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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第二十七章—目には目を
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119 羽化


二日後の正午、ハググのギルド高塔――


その場にいる全員が言葉を失い、まこを見つめていた。


「まこ……あいつに、その……何か……」むぐちは口元を押さえ、震える声で尋ねる。


「ない……システムが禁止してる。ただ……重傷を負っただけ……」まこは俯いたまま答えた。


一同は息を呑む。


かなはバンッと机を叩いた。

「だから言ったでしょ、このバカ! あいつに近づくなって! はぁ……もう聞きたくない」かなは目を赤くし、そのまま席を立つ。


ドンッ、と扉が乱暴に閉められた。ホールは再び沈黙に包まれる。


「本当に大丈夫? 一度ログアウトして、私と街でも歩く? 今回の城戦は守りに徹したほうがいいかも」ニフェトがまこに声をかける。


「わ、私は……平気。心配いらない」まこはかすかに首を振った。


「まこ……無理しないで。仮想世界の出来事でも、現実の心に影響するよ」まつみはかみこと視線を交わしながら言う。


「うん……大丈夫…….」まこは小さくうなずいた。


そのとき、パシュスが白金の重装甲をまとって部屋に入ってきた。

王家の紋様が刻まれた鎧が、重々しくきらめく。


一歩ごとに、金属の衝突音が響く。


「まさか……あなたが二人目の四次職とは」むぐちは驚きの目でパシュスを見る。


「二人目? 一人目じゃないのか?」パシュスは問い返した。


「一人目はあそこ……」ニフェトが部屋の隅を指差す。


かずきの緑の樹皮はすでに砂色に変わり、ひび割れた外殻のように崩れかけていた。


「木霊の四次職は何だ?」パシュスは近づいて確認する。


床板の上に、砂が盛り上がり文字を描いた――「地霊ちれい


「その話は後だ。今は本題だ」むぐちはパシュスの腕を引き、まこの前へ連れていく。


まこはうつむき、パシュスを見られずにいた。


「まこ……すまない。俺は守れなかった……」パシュスが謝ると、まこが遮る。


「違う……バカなのは私。あなたは悪くない。謝るのは……私……うっ……」まこは涙をこぼす。


むぐちは短剣をパシュスへ渡した。

「……始めて」


パシュスは息を吐き、自分の親指を短剣で刺し、一滴の血を落とす。

守魂衛の契約儀式が始まった。


パシュスは短剣をまこに差し出す。


まこはそれを受け取り、刃を見つめる。

記憶が次々とよみがえる。


「ははっ、まこは君を信じてる!」

「うん! 約束だよ!」

「や、やめて……!」

「うあああああっ!!!」

脳裏の映像は、ゲーム開始当初からアンドリューの姿へと流れ着く。


まこは親指を刃に当て、一滴の血を落とす。


パシュスはゆっくりと自分の親指を差し出す。


だが、まこは突然指を引っ込め、パシュスをまっすぐ見つめた。


「どうした?」パシュスが問う。


「……契約しない」


周囲がざわめく。


「なぜだ!? 俺を信じていないのか!?」パシュスの声が震える。


「違う。パシュス、私はあなたを信じてる。誰よりも。でも……守られてばかりではいられない」まこは涙を流しながらも視線を逸らさない。


「細かいことはいい。早く……」パシュスが親指を差し出すと、まこはそれを手で止める。


「いいえ。私は自分で自分を守る。それに、本当に守られるべきなのはニフェト。ニフェトは司教で、ギルド会長。優先されるべき存在。私は召喚師。四次転職の守魂衛が常に守る必要はない」まこは短剣をニフェトへ差し出した。


「まこ……本当に?」ニフェトは戸惑いながら短剣を受け取る。


「うん。数日後には攻城戦があるわ。その前に、一人で鍛え直したいの。しばらくはオフラインにするから……探さないで。私、ちゃんと強くなるから…」まこは涙を拭い、微笑んだ。


「だめだ。通常ログイン状態を維持しろ。俺たちは干渉しない。だが、危険があれば必ず助ける」むぐちは即座に反対した。


「……いや。もう決めた」まこは静かに首を振った。


【システムメッセージ: フレンド 真子 はオフラインです】


「まこ、ふざけないで!」まつみは立ち上がり、まこの腕をつかんだ。


まこはまつみの手を振りほどき、まっすぐ笑う。

「応援してて……攻城戦で会おう」まこはメニュー画面を操作し、特殊アイテムを使用した。

その瞬間、まこの身体は淡い光となり、転送されて消えた。


「心理学には、まこにPTSDの発症は見られない。この状況で精神を保てているのは、彼女が常人よりも遥かに強靭だからだ。今は彼女を信じて、そっとしておくべきだよ。」かみこは無表情で告げた。


「まこ……」パシュスはフレンド一覧を見つめ、ログアウト表示になったまこの名前を小さく呼ぶ。


……


空羽谷あきはだにの港――


まこは召喚杖を握り、浮遊島へと足を踏み出す。

見上げれば、壮大な景色が広がっていた。


「本気か? 俺についてくるのは、戻れない道だぞ」荒道一狼が岩陰から姿を現す。


「うん!」まこは軽やかにうなずき、自信に満ちた笑みを浮かべた。


荒道一狼は小さく息をつき、まこの額にそっと触れる。


二人は中央の浮山へ向かって歩き出した。

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