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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第二十九章—煉獄から蘇りし者
133/195

132 七武聖

むぐち やよいとアンドリアはすぐにギルドメンバーを叩き起こし、戦闘態勢に入らせた。


まつみは黒煙になって姿を消し、木壁に空いた大穴からゆっくり中へ這い入った。


穴から城内へ跳び込んだ瞬間、折れた木材を踏んで足を取られ、木壁へ倒れ込みそうになる。だが背中に触れた感触は妙に柔らかかった。

そっと振り返ると、ハイエルフの女の遺体が、壁にめり込むようにして挟まっていた。銀色の鎧は砕け、衣服はほとんど残っていない。失血で肌はさらに白くなり、何かの怪力で壁へ叩きつけられたようにも見えた。


そのとき、かみこが軽く城内へ跳び込み、ハイエルフの死体へゆっくり歩み寄る。


「妙……微熱。死亡から14分32秒。」

かみこは冷静に死体を観察し、指を口の中へ差し入れた。


「そっちのほうが妙だろ……かみこ。」

まつみは眉をひそめ、その行動を見つめる。


「なぜ……ここの女エルフの死体は光塵にならない……?」

かみこは手を上げ、まつみに木砦の奥を見上げさせた――


死体だらけだ。木砦のそこかしこに、ハイエルフの砕けた死体が転がっている。


かみこは慎重に城の中央へ進み、状況を評価した。

「遺体の破片量から推算……ハイエルフ被害数、39.9から43.2。」


「いったん戻って、むぐちに報告しよう……」

まつみは嫌な予感に背筋を冷やし、かみこを引いて離れた。


「よ。着いたか?」

角の壊れた小屋から聞き覚えのある声がした。赤い鎧のバーサーカーが黒い大剣を担ぎ、のそりと出てくる。


「レックス!」まつみは嬉しそうに叫び、短剣を下ろした。


「かなから聞いた。お前らが出発したってな。だからここで待ってた。」

レックスは黒い大剣を肩に乗せたまま笑う。


「お前……一人で、ここのハイエルフを……?!」

まつみは周囲の惨状を見回し、信じられない顔で尋ねた。


「いや~。俺は最初、あの壊れた小屋に隠れて休んでただけだ。」

レックスは笑いながら続ける。

「そしたら森からハイエルフの部隊が出てきて、この木砦に入ってきた。ざっと50人近くかな?全員重装甲で、月の槍を持ってた。下手に突っ込みたくなくて、お前らが来るまで待とうと思ってな。ずっと屋内にいた。」


