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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第二十九章—煉獄から蘇りし者
136/195

135 「ただいま」

白い魔導ローブの少女が、巨盾兵の陣へゆっくり歩いていく。


「まこ!……え、待って……違う……」ニフェトは雪霊ウサギが現れた瞬間、白の少女をまこだと思った。だが相手が背中から烈火の大剣を抜いたのを見て、息をのむ。

「魔導士が……大剣!?!?!?!?!?!」


巨盾兵が一斉に白の少女へ殺到する。


「幻蝶」白の少女が小さく告げた。

雪霊ウサギが巨盾兵の陣から消え、代わりに少女の傍らへ、桃色の透明な巨大な蝶が現れる。


「麻痺の鱗粉」少女は女エルフへ指を向けた。

桃色の蝶が羽ばたき、金粉を吹きつける。盾兵たちはたちまち全身がだるくなり、足取りがふらついて大盾を落とした。


白の少女は、その隙に突撃する!


バン! 無防備な巨盾兵が炎の大剣で斬られ、火花の中で倒れた。


やがて麻酔が切れ、女エルフたちは即座に大盾を拾い直して反撃に移る。


白の少女は大剣を横に構え、三枚の巨盾を受け止めた。太腿に力を込めてハイエルフと押し合うが、じわじわ押し負けていく。


「氷牢!」少女が突然叫ぶ。

炎の大剣が、冷たい霧を吐く玄氷の大剣へ変わり、三枚の巨盾を一気に凍りつかせた。


女ハイエルフたちが必死に盾を引き剥がそうとした瞬間、少女は大剣を横殴りに振り、体ごと氷漬けにする。


「火球!」玄氷の大剣は一瞬で炎の大剣へ戻った。

凍りついた箇所へ力任せに叩き斬り、女エルフ三人をその場で仕留めるする。


「四次職……でも、使ってるスキルが弱すぎない……?」ニフェトは大剣を振るう魔導士など見たことがなく、呆然と少女の戦いを見つめていた。


白の少女は背筋を正し、そっとフードを下ろして微笑む。

「ただいま」


【システムメッセージ: フレンド 真子 ログイン】


「まこ?」

「嘘だろ!?」

「本当に、あいつだ!!!」

エルフ盾陣と押し合っていたKanatheonの騎兵たちは、隙間越しに敵陣後方のまこを見つけ、叫び声を上げた。周囲の銀龍の刻印のメンバーも次々と顔を上げ、孤軍奮闘するその姿に目を奪われる。


「チャンスだ、行けええ!!!」

守りから一転、女エルフの盾陣へ長槍を突き立てていく。


混乱で密な盾壁に隙間が生まれ、そこへ何本もの槍がねじ込まれた。負傷して倒れた女エルフは、押し込んできたプレイヤーに後方へ引きずられ、処刑される。


仲間が次々と倒れ、盾兵たちは恐慌に陥った。じりじりと後退し始める。


「突っ込め!」カンドウは綻びを見逃さず、ドンッと鉄皮サイを呼び出して決死の突撃に出た。


ドン! 単騎で盾陣に突っ込み、盾兵の防線を裂溝へ押し出しかける。だが相手の防御は硬く、サイは止められ、盾陣はゆっくり立て直されていく。


「▓ ヲシ!」赤い羽飾りの銀兜をかぶった女ハイエルフ指揮官が、巨盾兵の中で怒鳴った。

巨盾兵は再編し、防線を組み直して、もはや自分から攻めてこなくなる。


そのとき地面が震え始めた。かずきが泥地にうつむき、半身を沈めるようにしゃがみ込む。


白目をむき、頭を反らして天を仰ぐ。全身の筋肉が震え、十指は泥へ深々と食い込んだ。


ゴゴ…………………


かずきは、地面そのものをゆっくり持ち上げていた。両側の土壁の高低差が、じわじわと狭まっていく。


だが盛り上がりはあまりにも遅く、目に見える変化はない。しかも一瞬でスタミナを大量消費し、もう頭がぼうっとしてきた。


しかし戦場の反対側にいる近衛兵たちの状況は、騎兵団とは正反対だった。片手剣では間合いが短すぎ、エルフの月矛兵に届かない。月矛兵も近衛兵を致命傷にはできないが、長槍の間合いを活かしてじりじりと前進する。近衛兵が一歩下がるたびに、連合軍の可動域は削られていく。


狭い坑道は大混乱だ。後衛職は漁網のイワシのように胸と背を押しつけ合い、身動きが取れない。


前衛はもう退路がない。ここで死守するしかなかった。


「ハイエルフが盾兵と金熊で俺たちを大坑へ追い込み、出口を月矛兵で塞ぎ、両側の高地に弓兵を伏せるなんて……油断した。ここまで戦術が緻密だとは思わなかった」むぐち は、自軍が少しずつ削られていく様を見つめながら、打つ手のなさに歯噛みした。敵を侮り、焦って指揮を執った己の未熟さを悔やむ。


