表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第四章— 競売場
13/117

12 闇市場

中央要塞の庭園の脇に建つ、白い大理石の建物――プラムス中央銀行。


正面には広く白い階段が伸び、中央に赤い絨毯が敷かれている。段の両脇には、鎧を着たNPCの近衛兵が整列していた。


その奥には古代神殿のような建築がそびえ、入口には百人近いプレイヤーが群がっている。


「次は+7黒竜皮スパイクシールド! 開始価格は竜貨百! 一回の入札ごとに十竜貨ずつ上乗せだ! スタート!」

大きな木箱の上に立った競売人が、拡声器で叫ぶ。


周囲の重装備プレイヤーたちが一斉に手を挙げる。


「百十!」「百二十!」「百五十!」「百八十!」

叫び声は秒単位で更新され、盾の価格は一気に二百五十竜貨まで跳ね上がった。


「すごい……」

まこは熱気に満ちた光景に目を丸くする。


「物理防御+三百五十、全耐性+二十、物理攻撃に五%で『脚砕き』付与……強すぎない?」

まつみは表示された性能を読み上げた。


「レベル制限二百八十ですし、今の私たちには無理ですね」

ニフェトが冷静に言う。


「パシュス、どれも高すぎるし、レベルも合ってない!」

まつみは不満そうだ。


パシュスは人混みをかき分け、左側へ進んだ。

そこでは、全員が一枚の大きな掲示板を見上げている。


板一面に白い紙が貼られ、それぞれに装備の画像と性能が印刷されていた。


隣の喧騒とは対照的に、ここでは誰もが無言で、獲物を狙う目をしている。


「こっちは『定価オークション』だ。制限時間内で最高額を出した人が落札。即買い価格もある」

パシュスは掲示板を睨みながら説明した。


「……性能、だいぶ落ちますね」

ニフェトは不満げだ。


「個人の競売人は手数料に加え10%のコミッションを取る。金持ち向けだな」

パシュスは視線を外さない。


「あっ! この杖、強いし安いよ!」

まこが背伸びして、右上の小さな紙を指差した。


「こら、まこ!!!」

パシュスは慌てて彼女の口を塞ぐ。


その瞬間、人だかりが死体の群れのように殺到し、次の瞬間には紙は消え、別の商品が貼られていた。


「安物を見つけたら静かにしろ! ここは即買いで一瞬だぞ!」

パシュスは頭を抱える。


「こんなの無理じゃない?」

まつみは周囲の人数を見回した。


「おや、掘り出し物探しかい?」

黒髪の少年が、まこの耳元で囁いた。


「近寄るな!」

まつみは警戒して、まこを引き寄せた。


「知ったところで、あなたに何の得があるんです?」

ニフェトが冷たく問い返す。


「そんなに警戒しないでよ~。みんな得する話だって。六十~八十レベル帯の装備を大量に持ってる。安く売ってあげるよ~」

黒髪の少年は軽い口調で言った。


「なにっ?!」

まつみが思わず声を上げる。


「どうして、そこまで安く売る?」

パシュスは警戒を解かない。


「安売りじゃない。ブラックマーケット価格さ。プレイヤー同士の直接取引なら、オークションの手数料が要らない。ほら、双方にメリットがあるだろ?」

黒髪の少年は両手を天秤のように動かした。


「……何を持ってる?」

パシュスが低い声で尋ねる。


「さっき、この可愛い子が見てた『氷骨の杖』。即買いは狼貨八十だったよね? 俺なら狼貨六十でいい。

ただし条件がある。合計で竜貨二分以上、まとめて買ってくれたらその値段だ。一人一品なら、条件は満たしてるだろ?」

黒髪の少年はにやりと笑う。


「リスクは?」

パシュスは即座に切り込んだ。


「おっ、慎重だね。

システムに取引回数を怪しまれなければ問題ない。頻繁すぎるとGMが内容を確認するから、一日三回まで。君たちは今日の最後の客だ。さっさと終わらせよう」

黒髪の少年はいやらしく笑った。


