 決まってる!」アンドリアは即答した。


「いいえ。正規ルートを進むべき。視界が開けているほうが戦闘に適している」むぐち やよいは口元に手を当て、俯きながら思案する。


「正規ルートで進軍なんて、自分から位置を晒すようなものじゃない!?」アンドリアは不満げに言い返す。


「違う。むぐちの言いたいのは、敵はすでに私たちの動向を把握しているということ。近道でも正規ルートでも隠密性はない。ならば戦いやすい進路を選ぶべき」ニフェトは重い口調で補足した。


アンドリアは理解したが、その消極的な推論を素直に受け入れられない。


「彼女たちを甘く見るべきじゃない。ハイエルフはこれまでのどの種族よりも組織的で戦略的。三流ギルドよりよほど強い」むぐち は、すでにエルフ軍をプレイヤーギルドと同等に見なしている。


「かみこは? リスク分析なら一番客観的でしょ」アンドリアはむぐちに知略で押されるのが悔しく、かみこに助けを求めた。


「タリンと一緒に捕らえたハイエルフの残兵を見張っている。情報を引き出そうとしてる」ニフェトは小さく笑う。

……


連合軍陣地の外縁、密林の中。衣服の破れた数名のハイエルフ女兵が木に縛り付けられている。


「ははっ、このハイエルフのデザインすごくない? 完璧な体に白い肌。現実じゃこんな美人いないだろ」二人の男性プレイヤーが捕虜の前に立ち、卑しい視線を向ける。


「触ってもいいのか?」一人が大胆に近づく。


「無理だよ。システムが成人向け要素を制限してる。重要部位に近づけば即削除、パチンってな」もう一人は指でハサミの真似をして笑った。


背後で枯れ枝が踏み折られる音がする。


かみことタリンが立っていた。無言で二人の行動を見つめている。


武聖の姿を見た男たちは顔色を変え、慌てて人混みの中へ逃げ戻った。


かみこは捕虜の破れた衣服に目を留め、眉をひそめた。バッグから不要な魔導ローブを取り出し、裂いて彼女たちに掛けた。


「…………」タリンはその一連の動作を静かに見守る。


「・ェッ」エルフの捕虜は目に感謝の色を浮かべ、小さくエルフ語を口にした。


かみこはタリンの視線に気づき、胸の奥に奇妙な感覚が芽生える――好奇心。


「タリン。私が捕虜に衣服を掛けた行為をどう解釈する?」かみこは淡々と問いかける。


「好感度を上げ、情報を引き出すための誘導。」


「違う。理由は共感。意味はわかる?」かみこは首を傾げた。


「相手の立場に立って考えること。」


「女性NPCは私の行動に反応する。でも男性NPCは反応が薄いみたい……」かみこは女捕虜と武聖の差異を観察する。


「………」タリンは沈黙する。


「人類の信仰では、最初の男女はアダムとイヴ。禁断の果実を口にしたことで人性を得て、羞恥を知り、葉で身体を隠した。私は、あのハイエルフの無力な姿に憐れみを覚えた。これは……人間性の発露だと思う?」かみこはタリンを真っ直ぐ見つめ、答えを待つ。彼は彼女がこれまで出会った中で最も複雑で精密なAIだった。


「理屈は通っている」タリンは簡潔に答えた。かみこは一瞬だけ落胆し、すぐに感情を平坦に戻して女ハイエルフを見つめる。


「私はハイエルフ語を理解できる。でも話せない。あなたは彼女たちとハイエルフ語で対話できる?」かみこは尋ねた。


「できない。あなたと同じく、聞き取れるが発話は不可。質問はできない」


「ならば捕虜の価値はない」かみこは女捕虜へ杖を構える。


ドン!


「ハイエルフ軍について、どこまで把握している?」かみこは地面に散った光塵を見下ろし、冷ややかに問う。


「ハイエルフは五つの軍団。五人の大天使長がそれぞれ率いる。現存はおそらく二名。大天使長は精霊評議会の命令のみで動く。大天使長が戦死または失踪すれば、軍団は消滅する。特に注意すべきはエルフの放浪者。いかなる権力にも属さず、幽語の森の各地に散在。以上は約百年前の編成。魔王軍へと下った後の動向は不明」タリンは最後の一点を強調した。

……


かみこは幹部会議に招かれ、エルフ軍の情報を共有する。


「賛成はしない。でも決定には従う」アンドリアは眉をひそめた。


「よし、正規ルートで急行。すぐ出発!」むぐちは喜色を隠せない。


アンドリアは去り際、むぐち の前に立つ。

「失望させないでよ、むぐち 」肩を軽く叩き、笑った。


「ほんと芝居がかったやつ」むぐち はニフェトと目を合わせ、苦笑する。


……

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