「そ、そう……って、待って!じゃあ誰がこいつらを殺したんだ?!」

まつみは声をひそめきれずに聞き返した。


「奴らの“いい仕事”だよ。」

レックスは城壁の隅を指さした。


黒い影が七つ、城壁の上に直立して幽語の森を無言で見下ろしている。その下には灰色のローブを着た長老が一人立っていた。


「ハイエルフが砦に入ったあと、ガヤガヤとエルフ語で喋ってた。俺には分からん。でも動きで分かった、たぶんお前らを待ち伏せるつもりで陣を敷いてたんだ。」

レックスは身振り手振りを交えて語る。

「そしたら急に、あの七つの黒い影が砦の中央に現れてな。ハイエルフを人形みたいに引き裂いて、あっという間に潰走。森へ逃げ帰った。」


「……あいつら、あなたに友好的だった?」

まつみは声を落とし、刺激しないように尋ねた。


「分からん。話しかける勇気がなかった。」

レックスは肩をすくめた。

「皆殺しにしたあと、北を睨んで城壁に立ったまま、動かなくなった。」


まつみはレックスを連れて連合軍のもとへ戻り、いま見聞きした内容を繰り返して伝えた。


アンドリアは、レックスが大剣を二本担いでいるのを見て目を見開き、レックスがタイラントだと知るとすぐに打算の色を浮かべた。


「これほど強いプレイヤーが、なぜ攻城ではなく、こんな壊れた木砦を襲う?」

むぐち やよいは信じられないといった表情で言う。


「……中を確認しましょう」

ニフェトは唾を飲み込んだ。


連合の幹部十名が慎重に城内へ足を踏み入れる。


八つの影は彫像のように北を見据え、圧倒的な威圧感を放っていた。


幹部たちはわざと物音を立てて注意を引こうとするが、八人は微動だにしない。


だがニフェトが一歩、城内へ踏み込んだ瞬間――八人が同時に振り返った。


「勇者様、お待ちしておりました……」

灰色のローブの長老がニフェトに微笑みかける。


一同は驚愕し、全員の視線がニフェトへ集中する。当の本人も目を見開いた。


「あなたたちは何者?」

ニフェトは声を張り上げる。


八人の身体から放電の火花が散り、次の瞬間、ぱちんと弾けるように一斉に転移し、幹部たちの目前へ現れた。


「ダークエルフは約束を果たすため参上いたしました。七武聖、ここに」

灰袍の長老がフードを外す――ダークエルフの村長の穏やかな顔が現れる。


七武聖は一斉に膝をつき、ニフェトへ頭を垂れた。


「あなた、何をしたの?!」

アンドリアは呆然とニフェトを見つめ、切り札でも用意していたのかと疑う。


「彼らはダークエルフの遺民。でも……私は連絡していないわ」

ニフェトは眉をひそめ、密かに神杖を握りしめた。


「ニフェト様。匿名の勇者がダークエルフの村を訪れ、ギルドKanatheonが間もなくヴィニフ宮殿を攻めると告げました」

村長は穏やかに語る。

「かつてまつみ、パシュス、むぐち やよい、ニフェト、まこ、五名へ誓った約束を思い出しました。ダークエルフはハイエルフに対抗すると。匿名の勇者は、その誓約の対象をギルドKanatheonへ変更してほしいと申しました。私は承諾し、七武聖を派遣したのです」


「まこ――――ッ!!」

一同は歓声を上げる。まこのNPCへの影響力はいまだ健在だった。


「まこはどこにいる?!」

パシュスが村長へ詰め寄る。


「前回、ダークエルフの村で別れて以降、まこ様とはお会いしておりません」

村長は静かに答えた。


「その匿名の勇者は?」

むぐち やよいが問い方を変える。


「時間の確認を終えると去っていきました。手がかりは残しておりません」

村長は首を振る。


「七武聖はどれほどの戦力なの?」

アンドリアが口を挟む。


「……」

村長は彼女を一瞥するだけで、再びKanatheonの面々へ視線を戻す。


「おい、老いぼれ! 聞いてるのか!」


――ブゥン……ドンッ。


七武聖が瞬時にアンドリアを取り囲む。誰もその移動を視認できなかった。

エルフ特有の長身に、鍛え上げられた筋肉。その威圧に、アンドリアも不用意な言葉を飲み込む。


「これがダークエルフが秘してきた最精鋭の守護戦力。もしハイエルフの奇襲さえなければ、七武聖の力は大天使長に匹敵します。決して軍勢に敗れることはなかったでしょう」

村長は穏やかに笑った。


「本当か?! 七武聖を自由に指揮できるのか?!」

むぐち やよいは興奮し、村長の手を掴む。


「匿名の勇者は、この老骨にギルドKanatheonへ仕えるよう求めました。ゆえに七武聖を指揮できるのは、ギルド会長――ニフェト様のみ。今この瞬間より」

村長は宣言する。


【システムメッセージ: ユニット指揮権を獲得しました:

タリン、

メイン、

ルカート、

アンベナ、

マクス・ドゥイン、

ライバルト、ヨングリエン

—— ダークエルフの七武聖】


七武聖は再びニフェトの前に跪いた。


「村長、彼らは睡眠を必要とするの?」

むぐち やよいが即座に問いかける。


「不要です。神息――すなわち日光と月光を吸収するだけで体力は回復いたします」

村長は微笑んだ。


「Kanatheon、聞け! 全軍入城! そのままログアウトして休め、明日十五時に再開する!」

むぐち やよいは城壁へ駆け上がり、声を張り上げる。


「うおおおおっ!! 早く中へ!!」

Kanatheonと銀龍の刻印の面々が我先に城内へ雪崩れ込み、次々とログアウトしていく。

木砦は無表情の人形が立ち並ぶ奇妙な舞台と化し、設定ミスで前進状態のまま木壁に延々とぶつかり続ける者までいた。


七武聖は城壁に立ち、城を守護する。ニフェトは城壁へ接近する非友好個体の排除を命じた。


「おやすみ~……明日十五時……おやすみ」

むぐち やよいは待ちきれない様子で手早く挨拶を済ませる。


皆も簡単に言葉を交わし、それぞれ休息へ入った。明日、幽語の森へ進軍するために。


幽語の森の奥深く、ハイエルフ軍の陣営――


「偵・∬隴ヲ蜻奇シ夂嶌【?­」

ハイエルフの女兵長が地図を指し、眉をひそめる。


「▒▓ 縺薙l繧」

別の女兵長も地図の反対側を指差す。


二人の意見は激しくぶつかり合う。


「▓█ 」

突如、ひときわ美しいハイエルフが短剣を地図へ突き立て、議論を断ち切った。


刃が突き刺さった位置は――ハイエルフ木砦の北方の森。



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