「ブラックマーケットなんて、危なそうだな」

パシュスは渋い顔をする。


「でも、市価よりずっと安いよ!」

まつみが反論する。


「……品物を見せてもらえますか?」

ニフェトが静かに言った。


「いいよ。ついてきな~」

黒髪の少年はそう言って、四人を連れ、人混みを離れて銀行の入口へ向かった。


銀行の長方形の大広間は豪奢な造りで、両側には濃紺のビロードのカーテンが垂れ下がり、各窓口の前には衛兵が立っている。外よりも、さらに張り詰めた空気だった。


ホールの奥には十の小窓が並び、それぞれに黒い制服を着た白髪のエルフ女性が座り、プレイヤーたちを応対している。


「ようこそ、勇者様。どのようなご用件でしょうか?」

エルフの女性が微笑んで尋ねた。


「第二ページの最下段。八点、引き出してくれ」

黒髪の少年が答える。


「『氷骨の杖』から『熱原石の首飾り』まで、ですね。

よろしければ、手数料として羊貨八十をお支払いください」


「いい」


「ありがとうございます。アイテムはすでに、あなたのバッグへ転送しました」

エルフの女性が告げる。


「竜貨二分で割引だからな!」

黒髪の少年は四人に念を押す。

バッグの中では、装備が放つ淡い光がはっきりと見えた。


ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ!


突如、周囲に警報音が鳴り響く。


五人に赤い光が照射され、身体がその場に縫い止められた。


【システムメッセージ: 異常な取引履歴を検出しました。現在、安全確認のためログアウトはできません】


「なにっ?!」

黒髪の少年は顔色を変え、叫んだ。


周囲のプレイヤーたちは、一斉に五人から距離を取った。


「うわぁ~、まこ、動けないよ!」

まこが怯えた声を上げる。


「やっぱり、騙してたのか!」

パシュスが怒鳴った。


「はいはい、また一件確保~」

ピンク色のショートツインテールの少女が、忽然と出現し、ホールの空中に浮かび上がった。


「魔法少女だあああ!!!」

まつみは少女を指さして叫び、感極まって涙まで流す。


「……………………」

ホール中のプレイヤーとNPCが、冷たい視線をまつみに向ける。


「は? アニメ見すぎじゃない?」

ピンクの少女は呆れたように笑った。

「私はGM03。最近は銀行周辺でブラックマーケット対策中なの~。

あなたたち、なかなか悪いことしてるね~」


「待ってくれ! 俺は装備を友達に渡しただけだ!」

黒髪の少年が必死に訴える。


「ふーん。

本日だけで取引五回、装備十七点。受け取りは竜貨八、狼貨五十」

GM03は淡々と告げた。


「くっ……!」

黒髪の少年が必死にもがく。


「無駄よ。今はログアウト不可。証拠も揃ってる。

――処刑」

GM03は無表情のまま、カラフルな管理ウィンドウを開き、軽くタップした。


黒髪の少年の全身が赤く発光する。


「指名手配犯を確認!」

周囲にいた衛兵たちが獲物を見つけた猛禽のように、一斉に飛びかかった。


「うあああっ――」

黒髪の少年は無数の刃に貫かれ、光の粒子となって消えた。


「ふぅ……分身アカウントね。ほんとキリがない」

GM03は眉をひそめる。


まこは恐怖で声を上げて泣き出した。


「あなたたちはまだ取引成立前。今回はセーフ。

安さに釣られないことね」

GM03は自分の画面を確認し、そう言い残すと、空中に溶けるように消えた。


赤い拘束光が消え、四人は再び自由に動けるようになる。


パシュスは力が抜けたように、その場に膝をついた。


「……やっぱり、正規のオークションにしよう」

ニフェトは青ざめたまま、そう呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