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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第二十八章—血塗られたハゲグ
126/195

125 「城壁をすり抜けたってのか?!」


「西岸からも敵襲!」


「南岸からも敵襲!」獣人兵が報告する。西と南から八隻の輸送艇が要塞へ向かって進み始めた。


ドォン、ドォン、ドォン、ドォン、ドォン、ドォン、ドォン、ドォン、ドォン――城壁の大砲が再び火を吹き、船上の兵たちは命がけで川を渡る。


「ちっ! この重機関銃は徹甲弾じゃないと重装甲職を落とせない。緒戦で主力を潰せなかったのが痛い。もう死角に回られた、これじゃまともな防衛は無理だ!」

リオが悔しげに叫ぶ。


「はあ?! 有効防衛が無理だと?! さっき自分で一騎当千って豪語してただろうが!」

司教が怒鳴り返す。


「一騎当千は本当だ! もう四十人近く落としてる! 技師の強みは固定防衛だ。射線から外れたらどうしようもない。この円形要塞は死角が多すぎる、地形の問題だ!」


「掴まれ。」

足元の泥に文字が浮かぶ。


「は?」

リオと司教が同時に眉をひそめる。


ゴゴゴゴ……大地が震えた。


砲台が激しく揺れ、土柱が軋む。今にも折れそうだ。


「おい! 地震なんて聞いてないぞ! 落ちたら死ぬんだぞ!」

リオが叫ぶ。


かずきは両手を広げ、周囲に異様な風を巻き起こす。白く反転した瞳を見開き、空気を掴むように両手へ力を込める。首筋の筋が浮き上がった。


フッ――左足を引き、体を左へ捻り、両の爪で空間を引き裂くように引く。


空に緑の光弧が走った。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――ハググ要塞が巨大な土煙を巻き上げ、湖面に無数の白波が立つ。


激震で獣人砲兵は射撃不能となり、連合軍は不安げに泥煙を見つめた。


砲台が狂ったように揺れ、部品が軋み外れ始める。


リオと司教は衝撃で絡まり合い、足元の空薬莢が震動に合わせて跳ね回る。


やがて揺れが止まり、土煙が沈む。


二人はよろめきながら砲台の床から起き上がる。


「かずき、お前この野郎――」

リオは言葉を失い、目を見開いた。全身の血が沸騰する。


西側桟橋の四隻の輸送艇が、まっすぐ自分へ向かっている。


船上の敵は虚ろな目で固まり、状況を理解できない。


かずきが土柱ごと砲台を城壁沿いに西側へ移動させていたのだ。


「最高だ! 最高すぎる! ははははははは!」

リオは座席へ飛び乗り照準を合わせる。

「ノルマンディーの死神!!!」


「な、なんだあれは……」

船上の司教は魔力盾を展開する暇もない。


パチン、チチチチチチ、パパパパパ、チチチ、パチン、パチン、パチン、チチチチ――


輸送艇は狂乱の弾幕に呑まれ、装甲を叩く金属音と負傷者の悲鳴が混ざり合う。まさに地獄だ。


最初の輸送艇がようやく岸に着く。生き残った司教がふらつきながら桟橋へ踏み出し、振り返る。


十数人乗っていたはずの船内は、脛まで水に浸かり、光の塵が無数に漂っている。


司教は膝をつき、呆然と血の船を見つめた。

ヒュッ。背後から矢が突き刺さり、そのまま獣人弩兵に射殺された。


バババババババババ!


ババババババババババババババババババババ!


バババ!