まこと騎兵団は盾兵と乱戦し、近衛兵は月矛兵の圧力を必死に押し返し、かずきは命を削って地形を持ち上げ、刺客隊は地上で大剣兵と死闘している。


連合軍はいくつもの小戦場に分断され、連携できない。対してハイエルフは地形優位を最大限に活かし、致命打を与えてくる。あちこちで悲鳴が上がり、血が地を染めた。


「後衛、命令だ! 他は無視して巨盾兵に火力を集中しろ!!!」むぐち は乾坤一擲の賭けに出る。道連れ覚悟だ。


だが後衛の攻撃はばらけ、霧雨のように敵へ散るだけだった。


むぐち やよいが爪を噛み、必死に打開策を探るそのとき、上空の樹冠が凄まじい力で粉砕される――――七つの黒い隕石と一筋の虹が、高空から月矛兵の真上へ落下した。


「天虹衝撃!」アンドリアが咆哮する。

眩い虹が森の闇を裂き、七つの黒隕石とともに砲弾のように地面へ叩きつけられた。


閃光が弾け、全員の視界が白に染まる。


ドォォン!!!


連合軍もハイエルフ軍も、巨大な衝撃波でまとめて吹き飛ばされ、地面に叩き伏せられた。荒波に揉まれる小舟のごとく、内臓がかき回されるような衝撃が走る。


衝撃で全員の意識が飛ばされる。


むぐち は必死に体を起こす。ぼやけた視界が徐々に焦点を結んだ。


月矛兵は消え、地面には十メートルはあろうかという巨大なクレーターが残っている。


バサァッ……!!!


深淵竜がその深坑からゆっくり浮上する。アンドリアはそのまま無防備なエルフ弓兵団へ突っ込み、蹂躙を開始した。


バン! ドガン!


数人の巨盾兵がむぐち の頭上を吹き飛び、胸の銀鎧には拳大の陥没穴、口元から血飛沫を散らしながら森の奥へ消える。


武聖たちは独自の転移術で戦場各所に姿を現す、一度の出現で数名を屠る。


ハイエルフの盾兵はもはや狭路を封鎖できず、亀甲陣に縮こまり孤立して死守するしかない。


タリンが盾陣の左側へ瞬間移動し、両手でハイエルフの大盾を押さえ込む。


盾兵たちは全力でタリンを弾き飛ばそうとするが、その肉体は鋼のように硬く、腕一本すら曲げられない。


その瞬間、盾陣の反対側に黒い光球が閃く。アンベナも両手を伸ばし、左右から盾陣を挟み込んだ。


「ソ晏ュ倥 ▓!」中央の赤羽のエルフ兵長が叫ぶ。


盾兵たちは総力で押し返そうとする。


タリンとアンベナは同時に右腕を引き、深く息を吐く。


「向心崩拳!」二人が怒号とともに重拳を叩き込んだ。


亀甲陣は武聖の破壊的な力で押し潰され、巨大な肉塊と化した。


赤羽のエルフ兵長は全身の鎧を砕かれ、地に倒れて瀕死だった。


タリンとアンベナがその前へ詰め寄る。


「アィアソ█]」赤羽兵長は血を吐き、血走った目でタリンを見上げ、笑った。


ドンッ!!!


タリンは一言も発さず、拳一つで彼女を粉砕した。

……


黒竜は虎が羊の群れに飛び込むように暴れ回る。弓兵も大剣兵も、アンドリアの敵ではなく、次々と斬り伏せられていく。


七武聖と黒竜の参戦により、ハイエルフ部隊は総崩れとなり、四散して逃走した。


「追うな! 戻って損害を確認しろ!」むぐち はまだ昂ぶった感情を抑えきれず、連合軍を率いて裂溝の外へ出し、急いで態勢を立て直す。


「どういうこと?」アンドリアがむぐち の隣へ飛び降り、問いただす。


「ハイエルフは……想像以上に強い……」むぐち は大きく抉られた戦場を見つめ、先ほどの巧妙な戦術を思い返して身震いした。

……


「ヴィニフ宮殿の場所は分かる?」ニフェトがすぐにタリンへ尋ねる。


「はい。幽語の森の北東、薔薇湖の傍らにある白い星の形をした宮殿がヴィニフ宮殿です。現在地から約三時間。近道を選べば時間を短縮でき、直接ヴィニフ宮殿中央広場へ侵入できますが、その道は神族の番人が守っています。打ち破らねば通れません」タリンは淡々と答えた。


「どの道を行くべき?」ニフェトが眉を寄せる。


「まずは皆を休ませよう……」アンドリアは不安げに、影の揺れる森を見渡した。

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