「会長! あの砲台、移動するぞ!!!」

青蛇のギルドメンバーが叫ぶ。彼らは南側桟橋へ向かう輸送艇に乗っている。


「もう退けん、死ぬ気で突っ込め!!!」

青蛇のギルマスは強攻を決断し、船上で前方を睨みつけた。


船上の魔導士たちが反撃を開始する。色とりどりのスキルが同時に砲台へ炸裂した。


「聖庇所!」

司教が魔力盾を展開し、リオを守る。大半の攻撃は防がれたが、いくつかは側面装甲に命中する。それでも抗魔銀塗装が弾き返した。


「今だ、盾を下げる!」

司教が叫び、リオは即座に発砲する。


「東側に敵襲!」

獣人兵が怒号を上げる。


かずきは高塔の屋上で、独り優雅に舞う。空中に描かれる緑の光弧は、夜光の花びらのように妖しく美しい。


砲台は東へ西へ、南へ北へと自在に移動させられる。


リオとかずきの間に瞬時に呼吸が生まれる。移動するたび、最も近い輸送艇を優先して破壊する。


守城戦はいつの間にか“七面鳥撃ち”へ変わっていた。リオは押し寄せる敵を容赦なく屠り、艇を一隻沈めるごとに、かずきが次の標的を差し出す。


司教は負傷したリオを絶えず回復し、必要とあれば装填も手伝う。


「くそっ! くそっ!! くそおおおおおお!!!!!」

青蛇のギルマスは歯を食いしばる。城壁に触れることすらできず、すでに半数近いメンバーが倒れていた。


「会長、撤退を……まだ二――」

傍らの賢者が懇願した瞬間、金色の弾丸が貫き、そのまま倒れた。


「ふざけるなあああああああ!!!!!!!!」

ギルド長の瞳が白く反転し、身体が黒く染まる。船首へ駆け、勢いよく跳躍。湖面の破片を踏み台にし、数度跳ね、己の脚力だけで桟橋へ到達した。


「Kanatheon……どこまで底力があるか、見せてもらおうか……」

城壁際へ滑り込み、右手を触れさせる。身体が黒煙となり、そのまま城壁をすり抜けた。


地獄火神式機関銃の砲身は灼けるように赤くなり、金属が軟化し始める。


「かずき! 冷却時間をくれ!」

リオが叫ぶ。


四方八方から輸送艇が迫る。内湖要塞へ向かう連合軍には、まだ数十名の無傷のプレイヤーが残っている。もし上陸を許せば、これまでの防衛は水の泡だ。


かずきはゆっくりと腰を落とし、爪の形に曲げた指で胸前の空気を押し潰すように下へ圧す。


大地が再び震動――湖水がわずかに下がった。


輸送艇の連合軍は、自分たちと桟橋の高低差が広がっていくのを目の当たりにする。ほとんど崖を登る形になる。


かずきは水位を下げ、上陸不能にしようとしていた。


ドンッ。


目の前に黒髪の少女が出現する――GM05。


「鬼畜仕様はダメですよ~」

GM05は頬を膨らませ、七色のインターフェースを開き、指で軽く操作する。


震動が止まり、湖水は元の水位へ戻った。


かずきは汗を流しながらGM05を見つめる。


「設定で相手の反撃を完全に奪うのは禁止です。連携による変化はOKですが、敵の行動を封じる設計は審査対象になります。次に鬼畜仕様が確認されたら一時間拘束ですよ。頑張って~」

GM05はにこりと笑い、空間へ溶けるように消えた。


かずきは唇を噛み、状況の悪化を感じ取る。


「うおおおおお!!!!!」

城内から突然騒乱が起きた。鉄斧の獣人が一人の敵と激しく斬り結び、すでに何体もの獣人が倒れている。


「城内で何が起きてる?!」

リオが焦って叫ぶ。


「敵が一名、城内に侵入! 衛兵が交戦中!」

城壁上の獣人弩兵が報告する。


「あり得ない! 北側の罠はまだ発動していない! どうやって抜けた!」

リオは即座にインターフェースを開く。すべての罠が待機状態のままだ。


「入口は一つだけなんだよな?!」

リオが司教に問い詰めた。


「そんなはずはありません! ニフェトとむぐち やよい様が何度も確認しています!」

司教が叫ぶ。


「じゃあ……じゃあ奴は……城壁をすり抜けたってのか?!」

リオは全身を震わせる。胸の奥から嫌な予感が込み上げてきた。


もし技師が前衛に捕まったら……

本日はここまでとなります。

皆さま、どうぞよろしくお願いします。

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